アニメプロデューサーの仕事

アニメ開発部 岡安由夏

アニメ開発部

岡安 由夏

観てくれる人達にポジティブな影響を
与えられたら良いですよね

プロフィール
2008年フジテレビ入社
東京都 出身
立教大学法学部 卒
プロデュース作品
TVアニメ
『さらざんまい』(2019)
『BANANA FISH』(2018)
『甲鉄城のカバネリ』(2016)
『ピンポン THE ANIMATION』(2014)
劇場版アニメ
『きみと、波にのれたら』(2019)
『夜明け告げるルーのうた』(2017)
2019年には、BL(ボーイズラブ)特化のアニメレーベル「BLUE LYNX」を立ち上げた。

SCHEDULE

アニメ制作の流れ (プロデューサー)

  • アニメ開発部 岡安由夏

    企画会議の様子

    企画

    どのクリエイターに、どんな作品を作っていただいたら面白いかを考えるところから始まります。作品によっても異なりますが、アニメが完成するまでには膨大な時間がかかります。早くても2年、中には4年ほどかけて制作する場合も。

  • 脚本制作

    企画を打診してOKが出たのち、監督や脚本家の方々とともに話し合いながら「本作り」(脚本制作)を進めます。クリエイターの方々は引き出しやアイデアが多いため、作りたいものをしっかり理解した上でプロデューサーとして意見を出していく必要があります。
    「アニメが好き」だけでは務まりませんが、アニメに関する知識や理解が深くなければできない仕事です。

    資金調達や交渉

    社内・外の方々との「座組み」を整えていきます。同時に出資企業やタイアップ企業など、アニメを一緒に世に送り出すパートナーを探します。
    「いかに面白い作品を作るか」という部分も大事ですが、どのように収益を出すのかも重要。アニメは基本的に複数社から出資してもらう「製作委員会」のかたちをとります。多いときには10社程度と出資の交渉をしていきます。

  • 作品制作

    作品の制作自体は制作会社の方々が行いますが、脚本の打ち合わせや編集、アフレコ現場の立ち合いなどを行います。現場につきっきりなイメージがあるかもしれませんが、プロデューサーは外部交渉や予算管理、資料作りなどデスクワークも非常に多く、制作がきちんと進んでいくように裏からサポートしていきます。

    作品の公開
    (テレビ放送、動画配信サービス、劇場上映など)

    テレビや映画を始め、動画配信サービスなどを通じて、視聴者のもとに届きます。プロデューサーはより良いアニメをつくるためのまとめ役となります。ときには意見がぶつかったり、うまくいかないことがあったりしても、最終的に作品が評価されたときの喜びは何ものにも代えがたい経験です。

INTERVIEW

インタビュー

アニメ開発部 岡安由夏

フジテレビへ入社を決めた理由は?

岡安由夏

岡安

大学生のころ、サークルでフリーペーパーを作っていたのがきっかけです。自分たちが面白いと思ったことを発信するのが楽しくて、コンテンツに関わる仕事をしたいと思うようになりました。
あと、恋愛バラエティ番組『あいのり』がすごく好きで。たとえ恋愛でうまくいかなくても、努力や葛藤を経て新しい道を見つけていく姿を観ると、私も頑張ろうという気持ちになれたんです。私もそういう、人にポジティブな影響を与える番組を作りたいと思っていましたね。

そこからアニメ制作に携わりたいと思ったきっかけは?

岡安由夏

岡安

結局、入社当初はアニメだけでなくバラエティやドラマ、映画などのグッズを制作するライツ事業部に配属されました。その中で「もっとこういう作品だったらグッズが売れそうだな」といったことを考えるようになり、源流であるコンテンツを生み出す仕事がしてみたいと思うようになりました。それでアニメ開発部に異動希望を出したんです。

アニメ開発部に異動してから担当したお仕事は?

岡安由夏

岡安

はじめはアシスタントプロデューサーとして『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』の再放送を担当しました。プロデューサーという意味ではノイタミナの『ピンポン』が最初の仕事ですね。映画では湯浅政明監督の『夜明けを告げるルーのうた』と『きみと、波にのれたら』。あとは『進撃の巨人』の荒木哲郎監督のオリジナル作品『甲鉄城のカバネリ』、幾原邦彦監督の『さらざんまい』などを担当してきました。

アニメ開発部 岡安由夏

現在はどのようなアニメを担当していますか?

岡安由夏

岡安

今年はBLアニメレーベルの「BLUE LYNX」として、映画『囀る鳥は羽ばたかない the clouds gather』、『映画 ギヴン』、『海辺のエトランゼ』の3本を公開しました。あとは今後の作品の脚本打ち合わせに参加したり、企画を考えたりしています。

岡安さんは発起人として携わっていますが、「BLUE LYNX」が誕生したきっかけは?

