バラエティの仕事

制作センター第二制作室 木月洋介

編成制作局

木月 洋介

今も大事にしている、ある方からの教え
“やる気のあるものは去れ”とは?

プロフィール
2004年フジテレビ入社
東京都 出身
東京大学経済学部 卒
所属 
  (2019年11月現在)
編成制作局 制作センター第二制作室
担当番組・役割
  (2019年11月現在)
『痛快TVスカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』
『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『99人の壁』など
各バラエティ番組で演出・チーフプロデューサーを務める

INTERVIEW

インタビュー

制作センター第二制作室 木月洋介

フジテレビを志望されたのはなぜですか?

木月洋介

木月

もともとは、テレビ局で働こうとは考えていなかったんです。大学で演劇をしていたこともあって、将来コンテンツを作る人になりたいという気持ちはあったけれども、それをどうやって仕事にすればいいかわからなかった。それは諦めて起業したり、その勉強のために何か資格をとっておこうかな、と考えていました。
でもある日、フジテレビで働いていた演劇サークルの先輩から「お前、フジテレビ受けてみたら?」と言われて、「そうかテレビ就活で受かりさえすればコンテンツ作りを仕事にできるのか」と恥ずかしながらそこで初めて知って、受けたんです。小・中学生の頃は「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば」「ダウンタウンのごっつええ感じ」(*1)などに多大なる影響を受けたので、入社したらフジテレビならではのコント番組をつくりたいなと思っていました。

*1 『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』
1990年〜1993年まで土曜20時帯で放送されていた、
お笑いコンビ・ウッチャンナンチャン出演のコント・お笑いバラエティ番組

『ダウンタウンのごっつええ感じ』
1991年〜1997年まで日曜20時帯で放送されていた、お笑いコンビ・ダウンタウン出演のコント・お笑いバラエティ番組

入社当時はどんなお仕事をされていたのでしょうか。

木月洋介

木月

最初はADとして、「笑っていいとも!」(以下、「いいとも」)と「ココリコミラクルタイプ」(*2)に配属されました。ADからディレクターになり、演出(チーフディレクター)になる。チーフプロデューサーになったのはごく最近です。この現場は勤続年数で業務内容に明確な区切りがあるわけでもないので、最近では「99人の壁」の千葉のように2年目から総合演出やってる人もいます。今のフジテレビは若手にチャンスがたくさんありますよ。
それからの経歴を大まかに話すと、5年目から「いいとも」のディレクター、7年目でコント番組「ピカルの定理」を同期4人で立ち上げ、10年目で「いいとも」の最終回の総合演出をやって。そのあとに「痛快TV スカッとジャパン」や「今夜はナゾトレ」など自分で企画した番組が次々ゴールデン帯で始まっていった流れです。

*2 「ココリコミラクルタイプ」
2001年〜2007年に「水10!」枠で放送されていた、お笑いコンビ・ココリコ出演のコント・お笑いバラエティ番組

制作センター第二制作室 木月洋介

やりがいを感じるのはどんなところですか?

木月洋介

木月

うまくいったことも、失敗したことも、そのまま視聴者に届いてしまうところです。「いいとも」の「曜日対抗!! いいとも選手権」(*3)というコーナーが一度、我々ADのミスで道具を壊してしまい急遽実施されなかったことがあるんですよ。生放送でどうすることもできないから、タモリさんが「今日は、ないでーす」と言って番組が終わって。そんなハプニングすら笑いにする。演者さんってすごいんですよ。
番組づくりは生放送でも収録でも、「本番」だというのは変わらないので。台本にとらわれず臨機応変にやっていって、その流れに応じた演者やスタッフの創意工夫でさらに面白くなっていく。その予定不調和がやっぱり一番面白いですね。

*3 「曜日対抗いいとも!選手権」
「笑っていいとも!」のエンディングで放送されていたコーナー
各曜日レギュラーが対抗してゲームを行う帯企画

バラエティ番組の「演出」や「プロデューサー」とは、どんなお仕事なんですか?

木月洋介

木月

番組によっても違いますが、基本的には「演出」は放送作家さんやディレクターたちと一緒になって番組内のコンテンツを構成し編集し面白く作りあげるのが仕事です。一方、「プロデューサー」は、スタッフや出演者を決めたり、予算の配分を決めたり、番組がちゃんと成立するよう全体を取り仕切るのが主な仕事ですね。とはいえ、企画を出すのは「演出」でも「プロデューサー」でもどちらでもできます。

それ以外にも最近では第二制作室の仕事として、若手社員の企画が通るようにサポートするような業務もしています。企画に光るものがあれば、どうブラッシュアップすればその面白さが他人にもっと伝わるようになるか一緒に考えたり。
例えば「99人の壁」は、入社2年目の当時ADだった千葉悠矢(2016年入社)が考えた企画です。そして現在、企画した千葉が「99人の壁」の総合演出を務めていて、自分はチーフプロデューサーではありますが、あくまで彼をサポートする立場に徹しようと考えています。

企画のブラッシュアップは、たとえばどのように進めるんですか?

