ドラマプロデューサーの仕事

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

編成制作局

草ヶ谷 大輔

想いさえあれば、誰にでもドラマを作ることができる

プロフィール
2007年フジテレビ入社
東京都 出身
立教大学社会学部 卒
所属 
(2019年11月現在)
編成制作局 制作センター第一制作室
近年のプロデュース作品
ドラマ
『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(2017)
『コンフィデンスマンJP』(2018)
『トレース~科捜研の男~』(2019)
『モトカレマニア』(2019)
映画
『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019)

INTERVIEW

インタビュー

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

フジテレビを志望した理由を教えてください。

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

小学3年生のとき、父親の仕事の都合でシンガポールへ家族みんなで移住したんです。テレビをつけても英語の番組しか流れず、日本が恋しくて不安な毎日を送っていました。そんな中で、祖母が母のために日本のテレビドラマを撮りためたVHSを毎月送ってくれていたんです。そのドラマを母と一緒に観ているうちに、それが僕の楽しみにもなりました。
そうしているうちに自然と「将来はテレビドラマの制作に携わる仕事をしたい」と思うようになって。大学生のときに参加したフジテレビの講座で、実際のドラマの制作現場を見て夢と期待が膨らみ、フジテレビを志望するに至りました。

入社後、最初はどんなお仕事をされていたのでしょうか。

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

入社してすぐにドラマ制作の部署に配属されて、最初は『ファースト・キス』(*1)という作品で、一番下っ端のAD(アシスタントディレクター)としてキャリアをスタートさせました。内示を受けたその日にそのままスーツ姿で現場へ向かい、右も左もわからないまま「美打ち」と呼ばれるドラマの全スタッフが揃うロケ場所・撮影方法や美術品などの打ち合わせに参加したのを覚えています。
当時のドラマ制作の現場では寝られない日々が続きましたね。毎日先輩に怒られ続けながら撮影していました。でも放送を観ると、つらかった日々の記憶がスーッとなくなっていく感覚を覚えました。作っている間は大変なことばかりだけど、作品として形になったものを観たときの感動はとても大きいですね。

*1 『ファースト・キス』2007年7月クール「月9」枠で放送されたテレビドラマ 主演は井上真央

やりがいを感じるのはどんなところですか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

できることが増えると、やりがいも増えてきます。
『ファースト・キス』の次に担当したのが『ガリレオ』(*2)だったのですが、ある日、現場にADの先輩方が多忙で来られなくて、チーフADと僕のふたりしかいない日があったんです。僕は当時一番下っ端のADだったんですが、先輩がやっている仕事を自分で考えながらやらなければならなくなった。無理にでも与えられた仕事以上のことをしてみたら、それがすごく面白かったんです。1作目に沢山怒られたおかげで、ある程度現場でADがどう動くべきか見えてはいたので、その経験が生きたと感じられたことがうれしかったのだと思います。そのときは改めて「ドラマを作る仕事って面白い」と感じました。

*2 『ガリレオ』2007年10月クール「月9」枠で放送されたテレビドラマ 原作・東野圭吾 主演・福山雅治
ドラマ第二シリーズ(2013)、劇場版第一弾『容疑者Xの献身』(2008)、第二弾『真夏の方程式』(2013)など続編も制作された

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

テレビドラマの放送は1月・4月・7月・10月……と
3カ月ごとの4クールに分かれていますが、
毎クールのドラマを担当するのですか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

今は1クール担当したら、次クールはのんびりできる時間があります。ドラマを制作している間はとにかく忙しいので、間があいたらしばらくは休暇をとって海外へ行くなどして心と体をリフレッシュします。そして、最新の舞台を鑑賞したり、人気のある漫画・小説を読み、流行っている映画を見たりして、次の作品に向けて感性を磨いていきます。体は休まるし頭の回転も戻ってきて、次のクールにまた良いドラマを作ろうと頑張れるわけです。

ドラマ制作におけるプロデューサーとは、どのような役割ですか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

作品の全責任を負うのがプロデューサーの役割です。
まずプロデューサーがドラマの企画を考えます。社内で企画書が通ったら、その企画を実現するためのキャストとスタッフを考えて集め、放送に向けて広報宣伝担当と一緒にプロモーションの展開を考えていきます。予算の使い方を考えるのもプロデューサーの仕事ですね。
ここまではバラエティ番組などのプロデューサーとあまり変わらないかもしれませんが、ドラマの場合は、脚本家さんと一緒に台本を作っていくのも仕事のひとつです。そして、放送前には、監督が編集した映像を観ながら映像の色味や音楽の付け方を一緒に考えて最終形にしていきます。

