PARA☆DO!

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対談後記

vol.4

文=田中ウルヴェ京

2016年7月22日

第4回「PARA☆DO!トーク×ライブ」 ゲスト:西崎哲男選手 (パワーリフティング)

2016年7月14日(木) 開催

田中ウルヴェ京さん

PARA☆DO!サポーターで、トークMCの
田中ウルヴェ 京さんによる対談後記をお届けします。

田中さんがリフティングにチャレンジした瞬間と、西崎選手のデモンストレーション

田中さんがリフティングにチャレンジした瞬間と、西崎選手のデモンストレーション

毎回、競技用の車椅子や義足を、間近で見て、実際に体験もできるPARA★DOセミナー。今回は、パラパワーリフティングの西崎選手をお迎えしたので、ステージには、ベンチプレスのマシンが。私自身、20キロだけを上げる体験をしましたが、西崎選手には、なんと120キロを持ち上げる瞬間も見せていただきました。

西崎さんは54キロ級の選手。そもそも体重の倍以上の重さを持ち上げちゃうだけでもすごいのに、それだけでなく、両足では踏ん張ることもできない状態でのリフティングは圧巻でした。
「両足が麻痺しているわけで、限られた使える筋肉を総動員させて、上げてます」
という西崎選手の言葉の裏には、緻密な細部の筋肉を意識しなければならないであろうトレーニングが想像でき、説得力がありました。

西崎選手のお人柄か、終始和やかな雰囲気で進行していた

西崎選手のお人柄か、終始和やかな雰囲気で進行していた

西崎選手とは、今回、初対面だったのですが、セミナー直前打ち合わせでは、あっという間に最初の5分で「空気が合った」感じがしました。自分自身、なんでだろう? なにがそうさせたのだろう? って思っていました。なぜなら、、、西崎選手は、決して「あけっぴろげ」なオープンな方では本来ないな、と勝手に憶測していたからです。言葉の端々や、打ち合わせでの対応を見て、いたって良い意味で、「周囲の方々にお気遣いをされる方」だと思い、「ん? それにしては、私に対しては、あんまり言葉を選んでないようだ」となんとなく思っていたわけです。

その理由は、対談後にわかりました。
西崎選手から、メッセージを頂いたのです。
「本日はお疲れさまでした。イベントが決まった時から本日まで緊張していましたが、(打ち合わせ冒頭での)田中さんの『足はあるの?』の一言で一気に緊張がとれました。相手に障害のことを気にされたり、傷つけないようにと言葉を選ばれているのが分かると、こちらまで言葉を選びますが、あの一言でその心配がなくなりました。」

田中さんから西崎選手へ贈る言葉の一場面

田中さんから西崎選手へ贈る言葉の一場面

西崎さんは、田中には言葉を選ばなくていい、と思ってくださったようなのです。「言葉を選ぶ」って、そうですよね、何のためなのだろうか?って考えさせられますよね。通常の会話の場合は、そりゃ、言葉を選ぶ理由には、「目の前の相手を無用に傷つけたくない、失礼をしたくない」などがあると思いますが、しかし、認知行動科学の側面で考えれば、「相手が傷つくかどうかは、相手の捉え方次第」ということになってしまいます。つまり、極端にいえば、こちらがよかれと思って発した言葉こそが逆効果になることだってあるわけです。

私は、自分が発する言葉の裏に、つねに大事にしていたい心理があります。それは、「あるがままのあなたを知りたい」という本質的な「つながり欲求」のようなもの。なぜ知りたいか? どなたも唯一無二。「いま、この一瞬」の時間を共有する目の前の相手の「いま」は変化するからこそ、知りたいというだけです。

終了後の記念撮影には、ライブで参加した清貴さんも一緒に

終了後の記念撮影には、ライブで参加した清貴さんも一緒に

その意味で、私は、初対面にもかかわらず、会って5分も経たないうちに、「足はあるの?」と西崎さんの机の下を覗いたのには理由があります。なんといいますか、事故のご経験がある方にしては、あまりに「足への執着感」がないようなプレゼンスでいらしたからです。
今回、西崎選手のお話を聞きながら、不思議だったのは、大人になられてからの交通事故の「記憶のコブ」が、あまりに小さい感じがしたことでした。脊髄損傷という事実の意味づけに、何か個性を感じる・・・。
なにかそこの部分が、西崎さんのお人としての温かさ、優しさ、力強さ、そして、競技への想いなどに関連があるように感じ、対談最後には、そんな説明をメンタルエッセンスとして紹介しました。

今回もステキなお話を伺うご縁を頂きました。ありがとうございました。