木月洋介

木月

「99人の壁」では「1人が100人に立ち向かう」という企画ですが、「立ち向かいました」「それで負けました」「今度は勝ちました」っていう“現象”だけじゃ単調な番組になってしまうんです。“現象”を見せるだけの企画では番組に厚みが出ないんです。番組を1時間ずっと見続けられるくらいドラマチックにするにはどうしたらいいか。そういうお題を立てて考えていくと例えば「なんでその100人は1人を邪魔するの?」っていう疑問に行き着く。100人の側にも邪魔したいモチベーションがあるとどうなるのか。1人を止めた人が今度は次の挑戦者になれるとか。そうやって、誰しもにチャンスが回ってくるようにしたら、さらにそのリベンジが起きたりして面白い……とか。登場人物の気持ちが乗っかるだけで番組の面白さが全然変わるんですよ。

制作センター第二制作室 木月洋介

企画を考える際、意識していることはありますか?

木月洋介

木月

タモリさんがよく「やる気のあるものは去れ」と言うんですが、その意味をもうちょっと聞くと「やる気がある人は視野が狭く物事の中心しか見ない。一方でラクしようと思ってる人の方が、実は周辺で面白いことが起きていることに気づいている」と。面白いことっていうのはだいたい中心ではなく、周辺で発生しているんですよね。その周辺がいつの間にかメジャーになって世の中を変えていく。それを拾い上げるのが大事だと。そのほうが予定調和じゃないものが生まれますから。僕が勝手に大事にしているタモリさんの教えです。

その考え方で生まれた企画はどんなものですか?

木月洋介

木月

企画ってほどたいしたものではないですが最近のものでいうと例えば「99人の壁」の中でQAR(クイズ・アシスタント・レフェリー)って、番組内のクイズの問題や解答にトラブルがあったとき、別室にいるクイズ作家さんたちがジャッジするシステムがあるんです。あれは番組初期のスタジオの副調整室で、クイズ作家さんたちが出題トラブルでバタバタしてるのを横目で見て「この様子を放送した方がテレビであんまり見なくて面白いなぁ」と思ったのがきっかけで生まれたシステムでした。

制作センター第二制作室 木月洋介

特番収録時の副調整室(上) / 「99人の壁」QARの様子(下)

他にも木月さんが担当されている「キスマイBUSAIKU!?」(現在は「キスマイ超BUSAIKU!?」)では、
かっこいいはずのジャニーズがかっこ悪くなることもある、結構衝撃的な番組だと思うのですが、
あれはどうやって生まれた企画なんですか?

木月洋介

木月

そもそも「出演者(Kis-My-Ft2)の魅力を引き出す」ための番組という中で、キスマイは「ジャニーズなのにブサイク」だという噂があるというのを知って、面白いなと。
ジャニーズってみんな“かっこよさの頂点”を目指しているわけじゃないですか。そんな彼らが「かっこいい」と言われるために、色々な難題に挑む。人が笑うなって言われると思わず笑ってしまうのと同じで、かっこよくやってくださいと言えば言うほど、かっこ悪さがこぼれ落ちてくる時があるんですよ。でもそれがかわいいじゃないですか。極限状態でかっこよさを求められると、素が出てしまったり、失敗してしまったり、でもそれこそが彼らが魅力的に映る瞬間だと思ったんですよね。

企画を考えるために、日頃から意識してやっていることはありますか?

木月洋介

木月

日々たくさんのコンテンツに触れるようにはしてますね。話題のテレビ番組は全録で観ます。演劇など舞台はもともと好きですし、映画も観ます。目の前に「やらなきゃいけない仕事」はたくさんありますけど、そういったコンテンツに触れるのも「やらなきゃいけない仕事」です。いろんな種類の面白さをわかってないと、面白いものは作れないと思うので。

動画をつくることが昔に比べて簡単になり、
映像コンテンツも動画配信サービスなどで自由に観られる時代になりましたが、
今テレビ局に入社する面白さってどんなところにあると思いますか?

木月洋介

木月

一番はやっぱり、一流の方々が揃っているところだと思います。テレビ局に入社すれば、機材やスタジオなどの環境が備わっているのはもちろん、アイデアや技術を学べる先輩方、一流の技術をもったスタッフの方々、そして超一流の演者の皆さんがいます。ものづくりは決してひとりではできないので。一緒につくってくれる方々がいることが、テレビ局のいいところだと思います。
マスに向けたコンテンツ作りができることも魅力です。ゴールデン帯の視聴率と常に向き合い、視聴者のサイレントマジョリティが何を欲しているかを考えながらゴールデンのレギュラー番組を作っていく辛さや面白さは、少なくとも現時点では他の企業で体験できない事ではないでしょうか。

これからのテレビ番組はどうなっていくと思いますか?

木月洋介

木月

「大画面でみんなで観るコンテンツ」なのか「小さい画面で1人で観るコンテンツ」なのかに二極化していくと思います。面白いことを考えたら、どっちにあてはまるかなと考える。みんなで観てお祭りみたいになるコンテンツにするか、1人で観て熱狂できるコンテンツにするか。両方ちゃんとビジネスにしていくことが課題だと思っています。

制作センター第二制作室 木月洋介

どんな人に入社してもらいたいと思いますか?

木月洋介

木月

コンテンツをちゃんと好きな人。「自分はこれが好きだ」と言える人がいいですね。好きだって言えるものがないとつくれないです。色々なことを知ってるでも、ひとつのことに詳しいでもいい。ただ、一つ言えるのは、いかに自分の興味関心が狭いかを知るといいと思います。自分がちゃんと見てもないコンテンツを「つまらない」と決め込まずに、ぜひいろんなことに興味をもってください。