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

ドラマの「企画」は、どのように決まるものなの
ですか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

いろいろなパターンがあります。オリジナルか、原作ものかでも違います。
漫画原作であれば、プロデューサーが面白いと思った漫画を企画として会社に提出して、ドラマ化する場合が多いです。僕が現在、担当している『モトカレマニア』もそのひとつですね。

オリジナルの作品だと、どのように作られるのでしょうか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

プロデューサーが考えた企画を脚本家さんと一緒になって練ることが多いです。
例えば、『コンフィデンスマンJP』は、日本を代表する脚本家である古沢良太さん(*3)と弊社の成河広明(現・フジテレビ映画制作部長)がタッグを組んで企画を立ち上げました。僕はプロデューサーとして脚本作りから参加して、毎回ゲストが違うのでその方々のキャスティングをしたり、宣伝を考えたり、企画を実現するための細部を決めていきました。

*3 古沢良太(脚本家)フジテレビ系列ドラマやフジテレビ製作映画の脚本を多数担当
主なフジテレビ系列作品は、『リーガル・ハイ』(2012年・2013年)、『デート~恋とはどんなものかしら~』(2015年)、『コンフィデンスマンJP』(2018年)など。映画では『エイプリルフールズ』(2015)、『ミックス。』(2017)、『コンフィデンスマンJP』(2019)など

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

「モトカレマニア」の撮影中、山下章生役の浜野謙太さんと談笑

特に『コンフィデンスマンJP』は映画化も
されましたが、ドラマの制作とはどのような違いが
あるのですか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

当然ですがスケジュールと予算に違いがあります。
それこそ映画版『コンフィデンスマンJP』では香港ロケもしていますが、昨今、テレビドラマではなかなか海外でのロケなんて実現できません。
スケジュールでは、テレビドラマを1話作るための期間が最も長くてもせいぜい1カ月。でも映画は企画開発~公開まで1年以上の時間をかけて考えられるので、自分が考えたことを消したり修正したりしながら、ブラッシュアップしていくことが出来るんだと思います。
ただ、もちろんテレビドラマには、制限された中で視聴者の皆さんの反応を見ながら作り上げるライブ感がありますね。僕はそのライブ感がたまらなく好きです。

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

これからのテレビ番組はどうなっていくと思いますか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

テレビの観られ方や環境がめまぐるしく変わっている中で、改めて考えたいのは「テレビは誰のものなのか」ということ。そこを忘れずに考え続ければ、ポジティブな意味で変わっていくと思います。
視聴者の多くの方々に確実に喜んでいただけるジャンルや番組の形というのはありますが、それに縛られてしまうと新しい挑戦はできないし、視聴者の方々に新しい体験も届けられない。

元々僕は『東京ラブストーリー』など往年のトレンディドラマに憧れがあったんです。今は各テレビ局を見回しても、刑事モノや医療モノのドラマが多くなりましたが、『モトカレマニア』では、「今風のエッセンスを入れたトレンディドラマのようなものを作れないか」と考えたんです。昔であれば携帯電話がないから待ち合わせですれ違って出会えないとか、テレビドラマでは時代を反映した名シーンや名セリフが生まれます。それが今は、スマホがあるから“既読スルー”に落ち込んだりしますよね。「現代ならどんな形になるのだろう」と思って作りました。
僕はこれからもテレビドラマ制作の中で、新しい挑戦を続けていきたいと思っています。

制作センター第一制作室 草ヶ谷大輔

ドラマ制作者として、
どんな人に入社してもらいたいと思いますか?

草ヶ谷大輔

草ヶ谷

「ドラマが好き」というのは大前提として、さらに「自分がどんなドラマを作りたいのか」「このドラマを誰に届けたいのか」という想いがある人がいいと思います。

「学生時代に脚本を書いていました」とか「劇団で座長をやっていました」とか、そういった経験が必須というわけではないです。実際、僕もありませんでした。それよりも想いのほうが大事。むしろ、強い想いさえあれば、誰にでもドラマは作ることができると思います。

それこそ、その人が今まで生きてきた中に絶対“ドラマ”がある。たとえばコンプレックスだってドラマの主人公の設定にできるかもしれないし、何がドラマに活かせるかはわからない。そういったことを強みに思ってほしいです。特別な経験で武装して戦おうとなんてしなくていいんです。最初は誰もが同じことをやって、たくさん失敗して、覚えていくものですから。