アメリカ戦では途中出場で同点ゴールを決めた
SheBelieves Cup初戦で、なでしこジャパンは世界ランク1位のアメリカと対戦。2度のビハインドを粘り強く追いつき、後半アディショナルタイムのFW籾木結花のゴールで、2-2と引き分けた。
ワンタッチパスで左サイドを崩した攻撃の形、そして相手の逆をついたMF長谷川唯のラストパスも見事だったが、大柄な相手GKが滑り込んでくることを予測して、冷静にゴール上に蹴り込んだ籾木の決定力も光った。
籾木がピッチに立ったのは、残り10分だった。
「相手との駆け引きが自分の特徴です。たとえば(出場時間が)10分だったら、その中で結果を残したり、途中から入った時に流れを変えること。日本がボールを掴んでいる中で、(周囲とは)ちょっと違う動きでアクセントをつけていきたいです」
代表での籾木は、右サイドハーフかセカンドトップでプレーすることが多い。相手と相手の間でボールを受け、攻撃に流れを生み出す。
153cmと小柄だが、的確な予測で、自分よりも大きな相手に先手を取る。細かいボールタッチとレフティーの独特のリズムでボールをキープし、個人でもコンビネーションでも局面を打開するアイデアが豊富だ。また、精度の高い左足で、代表でもセットプレーのキッカーを務めることがある。
代表では22試合に出場し、7ゴールと高い決定力を見せてきた。
22歳と若いが、リーグでは今年で9年目のシーズンを迎える。日テレ・ベレーザでは、2016年から背番号「10」になった。代表の高倉麻子監督や、FIFA最優秀選手賞を受賞した澤穂希さんをはじめ、代表を牽引したリーダー達に受け継がれてきた番号である。籾木もまた、年代別ではU-16から中心選手として活躍し、高倉監督率いるU-20女子W杯(3位)ではエースナンバーを背負った。
W杯イヤーとなる今年の目標について、籾木はこう話していた。
「チームと代表のサッカーは違います。それぞれで自分の活かせる強さが違うので、代表にいく時にうまく切り替えることと、代表での強さをチームの強さにつなげること。そこをうまくリンクさせて代表に生き残って、チームに貢献することが目標です」
テクニックと精度の高い左足で攻撃のアクセントに。決定力も魅力
ベレーザの下部組織で籾木の指導にあたった寺谷真弓監督(現・東京ヴェルディアカデミーダイレクター)は、籾木の中学時代について、こう語っている。
「サッカーのセンスとか理解力、判断力や考え方は、中学一年生でメニーナに入ってきた時からある程度、備わっていました。練習の中で自分で肉付けしていったり、本能的にやっていたことが論理的に繋がった部分はあると思いますが、指導で手を加えることはしていません」
理論だけでなく、感覚的なことを伝える言葉選びの的確さは、幼少期から「考える」習慣をつけてきたからかもしれない。
高倉ジャパンに初招集されて、今年で3年目になる。若い頃から積み上げてきた国際経験は、大舞台にも動じない強靭なメンタルを支える土台になった。
そしてこの2年間、コンスタントに招集され、世界のレベルを体感しながら駆け引きの技術を磨き、フィジカルも強化してきた。
2017年夏にアメリカで行われた4ヶ国対抗戦で、籾木はブラジル相手に途中出場でゴールを決めた。明日のブラジル戦、そして第3戦のイングランド戦でも、チームを勝利に導くゴールに期待している。
文・写真 : 松原渓
松原 渓 (まつばら・けい)
東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。