知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

MF 7 中島依美 (INAC神戸レオネッサ)

意表を突くミドルシュートも魅力。
高倉ジャパンの中盤を支えるダイナモ

中島依美

高倉ジャパンで最も多くの試合に出場してきた

世界ランク1位のアメリカとの初戦で、日本は2-2で引き分けた。0−1で迎えた67分に、流れを引き寄せる同点ゴールを決めたのが、MF中島依美だ。

サイドハーフ、トップ下、ボランチと、複数のポジションをこなせるユーティリティ性と豊富なスタミナがあり、セットプレーのキッカーも務める。
中島が高倉ジャパンで突出しているのが、チーム発足時からの出場数だ。これまで計38試合を戦ったうち、中島はケガで不参加だった2016年7月のスウェーデン戦を除く37試合に出場している。コンディションや試合の流れによって起用のされ方は異なったが、この数字は高倉監督の信頼の証とも言えるだろう。国際Aマッチ出場数も、MF阪口夢穂(123)、DF宇津木瑠美(111)、DF鮫島彩(103)、DF熊谷紗希(100)に次ぐ「65」に達した。

その数字と比例するように国内リーグでも存在感を増し、2017年から2年連続でベストイレブンと敢闘賞を受賞。
28歳になり、所属するINAC神戸レオネッサでも代表でも、立場は中堅からベテランへと推移しつつあり、ピッチ内で自分から行動を起こす場面も見られるようになった。特に、声で味方を動かす場面が増えた。

「速い相手に対しては、声を出して協力しないと守りきれません。(どんな状況でも)最後は1対1になるのですが、連動して奪えるように、練習から意識しています。声の質も高めていきたいですね」

チームで昨年からキャプテンも務めていることも、意識に変化をもたらしたようだ。INACでは入団11年目になる。元日本代表の澤穂希さんら、ドイツ女子W杯優勝を牽引した選手たちとともに、2011年からリーグ3連覇も経験した。中島は若い頃から、苦しい時にチームを導く偉大なリーダーをたくさん見てきた。
クラブでも代表でも世代交代が進み、「次は自分の番」と覚悟を決めた中島のプレーは、以前と少し違って見える。

中島依美

ブラジル戦とイングランド戦でもゴールを期待したい

一方で、自己評価の厳しさは変わらない。W杯イヤーに向けて、自身が強化したいポイントが次々にあがった。

「状況判断力を上げること、ミスを少なくすること、ゲームを締めること。そういったことをもっともっと徹底的に強化していきたいです。それから、セットプレーも含めてもっと点に絡むプレーをしていきたいです。そのためには精度を上げないと」

ゲームメイクだけでなく、ゴールにもこだわってきた。リーグ戦ではパンチの効いたミドルシュートで試合を決定づけることがある。

高倉ジャパンの初陣となった2016年6月のアメリカ戦。中島はサイドを突破し、絶妙なクロスでアシストを決めた。そして、2-0とリードした前半41分には、ペナルティエリア外から強烈なミドルシュートをクロスバーに当てている。今大会の初戦でアメリカ相手に中島が決めたゴールは、2年越しの必然だったようにも感じた。

「W杯はサッカー選手である限り目指すべき場所だと思っています。そこでしっかり活躍できるように、今を大事にして、世界レベルに近づきたいです」

メンバーに入るだけでなく、自分のプレーで日本を勝利に導くことーーその思いが、3ヶ月後に迫ったW杯向けて中島のプレーをより向上させていくはずだ。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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