海外ビジネスの仕事

編成制作局 小宮隆司

編成制作局

小宮 隆司

海外で観た『料理の鉄人』が変えた運命
フジのバラエティを世界に売り込む

プロフィール
2005年フジテレビ入社
東京都 出身
国際基督教大学教養学部 卒
所属 
(2022年6月現在)
編成制作局 編成ビジネスセンターグローバル事業部
担当・役割
フジテレビのバラエティ番組『料理の鉄人』
『クイズピンチヒッター』などのフォーマットを海外に販売。
日英共同制作の番組『ツナゲー~繋げるバトルゲーム~』の企画・販売にも携わる。

INTERVIEW

インタビュー

フジテレビを志望した理由を教えてください。

小宮隆司

小宮

日本のテレビ番組を海外に売り込みたいと思ったからです。父親が商社勤務だった関係で、小学校3年生から5年間はベネズエラで過ごしたのち、アメリカの全寮制高校に進学しており、海外での生活が長かったんです。高校のときに先生から「すごく面白い日本の番組があるよ」と、アメリカのケーブルテレビで『料理の鉄人』(*1)の英語吹き替え版を放送していることを教えてもらいました。当時はフジテレビの番組だったことなど深く考えず、いつも楽しみに視聴していたんです。
そして就活のときに何気なくテレビ局の仕事を調べてみたら、テレビ番組を海外に売る仕事の存在を知り、「あのころ観ていた『料理の鉄人』のような、面白い番組をもっと海外に届けたいな」と。
就活初期は語学力を活かせる商社やメーカーを検討していましたが、日本の文化を海外に紹介できるテレビ局の仕事に興味を持ち、当時から海外事業に注力していたフジテレビの採用試験を受けました。

*1 『料理の鉄人』
1993年10月から1999年9月まで、フジテレビ系列で放送されていた料理をテーマとしたバラエティ番組。

編成制作局 小宮隆司

入社後はどのような仕事をしていたのですか?

小宮隆司

小宮

イベント事業部に配属になり、サーカス『シルク・ドゥ・ソレイユ』(*2)の日本公演の運営に携わりました。サーカス集団と一緒に全国を巡回し、公演場所の手配や130名近い団員の皆さんのサポートなど、仕事内容は多岐にわたります。その後、公演の宣伝やプロモーションも担当するようになりました。

*2『シルク・ドゥ・ソレイユ』
世界トップクラスのサーカスパフォーマー、ダンサー、アスリートによるエンターテインメント集団。
日本でのツアーショー(巡回公演)は、フジテレビが各地の系列局と共催。

『キュリオス』

シルク・ドゥ・ソレイユの創設30周年を記念して制作された作品
『キュリオス』日本公演終了時の集合写真(2019年)

『シルク・ドゥ・ソレイユ』に携わる仕事は、
どのような楽しさや学びがありましたか?

小宮隆司

小宮

僕、実はサーカスが好きなんですよね。ベネズエラに住んでいたときは、サーカスを体験できる施設でジャグリングをして遊んだり、帰国後も『シルク・ドゥ・ソレイユ』の公演を観に行ったりしていました。なので、サーカスに関われる仕事そのものにやりがいを感じました。また、30カ国くらいから集まる団員たちと英語でコミュニケーションを取れることも楽しかったです。団員のメンバーは年も近いですし、ホテルも一緒でほぼ毎日過ごすので、すごく仲良くなるんですよね。今でもSNSで繋がっています。
ただ、どんなに仲良くなっても、ビジネスなので言うべきことは言わないといけません。僕は通訳も担当していたので、お互いに気持ちよく仕事ができる方法を考えながらコミュニケーションすることを心がけていました。入社3年目くらいまでは、トラブルに見舞われると感情的になってしまうこともありましたが、色々な経験を踏まえて、物事を円滑に前進させるノウハウが身についたと思います。

現在は、グローバル事業部で海外事業を担当されています。
そもそもテレビ局の海外事業とは、どのような仕事なのですか?

小宮隆司

小宮

簡単に言うと、「テレビ番組を海外に売る仕事」です。まさに、入社時の志望理由だった「日本のテレビ番組を海外に売り込みたい」という思いを叶える仕事をしています。
日本の番組を海外に販売するには、いくつかのパターンがあります。まずは、コンテンツを翻訳して現地で放送する方法。そして、コンテンツの「型」を提供する方法。ちなみにドラマの型は「リメイク」、バラエティだと「フォーマット」と呼ばれます。さらに、海外の制作会社と一緒に、いちからコンテンツを作る方法です。

編成制作局 小宮隆司

世界最大級のテレビ見本市「MIPTV」で企画のプレゼンを行うようす(2022年)

具体的には、どのような仕事をしていますか?

