知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

MF 14 長谷川唯 (日テレ・ベレーザ)

多彩なテクニックで魅了する
若きファンタジスタ。
ケガの少なさも一流の証

長谷川唯

攻撃の軸となる長谷川

昨年、なでしこリーグと代表で大きなインパクトを残した選手の一人が、22歳のMF
長谷川唯だ。
年代別代表では飛び級で上の年代のカテゴリーでプレーすることも多かった長谷川は、2017年1月に高倉ジャパンに初招集されると、重要な試合でゴールやアシストなどの結果を出し、すぐにレギュラーの座を掴んだ。
昨年4月のW杯アジア予選では、オーストラリア戦でW杯出場を決定づけるMF阪口夢穂のゴールをアシスト。決勝ではFW横山久美の決勝ゴールをアシストし、初タイトルを牽引した。一方、所属する日テレ・ベレーザでは昨年、リーグ4連覇の原動力になった。

クラブでは4-1-4-1のインサイドハーフが定位置で、代表では左サイドハーフやトップ下が主戦場となっている。ただし、試合中あらゆるエリアに顔を出す長谷川にとって、ポジションはあまり大きな意味を持たない。ベレーザでは味方と連係しながら、時にはセンターバックやフォワードの仕事もこなす。そのスタイルを支えるのは、本人も強みと自負する「運動量の多さ」だ。

ボールを受ければ、繊細なタッチと駆け引きで魅せる。
複数の相手を一発で置き去りにする俊敏なターン、わざと相手を食いつかせるパス、相手を自陣におびき出して裏を取るフィード。相手の心理も手に取るようなアイデアや閃(ひらめ)きは、長谷川の真骨頂だ。
昨年、ベレーザで進化したことの一つが、「相手と2対1の数的優位を作るために、あえて自分から仕掛けて相手を引き付けることを意識した(長谷川)」というドリブルだ。
ポジションがサイドからインサイドハーフになったことでボールに絡む回数が増え、味方との距離感がよくなったことで、駆け引きのアイデアがより多彩になった。

「インサイドハーフはいい状況でボールを受けられるし、1本でゴールにつながるプレーもできるので楽しいですね。サイドハーフでもどんどん中に入っていくプレーを意識しています」

長谷川唯

相手の逆を取るプレーは見応えがある

けがが少なく、コンディションの波が小さいことも、第一線でプレーし続けられる理由だろう。強いプレッシャーがかかるポジションで、ケガをしないためにどのようなことを心がけているのか。以前、こんな風に話していたことがある。

「相手が足を出すタイミングは大体分かるので、それを予測してプレーしています。まともにぶつからないタイミングで足を抜くとか、当たられたら抵抗せずに転んでしまった方がケガは少ないです。海外の選手だと軸足ごと削りに来たりするので避けられない場合もあるんですが、日本人選手よりも勢いを持って奪いにくるので予測はしやすいです」

若い頃から国際舞台で体格差のある相手と対峙してきた経験が、その冷静な予測を支えている。
いい意味で予想を裏切られる長谷川のプレーを追っていると、時間があっという間に過ぎていく。イングランド、ブラジル、アメリカとの3連戦に臨むなでしこジャパンには新戦力が多く、その閃きとテクニックで、日本に流れをもたらしてほしい。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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