数々の有力選手を指導する長光歌子先生が
フィギュアスケート界を楽しく語ります!

歌子の部屋

vol.33

関西大学フィギュアスケート合宿を終えて

関西大学のフィギュアスケート合宿を終えた歌子先生に合宿の感想と今シーズンのお話を伺ってきました。

2018.10.2

長光歌子先生

合宿について―

■合宿を振り返って―

 この合宿はかなりきついものです。普通の選手ですと、日程が進むにつれ、調子が落ちていくのが通例です。しかし、この合宿に参加する選手たちは、よく頑張っていたと思います。年々全体のレベルが上がっていっていると感じます。前回から一年経って、練習時だけでなく生活面での態度なども、いろいろな面でそれぞれが成長しているなと感じました。
 上の子たちは小さい子たちの面倒を自然と見てくれるんですよね。そしてまた、面倒をみてもらった子たちがお兄さんになるころには、ちゃんと下の面倒を見てくれるんです。そんな不思議な自然の営みがあるようですね。少子化が著しいこの頃は、兄弟が少なかったり、核家族だったりします。特に男子は、フィギュアスケートをやっている人数が少ないので、こういう合宿でみんなが集まって、共同生活しながらお互いに頑張っていくという経験が大切なんですね。小さい子たちは上を、上の子たちは下を見て、というこうした合宿の在り方は、凄く良いことだなと毎年思います。
 また前回までは選手のレベルによって班を分けていたのですが、今回はレベルが偏らないように均等に分かれるように班を組みました。思ったよりもバランスよく練習できたんじゃないかと思いますね、良い効果が出てたと思います。
 この合宿は、2010年に北海道の月寒(つきさむ)リンクから始まりました。何年か前からは、本田先生に加え、林先生にも参加してもらうようになりました。別の先生が参加することで、生徒たちはもとより、私や本田先生にとっても刺激になりますし、モチベーションも上がります。こうしたことで、毎年選手たちの成長をしっかりと感じることができ、合宿は本当に楽しいと感じています。また選手たちも、普段私から言われていることを、他の先生から言われると改めて真摯に向かったりしますよね(笑)普段の練習では、ダメ出しをされても日が開いてしまって効果が弱いですが、合宿だと集中して毎日聞かされますから効果もありますよね。

■ルール変更への対応について―

 以前のお話でも出ましたが、今シーズンからのルール改正により、減ったのがジャンプ1つだけなのに30秒も短くなりました。結果、繋ぎの部分であるとか、表現をする時間も無くなりますし、ステップを踏みながらジャンプを跳ぶ時間もなくなるので、4回転ジャンプなんかは走って跳ぶしかないのではないかと思います。実際にプログラムが組みあがってきていますが、選手たちはきついと思っているのではないでしょうか。コレオシークエンスの配点は上がりましたが、その部分の余裕をとる事も難しくなりました。またジャンプの回転数に関しても規定が変わり、これまでは丁度1/4回転、90度の不足であればアンダーローテーションを取られなかったのですが、今シーズンからは厳密に1/4回転の不足でアンダーローテーションをとられるようになりました。こちらは、本当に些細な差なのですが、かなりの選手がこの規定に抵触してしまうのでないでしょうか。GOEのプラスマイナス5点も含めて、丁寧な3回転ジャンプを跳べることや、スピンで高いレベルを取る事が、高得点へ繋がっていくのではないかと思います。スピンなんかは下手をすると、中途半端なレベル4を狙うより、レベル3をしっかりととって加点をもらう方が良い場合もあるかもしれません。
 ジュニアは早く始まっていきますので、どんどんと新しい要素をプログラムで試していけます。どこの先生も、新しいプログラムでどのくらいの判定を貰えるのかわからないと思いますので、かなり手探りでのシーズンになるんじゃないかと思います。ジャッジの方も、新しい採点に慣れるまでに、かなりの時間を要するのではないかと思いますね。難しいシーズンになるのではないかと思います。

■今回の合宿で重視したことは―

 ジャンプの方は、本田先生、林先生がいらっしゃるので、スケーティングとスピン、そしてステップをより良くしていくことが私の仕事だと考え、徹底的にそこをやりました。ステップにしても、少しでもGOE+5に近づくように、ちょっとでもエッジワークやポジションをしっかりできるようにと、何度も繰り返し選手に言いました。
 またルールの話でも触れましたが、スピンも同じレベルを取れていても+5とマイナスでは点数が大きく異なるので、ポジションや姿勢を凄く気を付けて指導していました。ほんの少しのアドバイスでも効果がありますが、毎日言い続けていくことが大事だと思いますね。

長光歌子(ながみつ うたこ)
長光歌子(ながみつ うたこ)