右サイドで攻守の鍵を握る清水
高倉ジャパンの右サイドバックで現在、最も安定したパフォーマンスを見せているのがDF清水梨紗だ。
昨年2月のアルガルベカップでA代表デビューを飾って以降、質の高いプレーを続け、今や最終ラインに欠かせない一人となった。
豊富なスタミナを生かした攻撃参加と粘り強い守備は持ち味だ。160cm47kgと細身だが、若い頃から国内リーグや年代別代表で、年齢や体格も上の選手たちと駆け引きを磨いてきた。
昨年は、4月のアジアカップと8月のアジア大会のタイトルに貢献した。中でも決定的な仕事したのが、AFC女子アジアカップのグループステージ第3戦のオーストラリア戦と、アジア大会準決勝の韓国戦だ。
オーストラリア戦では、前半に相手の決定的なシュートをゴールの中でブロック。押される流れの中でもしっかり急所を防ぎきった守備が、W杯出場権獲得の呼び水となった。また、韓国戦では絶体絶命のピンチを2度防ぎ、試合終了間際にアーリークロスでFW
菅澤優衣香の劇的な勝ち越し弾を演出した。
W杯と聞くと、蘇る悔しい思いもある。高倉監督が率いた2016年のU-20女子W杯はメンバー入りしたが、直前のケガで涙を飲んだ。
「テレビで応援していましたが、出られなくて悔しい思いがありました。(6月のW杯では)メンバーに選ばれて、チームが少しでも良くなるように自分から発信していきたいですね」
強豪相手に攻撃でも先手を取れるか。
注目したい
そのためにも、6月に向けて、コンディションづくりも意識している。
直近の4年間のリーグ戦における清水の出場率は98%と非常に高く、そのうち91%の試合にフル出場し、日テレ・ベレーザのリーグ4連覇を支えた。今年も、かなりハードな日程になりそうだ。疲れ知らずのイメージがあったが、清水は笑って否定した。
「(今年の)元旦までサッカー(皇后杯決勝)をして、次の代表活動が月末には決まっていたので、昨年からシーズンがそのまま続いている感じです。疲れは感じますよ(笑)。でもその分、オフの日はサッカーから離れて、スイッチもオフにします。好きなことをしてリラックスしています」
そのメリハリは、試合にも生かされている。
試合中、清水は表情をほとんど変えない。終盤になっても飄々とオーバーラップを繰り返す。それは人一倍のスタミナを持っていることに加えて、重要な局面で力を出せるように予測して無駄をなくし、プレーの質を保っているからだろう。
清水が昨年夏のアメリカ戦後に「1対1もさせてもらえなかった」と、悔しそうな表情で振り返った相手がいる。それが、アメリカのFWメーガン・ラピノーだ。
「ラピノー選手はテレビでも観てよく知っていた選手だったので、マッチアップした時に、いつもなら上がっていけそうな場面でやめた場面があったんです。今回もまた対戦できることになったら、受け身にならずにどんどん先手を取っていきたいと思っています」
3連戦では、6月のW杯のグループステージで対戦が決まっているイングランドとも対戦する。欧米の強力なサイドアタッカーとのマッチアップで、清水が躍動感あふれるプレーを見せてくれることを期待したい。
文・写真 : 松原渓
松原 渓 (まつばら・けい)
東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。