知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

MF 2 宇津木瑠美 (レインFC・アメリカ)

豊富な海外経験を生かし、
ハードな守備でチームを支えるファイター

宇津木瑠美

豊富な経験を惜しむことなく伝えてきた

アメリカで行われているシービリーブスカップで、日本は明日、第3戦のイングランド戦を迎える。ここまでアメリカ戦(△2-2)、ブラジル戦(○3-1)と2試合で勝ち点4を得ている日本は、イングランドに勝てば大会初優勝となる。

「試合内容もすごく大事ですけど、W杯に向けて、自分たちが意図した攻撃や守備の形ではなくても、最後はしっかり勝つことにフォーカスしたいです」 

高倉ジャパンで2016年のチーム発足時から戦ってきた一人、DF宇津木瑠美は、タイトルへのこだわりを口にした。

16歳で代表に選ばれて、今年で14年目を迎えた。代表キャップ数は、高倉ジャパンではMF阪口夢穂の「123」に次ぐ「112」に。2011年のドイツ女子W杯優勝と2015年のカナダ女子W杯準優勝、2014年と2018年のアジアカップ優勝など、国際舞台で多くのタイトルを勝ち獲ってきた。
そして、高倉監督の下で新たな世代とともに戦ってきたこの3年間、様々な局面で宇津木がチームを支えていると感じる場面があった。

中盤から最終ラインまで複数のポジションで起用され、フル出場、途中退場、交代出場と、試合の流れや相手によって変化する様々な役割を柔軟にこなす。
特に、フランスとアメリカで計9シーズンを戦う中で培ってきた危機察知能力とハードな守備は、チームを度々救ってきた。
国内リーグでプレーする選手にとって、リーチや高さが圧倒的に違う海外の選手との間合いを感じながら守備をすることは、簡単ではない。

「みんなが思っているよりも、もう1歩2歩相手に寄せないと意味がないよ、と、練習の中から伝えてきました。ただ、紅白戦では同じ局面が出てこないし、できているかどうかの基準を判断できないので、練習でできたことが必ずしも通用しないことを認識しなきゃいけないよ、と言っています」

宇津木瑠美

チーム屈指のフィジカルとハードな守備が
魅力だ

今大会で、相手に寄せる間合いが全体的に以前よりもやや近くなったと感じる。それは宇津木が強調してきたことであり、選手たちがチャレンジしてきた中で掴んだ感覚かもしれない。

宇津木が見せる、ピッチ上で起こる問題の本質をリアルタイムに捉えながら修正していく力は、文化やサッカーのスタイルも異なる3ヶ国のサッカーを経験し、丹念に積み重ねてきたものだろう。

6月の女子W杯は、選ばれれば自身4度目のW杯となる。これまでの大会とは、世界の勢力図も変わり、女子サッカー界は群雄割拠の時代に突入した。
6月の本番を目前に控えた今、日本にとって一番大切なことは何か。1月の国内合宿で、宇津木はこう話していた。

「海外の選手は日本の選手たちのプレースタイルをわかっています。その中で自分たちが今までできてきたことをやるだけでは勝てないからこそ、“今しかできない失敗”を増やしていきたいです」

「自分たちにできないこと」を知るために、いろいろなことにチャレンジすること。それは、今大会に臨むチームの総意となっている。そして、ここまでアメリカ戦、ブラジル戦と、攻守にチャレンジしながら一定の結果を出してきた。第3戦でも、チームは積極的なプレーを見せてくれるだろう。

イングランドはアメリカやブラジルに比べて組織的で、フィジカルの強さもある。スピードと技術を兼ね備えたイングランドのFWを止めるため、守備面で体を張れる宇津木の存在は鍵になりそうだ。

イングランドは6月のW杯のグループステージ第3戦で戦う相手だけに、本番前の“前哨戦”として、白熱した戦いになることを期待している。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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