今大会最年少で招集された遠藤
アメリカで行われているシービリーブスカップに、最年少の18歳で招集されているのがMF遠藤純だ。
166cmの高さとスピード、そして精度の高い左足のキックを持ち味とするサイドアタッカーは、昨夏のU-20女子W杯で、6試合中5試合にフル出場。GS第3戦のパラグアイ戦(○6-0)で3アシストを決めて日本の決勝T進出に貢献すると、準々決勝ドイツ戦(○3-1)では先制ゴール。さらに、準決勝のイングランド戦(○2-0)では1ゴール1アシストを決めた。遠藤は、圧倒的な強さで世界を驚かせたヤングなでしこで、大会を彩ったヒロインの一人だった。
今回のアメリカ遠征で新戦力を多く選んだ理由について、高倉監督はこう話している。
「世界のトップと戦うときに、どのような力を発揮してくれるのかということを試すときでもあると思うので、期待を込めて、見てみたい選手を多く選びました」
そして、遠藤は初戦のアメリカ戦(△2-2)で、残り約10分で交代でピッチに立ち、念願のA代表初出場を果たした。そして、後半アディショナルタイムに、FW籾木結花の同点弾につながるパスを出した。
「すごく緊張していたんですが、短い時間でも楽しめました。U-20のアメリカも本当に強かったのですが、世界ランク1位となると、本当に強かったです。(今後の)一番の目標は得点ですが、取れなくても今日のように得点に絡みたいです」
アメリカ戦後にそう話していた遠藤は、第2戦のブラジル戦(○3-1)では58分に出場。持ち味のドリブルで果敢に仕掛け、81分のFW小林里歌子の逆転弾の起点になった。
限られた時間で結果を残し続けることで、
定着も見えてくる
限られた時間で結果を出し、与えられたチャンスを生かすーーその勝負強さは、U−20女子W杯の時と似ている。あの時も、レギュラーの座を掴んだのは大会に入ってからだった。大会中、遠藤はピッチに立つと「とにかく楽しもう」と思ってプレーしたのだという。その思いが心に余裕を生み、結果と自信を重ねていった。
U-20女子W杯中、自身が大舞台活躍できている理由をどう考えているかを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「今まではファーストタッチで抜こうとして相手にぶつかると、それでさらに焦っていたのですが、大会が始まってからは相手を冷静に見て相手をかわせているし、自分の持ち味であるドリブルも通用しています」
その言葉は、本番に強いことを感じさせた。周囲のレベルが上がるほど、秘めた実力が引き出されるのかもしれない。
遠藤は今年、JFAアカデミー福島を卒校し、国内リーグで4連覇中の日テレ・ベレーザに加入した。3部にあたるチャレンジリーグから1部へとステージを上げることになり、環境の変化の中でどう力をつけていくのかが楽しみでもある。
なでしこジャパンには昨年11月のノルウェー戦(鳥取)で初招集され、今年1月の国内合宿を経て今回、初の海外遠征に臨んでいる。
国内合宿に初めて参加した際には「緊張してガチガチだった」と話していた遠藤だが、濃密な時間を共有したことでリラックスした表情も見られ、持ち前の天真爛漫さも顔をのぞかせるようになった。
A代表では、ボールを持った受けた際の「前を向く力」やディフェンス時のポジショニングなどに、年代別代表との違いを感じるという。だが、順応は早い。
大会前に遠藤が話していた言葉を思い出す
「味方のディフェンダーがボールを持った時にタイミングを意識して飛び出しているので、いいタイミングでボールが来た時は、突破する自信があります」
第3戦のイングランド戦では、念願のゴールを決めることができるだろうか。若きスピードスターの活躍を、しっかりと目に焼き付けておきたい。
文・写真 : 松原渓
松原 渓 (まつばら・けい)
東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。