知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

DF 23 南 萌華 (浦和レッズレディース)

新世代のリーダー、将来性豊かな
センターバックがA代表デビュー

南 萌華

ブラジル戦で代表初出場を果たし、ディフェンスラインを安定させた

SheBelieves Cup第2戦のブラジル戦で、なでしこジャパンはブラジルに3-1で勝利した。
この試合でA代表デビューを飾ったのが、20歳のDF南萌華だ。
「あまり緊張せずに入れた」という南は、同じくこの試合がA代表初出場だった右サイドバックのDF宮川麻都、初先発となったDF大賀理紗子、そして経験のあるDF有吉佐織とともに、初めての組み合わせとなった最終ラインで奮闘。
「ブラジルの選手たちは個の力が強く、カウンターに気をつけていましたが、(センターバックを組んだ)大賀選手と一緒に声をかけ合いながらリスクマネジメントできました」

試合後、南はすっきりした表情で手応えを口にした。
失点シーンについては、
「シュートを打たれる前にクリアできたところもあったので、もっとはっきりしたプレーでシュートを打たれないように修正したい」
と反省点を挙げたが、90分間を通して南の対応は安定していた。
立ち上がりの10分に日本の左サイドから際どいクロスを上げられたが、ゴール前で体を寄せて相手をブロック。試合前に気をつけることとして挙げたクロスへの対応で成果を示すと、64分にはゴール前で完全に抜け出した相手FWに後ろから追いつき、うまく体を当てて防ぐファインプレー。

攻撃では、近い味方へのパスでなく、一つポジションを飛ばしたフィードで攻撃の起点になる場面もあったが、パスを躊躇した場面もあったことを明かし、「今後はブラジルのような速い相手でもしっかりビルドアップに関わりたい」と話していた。

南は、昨年8月のU-20女子W杯で世界一に輝いたヤングなでしこのセンターバックとして、6試合で15得点3失点の堅守を支えた。主将としてもチームをまとめ、個人でも大会MVP3位にあたるブロンズボールを受賞。すらりとした171cmの長身で、紙吹雪の中で黄金のワールドカップを高々と掲げる姿はとても絵になっていた。
20歳以下でも大人と変わらない体格を持つ海外の屈強なFWに対して、的確な予測で裏へのロングボールをインターセプトし、空中戦でも負けない。長い手足をしなやかに操るキックのモーションは独特だ。

南がA代表に初選出されたのは、U-20W杯から2ヶ月後のノルウェー女子代表との親善試合(鳥取)だった。

「南は育成年代からずっと見ていますが、非常に体がフィットしてきていますし、高さもあって安定した守備を見せます。(U-20女子W杯で)キャプテンを務めたことによってリーダーシップもメンタル的にも上がってきているので、期待を寄せています」(高倉麻子監督)

南 萌華

熊谷の声掛けを参考に、自分なりのセンターバック像を磨き続ける

U-16とU-19でアジア王者になり、U-17とU-20で世界一になった南は、年代別代表のタイトルを全て獲得してきた稀有な実績を持つ。年代が上がるにつれ、対戦国のフィジカルや組織力が上がることを感じながら、自身のプレーをアップデートしてきた。

ピッチ上の冷静な振る舞いは、浦和レッズレディースで、FW安藤梢やFW菅澤優衣香ら経験豊富なFWと日々駆け引きを重ねてきた成果でもある。浦和のトップチームで4年目を迎える今シーズンは、リーグ戦でもさらなる活躍が期待される。

その南がお手本にしてきたのが、浦和の先輩でなでしこジャパンのディフェンスリーダー、DF熊谷紗希だ。

「紗希さんは前線にも声をかけながら、最終ラインのコントロールやマークの受け渡しの声も出しているので、声の内容と(コーチングの)量もお手本にしています」

その熊谷は、DF市瀬菜々、GK齊藤彩佳とともに体調不良でブラジル戦はベンチ入りできなかった。同じピッチに立つことは叶わなかったが、第3戦では3人の想いも背負って戦う。

今大会は6月のW杯のメンバー入りに向けたアピールとともに、最終ラインの連係を深める重要な機会でもある。
「ブラジル戦の経験を次につなげたい」と話していた南が、今後どのようにプレーを進化させていくのか、楽しみだ。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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