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第68回(2003.02.22)
まえのひと >>

南谷佳世

こんにちは。南谷佳世です。
2002年末から新宿三越で催された「ストレイシープ展」の図録編集チームに加えてもらったおかげで、ここでロボットの安藤さんからバトンをいただいております。
図録のお話をいただいた時は、もともと好きな「ストレイシープ」ですから「メエメエ」とふたつ返事でお引き受けしました。北海道育ちの私、花見でもキャンプでも御家庭でも人が集まればジンギスカンで、国民平均消費量をはるかに上回るラムを食べてきていることはナイショで。野村さんごめんなさいね。

仕事でインタビューをする機会がよくあるのですが、才能があっていい仕事をしていると評価される人には共通点があるんです。

ひとつは、その仕事が好きなこと。好きなことを仕事にしていると、歓びも苦しさもぎゅうっと濃い。逃げられない。だから、ひとに「いいですねえ」と言われてニコニコうなずくのは、「いいこともあるけどつらいこともすごくあって時々心底いやんなっちゃうんだけどやっぱりよさが勝るから、いいんだ」っていう複雑な事情の上に咲く笑顔なんだと思います。野村さんも、そんな風でしたよ。

ふたつめは、タイミング。不思議なことに必ずと言っていいほど「タイミングがよかった」という言葉を聞きます。野村さんの場合、「ストレイシープ」の依頼がそうだったんですって。CMディレクター時代、いずれきちんとした形でアニメーションをやりたいと思い続けていたところに、「ちょうどいいタイミングで石を投げてくれたから、自分の中でその波紋が広がっていったという形」だったのだそうです。野村さんの口調から、石を投げてくれた人やそのタイミングへの感謝がひしひしと伝わってきました。そういうことをよく覚えているところも、みんな共通している。

みっつめは、自分の中にあるものをつきつめてシンプルにした結果が高く評価されていること。たとえばポーの変化について、より可愛くなってきたと思うと野村さんは言いました。それは意図したわけではなく、「自分の中にある漠然としたものを整えて整えて、シンプルにしていく段階で自然にそうなった」のだと。そうか……と得心しました。ディック・ブルーナさんも、「うさこちゃん」についてほとんど同じようなことを言っていたわ、と思いながら。

そういうわけで、「好きなことを深く掘り下げて、タイミングをしっかり見極める」、これが成功の秘訣だと私は思います。あたりまえみたいだけど、そう簡単にはできないよね。
野村さんは、次にどのタイミングをつかまえるのでしょうか。楽しみな羊年の幕開けです。

次回は、年末年始に開催された「ストレイシープ展」を担当していただいた三越新宿店の平野 明さんです。

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