フジテレビパラスポーツ応援サイト
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vol.32
提供=産経新聞社
2018年3月1日
【月刊パラスポーツ】
国内大会に臨んだ村岡桃佳。積極的に攻めた=4日、長野・菅平パインビークスキー場(桐原正道撮影)
4年前の苦い記憶を払拭するつもりだ。3月9日に開幕する平昌パラリンピックで、旗手を務めるパラアルペンスキー女子座位の村岡桃佳(20)=早大。初出場だった前回ソチ大会は力を出し切れずに、不完全燃焼の思いが残った。だからメダル候補として挑む平昌大会での目標は結果を残すこと、複数種目での表彰台だ。(川峯千尋)
初出場したソチ大会は、パラリンピックに潜む“魔物”に押しつぶされた。当時17歳。日本選手団最年少の少女の頭は真っ白だった。初戦のスーパー大回転は旗門不通過で失格。続く回転は9位に入ったが、ミスを恐れた無難な滑りがふがいなかった。「このまま何も得られずに帰ることはできない」と強い気持ちで臨んだ最終レース。得意の大回転で5位に入賞し、安堵から涙があふれ出た。
「このままじゃダメだ。もっと速くなりたい」。競技への取り組み方が変わった。練習に対して貪欲になっただけでなく、「自分は経験も浅いし、分からないことも多い」と敬遠していたチェアスキーの設定や調整にも、積極的に意見を伝えるようになった。
2015年4月には早大へ進学。世界大会の出場者らを対象とする「トップアスリート入試」を、パラアスリートとして初めて活用してのことだ。現在はノルディックスキー複合の渡部暁斗(北野建設)らを輩出した名門・スキー部に所属し、寮生活を送る。「きょうは疲れた。サボりたいなと思っても、寮なので誰かしらはトレーニングしたり走ったりしている。それを見たら、私も負けてられないなって」。ともに世界の頂点を目指す仲間たちから受ける刺激も、村岡の成長を後押しした。
今季ワールドカップ(W杯)は各種目でコンスタントに表彰台に立ってきた。日本代表のエースで男子座位の森井大輝(37)=トヨタ自動車=からも「桃佳は全部でメダルを狙える」と太鼓判を押されるだけの実力を身につけた。
9日の開会式では、選手団の先頭で日の丸を掲げる。パラ競技全体への視線が高まる中での大役。「翌日のレースの緊張感を旗手で少しでも気持ちを紛らわせたらいいかな」と笑うが、内心はリベンジに燃えている。「注目が高くなるだけ、成績を残したい気持ちも強くなる。それをプレッシャーと感じずに、力に変えていけるようにしたい」。4年間、魔物に打ち勝つだけの準備はしてきた。
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パラアルペンスキー
障害の種類によって立位、座位、視覚障害の3カテゴリーに分けられ、男女別に順位を競う。座位クラスの選手はシート、フレーム、サスペンションによって構成されるチェアスキーを使用する。高速系種目の滑降、スーパー大回転、技術系種目の大回転、回転、スーパー大回転と回転1本ずつの合計タイムで順位が決まるスーパーコンビが行われる。滑走するコースは一般的なアルペンスキーと変わらない。障害の程度に応じて設定されている係数を実走タイムに掛けた計算タイムで順位が決まる。