岡安由夏

岡安

現在、アニメ開発部が担当するレギュラーのアニメ枠として「ノイタミナ」と「+Ultra」のふたつがあります。それを通じて感じたのは、「ノイタミナ」や「+Ultra」という“入れ物”で括られて語られることが多いんです。作品のことを知らなくても、「ノイタミナでやっているから観よう」と思ってくれる方々がいるわけですね。
「BLUE LYNX」では主に劇場版アニメを制作していますが、ノイタミナなどと同じようにボーイズラブ特化の“入れ物”を用意したいと思って立ち上げたレーベルです。今後、「『BLUE LYNX』の作品なら観てみようかな」と興味を持っていただけるようになればいいなと思っています。

アニメ制作プロデューサーの醍醐味は?

岡安由夏

岡安

一緒に仕事をしているクリエイターの方々にはあまりお勧めしていないのですが、私自身はすごくSNSでエゴサーチをするんです(笑)。辛辣なご意見が書かれていることもありますがが、うれしい感想や参考になることもたくさんあって。観てくださる方々の人生にポジティブな影響を及ぼすことを常に目指しているので、そういったつぶやきを見つけるとやりがいを感じますね。

アニメ開発部 岡安由夏

今のアニメ制作において重要なことは?

岡安由夏

岡安

世界で受け入れられ、幅広い層が観る作品かどうかです。NetflixやAmazonといった配信プラットフォームの影響はやはり大きく、配信で国内だけでなく海外の方にも観てもらうことは非常に重要になってきています。
ただ、その一方でそればかりだとコアなファンが支えているコンテンツや、世界的な展開が難しい作品が生き残りづらくなってくる。だからこそ、たとえばBL作品なら「BLUE LYNX」が支えていけるようになればいいなと思っています。

最近では『鬼滅の刃』が大ヒットしましたが、アニメ業界にはどのような影響がありましたか?

岡安由夏

岡安

「深夜アニメがこんなにも社会現象になれるんだ」というインパクトがありましたね。世の中的にも、会社的にも。フジテレビでも土曜プレミアムで放送することができ、それが地上波の全国ネットのゴールデン・プライム帯(19時~23時)での初の放送だったこともあって、その反響は大きかったですね。今は配信プラットフォームの普及により時間や場所、年齢層など問わず、幅広い人々がコンテンツに触れる機会があります。『鬼滅の刃』も深夜に放送されていたアニメですが、これほどまでに社会現象化しました。今はヒットの仕方やファン層も大きく変わってきていると感じます。
アニメにあれだけの力があることが広まり、さらに期待されているので、我々もそういったコンテンツを生み出していかなければと思っています。

アニメ開発部 岡安由夏

岡安さんがプロデューサーとして
大事にしていることは?

岡安由夏

岡安

常に「受け取る側」を意識することですね。テレビで観てくれる方々もちろん、映画を観てくれる方々、グッズやパッケージを購入してくださる方々など、作品を様々な形で受け取ってくださる方々がいないと作品が成立できません。「自分がこうしたい」ではなく、「相手が何を求めているか」を強く意識しています。
ですので、日頃からアニメ関連のSNSをチェックしたり、コミケの出展サークルを巡って「お客さんには、こういうキャラクターが響いているんだ」とか分析したり、アニメグッズショップへ行って棚の大きさや展開場所をチェックして人気傾向を探ったり、実際に自分の目で見るようにしています。

フジテレビのアニメ制作の強みは?

岡安由夏

岡安

たとえば『暗殺教室』や『約束のネバーランド』のように、実写や劇場版と連動できることですかね。アニメ開発部と映画制作部が協力してより大きな盛り上げを作れることもあります。やはり、いろいろなコンテンツを作っている人たちが同じ社内にいるのは強みですね。他のコンテンツを作っている部署へ相談しに行くと、作品やプロジェクトの可能性が広がりますから。総合コンテンツの会社としての魅力が生きていると思います。

アニメ開発部 岡安由夏

どんな人に入社してもらいたいですか?

岡安由夏

岡安

アニメの知識があるだけでなく、コミュニケーション能力の高い人ですね。アニメ開発部では所属1年目からどんどん企画を出してもらうし、企画が成立すればプロデューサーとして動いてもらいます。年齢問わず、プレイヤーとして活躍できる部署です。
アニメは資金を調達しないと制作を始められないため、プロデューサーはときに説得し、交渉しなければなりません。さらにクリエイターの方々と作品を作っていくための話し合いもある。さらには自分自身がインタビューを受けてアニメを宣伝する立場になる場合もあります。いろいろな種類のコミュニケーション力が必要なので、そのスキルを磨いてもらえたらと思います。