小宮隆司

小宮

主に3つあります。1つ目は、海外のマーケットに足を運んでコンテンツを売りに行く仕事です。各地で開催されるテレビマーケットで出展ブースを設けて、商談を行います。
2つ目は、コンペイベントに応募して企画を売り込む仕事です。社内の番組制作担当者と一緒に企画書をつくり上げながら、交渉やプレゼンなどを行います。
そして3つ目は、海外の制作会社と共同で番組をつくることです。双方でアイデアを出し合い、ひとつの番組を作り上げていきます。2021年には、イギリスの制作配給会社と共同でバラエティ番組『ツナゲー~繋げるバトルゲーム~』(*3)を制作しました。コロナ禍ということもあって、基本的にはオンラインでミーティングを重ねて、企画内容を固めていきます。

いわゆる営業活動というよりも、さまざまなアプローチからコンテンツを届けるための道すじをつくる仕事です。

*3『ツナゲー~繋げるバトルゲーム~』
ターンテーブルに座った4人が1組のチームになり様々なゲームに挑戦するバラエティ番組。フジテレビとストーリーラボ(英)が、世界のコンテンツ市場に向けて共同制作した。

編成制作局 小宮隆司

世界最大級のテレビ見本市「MIPTV」で企画のプレゼンを行うようす(2022年)

2022年6月より、アメリカ版の『料理の鉄人』がNetflixで独占配信されています。
世界各国で放映されましたが、小宮さんはこのフォーマット販売にも携わっているそうですね。

小宮隆司

小宮

そうなんです。入社面接でも、高校時代に『料理の鉄人』をアメリカで観た話をしましたし、テレビ局という進路を検討するきっかけにもなった番組なので、運命を感じましたね。
『料理の鉄人』の特徴は、料理番組の要素にスポーツの実況を組み合わせたような世界観を持つところ。僕が初めて『料理の鉄人』を観たのは20年以上前ですが、企画の面白みやユニークさは、時を経ても色褪せません。
今後もNetflixで各国のローカル版が続々と制作される予定なので、世界で『料理の鉄人』のブームが巻き起こり、フジテレビの名前を世界に発信できたら本望ですね。

海外に展開するにあたって、フジテレビのコンテンツはどのような強みがありますか?

小宮隆司

小宮

やはりバラエティのフォーマットがすごく強いと思います。企画内容をはじめセットデザインなど、海外のバラエティ番組にはない要素があります。『ツナゲー~繋げるバトルゲーム~』を制作した際、彼らが求めているのは“クレイジージャパニーズゲームショー”だと実感したんです。
たとえば『とんねるずのみなさんのおかげでした』のコーナー「脳カベ」(*4)は、海外でも大人気コンテンツになりました。動く壁の面に人型がくり抜かれており、そこを人間がくぐり抜けるというゲームで、世界50カ国以上で現地版の「脳カベ」が制作されています。フジテレビの「バカバカしくて笑える企画」は海を越えて通用しますね。

*4「脳カベ」
バラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』内で2006年より放送された、人気企画コーナーのひとつ。

編成制作局 小宮隆司

様々なパートナーと仕事をするときに、
大切にしていることを教えてください。

小宮隆司

小宮

相手に「この人と一緒に仕事をすることが楽しい、働きやすい」と思ってもらうためにはどうしたらいいかを大切にしています。ミーティングで意見が食い違ったときなどは、こちらの意見を押し通したり高圧的に接したりするのではなく、まずは相手の主張を聞き、理解することを意識。「それは難しいけどこれなら大丈夫です」と伝えるなど、否定ではなく提案することを心がけています。
このスタンスは、イベント事業部在籍時の経験が活きているのかもしれません。相手がどのようなことを望んでいるのか理解した上で、調整や話し合いを進めていくことは、国籍やカルチャーにかかわらず、あらゆるビジネスシーンで求められていることなのではないかと思います。

海外事業の仕事は忙しい印象ですが、平日の夜や休日などプライベートはどのように過ごしていますか?

小宮隆司

小宮

時差の関係で夜にミーティングをする場合もありますが、最近はリモートワークが増えているので、対応しやすくなっています。ただ、僕のプライベートの時間は、子どもたちに独占されていますけどね(笑)。習い事に連れて行ったり、一緒に好きなサッカーチームの試合を観に行ったり。現在の仕事は、スケジュールに余裕を持てるので、比較的プライベートと仕事の両立はしやすいと思います。

最後に、就活中の皆さんにメッセージをお願いします!

小宮隆司

小宮

自分自身がどういう人と働きたいか、というのを大切にして、就職先を選んでほしいなと思います。仕事って、突き詰めて考えると「人と人の関係」。嫌だなと感じる人がいる会社で働いていると、仕事の意欲も減ってしまうものです。ちなみに、僕がフジテレビを選んだ理由のひとつは、人事担当者の人柄。面接前に緊張しているときも気軽に話しかけてくれたり、採用の段階が進むにつれて顔も覚えてくれたり、とても親身に接してくれました。
あと、僕は「何が何でも1位を取る」「圧倒的な売上を出す」みたいに、成功に向けて一人でガツガツ頑張るのは性に合わないタイプ。それもあって、チームで和気あいあいと一緒にひとつのことに取り組める今の職場がとても好きです。

テレビ局と言えば、番組を作っている会社というイメージが強いかもしれませんが、商社のような仕事ができる海外事業も展開しています。語学を使って国際ビジネスに携わりたいと思っている人は、ぜひ興味を持ってもらえたらうれしいです。