知られざる素顔を現地密着レポート なでしこ通信 from America

DF 3 鮫島 彩 (INAC神戸レオネッサ)

経験とともに深みを増すプレー。
最終ラインに欠かせない大黒柱に

鮫島 彩

自身3度目のW杯を目指す鮫島彩

なでしこジャパンのDFラインを支える大黒柱の一人、DF鮫島彩のプレーは進化を続けている。

2008年にA代表デビューを果たし、今年で10年目になる。その間、サイドバックの第一人者として代表を支えてきた。2011年のドイツ女子W杯優勝、2012年のロンドン五輪準優勝、そして2015年のカナダ女子W杯準優勝など、数々のタイトルを支えてきた一人でもある。

スピードとフィジカルの強さに駆け引きの巧さを融合した攻め上がりは、高倉ジャパンの強力な武器だ。守備面では、“エースキラー”として、各国のテクニシャンやスピードスターを封じてきた。

ポジションは本職の左サイドバックに加え、ここ2年は右サイドバックやセンターバックでの出場機会も増えている。「選手が2つ、3つのポジションにチャレンジしながら、いろいろな形でサッカーができるチームにしたい」(高倉監督)というコンセプトを体現しながら、プレーの幅を広げてきた。

昨年8月のアジア大会では、DF熊谷紗希が招集できない中で最終ラインを束ね、主将も務めた。そしてタイ、ベトナム、北朝鮮、韓国、中国と、アジアの上位国に全勝で優勝。鮫島はディフェンスリーダーとして、5試合でわずか2失点という日本の堅守を支えた。
また、昨年9月以降のリーグ後半戦はチームでもセンターバックを任され、リーグ2位の原動力になった。

複数のポジションをこなせても、鮫島のように「国際試合のスピードと強度に対抗できる」基準を満たせる選手は少ない。そして、その成長曲線は、ベテランと言われる年齢になった今でも右上がりのカーブを描き続けている。

今回のアメリカ遠征メンバーは、代表キャップ数「0」の新戦力が9人を占める。「100」を超えるのは、鮫島、MF宇津木瑠美、DF熊谷紗希の3人だけだ。以前は、リーダーシップを取ることについて「向いていない」と消極的な面もあった鮫島だが、立場の変化とともに、自身の心境の変化も感じているようだ。

「求められるものも年齢とともに変わってきますし、変わらなければいけないなと思います」(鮫島)

代表経験の浅い選手たちを導きながら、イングランド、ブラジル、アメリカという強豪国に立ち向かうことには不安もあるだろう。
だが、鮫島はその高いハードルをこれまでにも乗り越えてきた。

鮫島 彩

1対1の駆け引きにも注目したい

W杯が4ヶ月後に迫った今回の遠征で、チームは何を得て帰るべきなのか。鮫島の口調ははっきりしていた。

「(3カ国相手に)自分たちがずっとボールを保持できるわけはなく、攻められるシーンは何度もあると思います。その中で、自分たちはどういうやられ方が多いのか、そのパターンを学びたいですね」

失点を恐れるのではなく、自分たちが作り上げてきたスタイルをぶつけて、自らの弱点を探しにいくーーそれは、6月のW杯本大会で、同じ失敗をしないためだ。

世界ランク1位のアメリカには経験と実績を持つアタッカーが多い。中でも鮫島が一目置いているのが、スピードとテクニックに定評のあるMFトビン・ヒースだ。

「(アメリカで)一番上手な選手だと思います。久しく対峙していないので、もしマッチアップできたら、どんな感じなんだろう?と、楽しみです。恐怖もありますけどね(笑)」

鮫島とヒースのマッチアップが実現すれば、それは見応えのあるものになるに違いない。

6月のフランスW杯のメンバーに選ばれれば、鮫島にとって3度目のW杯になる。そこで最高の結果を掴み取るために、有意義な3連戦になることを期待している。

文・写真 : 松原渓

松原 渓 (まつばら・けい)

東京都出身。女子サッカーの最前線で取材を続ける、スポーツジャーナリスト。
なでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンをはじめ、女子のU-20、U-17 が出場するワールドカップ、海外遠征などにも精力的に足を運び、様々な媒体に寄稿している。

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