フジテレビパラスポーツ応援サイト
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vol.1
文=田中ウルヴェ京
2016年4月27日
2016年4月21日(木) 開催
PARA☆DO!サポーターで、セミナーMCの
田中ウルヴェ 京さんによるセミナー後記をお届けします。
和やかに進行しているセミナーの一場面
私は、トップアスリートへのメンタルトレーニングに、20年近く関わっていますが、いつも選手との最初の出会いの時に気をつけていることは、その選手のメディアなどでの情報をあまり事前に仕入れておかないようにする、ということです。できるだけ実際にお目にかかるご本人の「その日、その時、今、この一瞬のご本人」に「出会いたい」と思うからです。
高桑早生選手は、メディアでの露出も高い選手でいらっしゃいますが、お目にかかるのは今回が初めて。できるだけ台本も読みこまないようにして、イベント前の打ち合わせ部屋に入りました。
初めてお会いする高桑選手は、とっても「無色」で「つるん」としていました・・・。(笑)それが私の第一印象でした。そして私は、メンタルトレーニング指導士の立場として、色々考えました。
田中さんはとても話しやすく楽しかったと語る高桑選手
高桑早生選手(左)・田中ウルヴェ 京さん(右)
「彼女はどっちだ? 色がないのか、色を見せないのか?」
「色」とは、その人の個性とでもいいましょうか。なんというか、「その人のお人柄」みたいなものを、「ギラギラした配色」で「これでもか」とご自身を強調する方もおられれば、「穏やかな発色」をされる方もいます。べつに私は、何か特別なものが見えるわけではありませんが、仕事柄、できるだけ色々と察しようとはしています。
でも、高桑選手の「色」は「見えない」。だから、打ち合わせ時に、すでにいろんな方向の質問で試してみました。どの質問に、どういう色が出る方なのか、を探ろうとしました。そして、あ、「高桑選手じゃない、早生さんだ」と思ったのが、この質問をした時。
「性能のいい競技用義足を使いこなすには、それを操る人間側にも特別なテクニックがいるのではないのか?」
私は、この質問の具体例として、F1ドライバーの技術や、オリンピックの競泳選手が特別な競泳水着を使いこなす苦労などをあげて、筋繊維の話なども交えながら、「どれだけマニアックな繊細なテクニックが人間側にも必要か」について質問をしました。
高桑選手の話を聞こうと約150名が来場
その時、早生さんは「素」を出し始めました。どんな素晴らしい競技用義足も、その機能を最大限に発揮するための、めちゃめちゃマニアックなアスリートならではのSだったりMだったりする必死の行動の「素」を語り始めました。
「ああ、彼女はどれだけの『人間くさく、魅力的な沢山の想い』をこの小さな身体に秘めておられるのか」と、様々な想像を巡らせながら、本番での対談では、早生さんの魅力を多角的に教えていただきました。お話を伺いながら、早生さんの「逆境のなかでこそ、その一瞬から新たな人生価値観を創出し、自己成長の種を見つけ続けてこられた様子」を目の当たりにし、対談の途中から、私は大好きなガンジーの言葉を思い浮かべていました。
「明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学べ Byガンジー」
セミナーを終え、リラックス雰囲気
早生さんのこれまでのご経験は、まさにこの言葉を体現しておられました。大病などの経験で自らの「死を覚悟すること」は我々人間にとって、ストレスですが、その「事実」のなかで、「じゃあどうするか」と考えるか、「もうダメだ」と考えるかは自分次第です。「事実」は選べませんが、「どう考えるか」は選ぶことができるのが人生の醍醐味です。これは、アスリートへのメンタルトレーニングにおいて、常に重要な局面で話し合うことの一つですが、そういった「重い選択」を何度も繰り返してきたのであろう高桑選手は、とても清々しく、聡明で、でも、ちょっと内面は「とてもステキに悩み続けておられるであろう」、そんなしなやかなメンタルをお持ちでいらっしゃいました。
早生さん、ステキな時間をありがとうございました。