知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

FW 20 横山久美 (AC⾧野パルセイロ・レディース)

強豪国に強いストライカー。
一発で流れを変えるゴールに期待。

横山久美

紅白戦では切れ味鋭いドリブルを見せていた

「必殺仕事人」。FW横山久美には、そんな言葉が似合う。
高倉ジャパンではチーム発足当時から名を連ねる最古参メンバーの一人で、重要な局面でゴールを決めるストライカーとして異彩を放ってきた。

昨年の代表におけるハイライトは、W杯アジア予選の女子アジアカップでの活躍だろう。
それまでの試合では出場機会が少なく、悶々とした表情を見せていた横山だが、準決勝の中国戦で73分から出場すると、その思いをピッチで爆発させるように、15分で2ゴールを決め、3-1の勝利に貢献した。
そして、決勝のオーストラリア戦では0-0で残り20分の場面でピッチに立つと、84分に劇的な決勝ゴールを決め、日本をアジアの頂点に導いた。

この2年半、アジア相手だけでなく、アメリカやオランダ、スペインといった強豪国相手にもゴールを決めてきた。連係の中で決めたゴールもあれば、ほとんど個の力で決めたゴールもある。世界水準のシュート技術を、横山はどのように磨いてきたのか。

2017年6月、フランクフルトへの1年間の期限付き移籍から帰国した際の言葉は印象的だった。
「“ごっつぁんゴール”でも、どんな形でも、ゴールが獲れればいいんです」

その貪欲な思いに技術を追いつかせてきた、と言えるのかもしれない。練習後の自主練で、GKと1対1の練習をする横山はとても楽しそうだ。
国内リーグを見ていると、横山はあらゆる角度や距離からネットを揺らすため、ゴールに特定のパターンがない。また、シュートスピードが速く、際どいコースを狙うため、GKはタイミングが合っていてもボールに触れないケースも多い。

2010年のU-17女子W杯で話題になった「6人抜きゴール」に象徴されるドリブルも健在だ。国内では2人以上の相手を引き付けて運ぶシーンは毎試合のようにある。

横山にとって、今年6月のフランス女子W杯は目指してきた舞台だ。

横山久美

積極的にコミュニケーションをとって攻撃を
リードする

これまで、チームでは2トップの一角、代表ではサイドやトップで出場することが多かったが、今シーズン、所属する長野ではボランチのポジションでプレーする可能性が高い。選手の入れ替わりが激しいチーム事情もあるが、フランクフルトでボランチとしての新境地を開いたこともあり、横山自身もチャレンジに前向きだ。今年はチームで初のキャプテンも務める。
代表でも中堅の年齢(25歳)になり、フォア・ザ・チームを意識した言葉が多くなった。若い選手たちと積極的にコミュニケーションを図り、チームを良くしようと自分なりに考え、行動している様子が伝わってくる。

「体のキレはいいですよ。今はコンディションを上げている時期だし、6月のW杯に向けて体をしっかり作っておきたいですね。メンバーに選ばれるために、チームでしっかり走って守備もすれば、代表でのプレーにも生きると思いますから」

そう話す横山は、プレーシーズンの練習試合では、2列目で献身的な守備も見せていた。
だが、どのポジションでプレーしても、横山が相手にもたらす「怖さ」は、やはりゴールへの嗅覚だろう。セットプレーでも「一発」を持っている。

「中盤からでも常にゴールを目指しているので、どのポジションでもゴールを決めにいきますよ」

練習ではキレの良さを見せており、アメリカ、ブラジル、イングランドとの3連戦でも研ぎ澄まされたプレーを見せてくれるだろう。選出されたFWは5名中3名が新戦力で、横山が最年長だ。その経験をどう伝えるのかにも、注目したい。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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