

脚本家・古沢良太さんが記者からのインタビューにこたえました!
今回の構想はいつ頃から、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
古沢:
ずっと前から80年代の中学生の話はやりたいと思っていました。それと、“大人の『スタンド・バイ・ミー』”のような作品もやってみたいとずっと考えており、メモ程度の断片的なアイデアとして、漫画のような落書きとして残すという作業を個人的にやっていたんです。具体的には2024年の夏頃に企画書のようなモノをプロデューサーの成河さんに渡したところから始まったのですが、その時に成河さんが、その漫画を原作にしたらいいんじゃないかと提案してくれたんです。 そこから漫画として組み上げていき、それを原作として脚本にしていったという形です。


劇中に散りばめられた80年代カルチャーが印象的ですが、主人公3人のキャラクターはどのように作られたのでしょうか?
古沢:
主人公たちは僕と同世代の設定にしたので、ほぼ僕の記憶を反映して脚本を書いています。あと、本筋と関係のないように見える80年代トークのわちゃわちゃで盛り上がるという部分がありますが、意外と本筋に関わるように作っているんです。
キャラクターは、等身大のキャラクターにしたかったという部分が一番大きいです。50代とかになるとつまずいたり人生に迷ったりするっていうことはたくさんあると思うんですね。がむしゃらに頑張っていた若い頃があり、失敗しても笑って許してもらえたり、こっぴどく叱ってもらえたり、目をかけて育ててやろうと思ってもらえたりという時代はいつの間にか終わっていて、誰も怒ってくれないし、失敗も許してもらえない。そういう年代になって、そこでまだ自分の中に燃える情熱のようなものを持っている人はすごく恵まれている人で、この後どこを向いて生きていけばいいのかわからない人ってたくさんいるんじゃないかなと思っています。若い頃のエンジンが“ガス欠”状態になってしまった大人たちがもう一度前を向くために、忘れ物を取りに行くという話にしたかったんです。その時に「こいつは俺だ」って思ってもらえるように、あんまり突飛なキャラクターにせず、どこにでもいそうなキャラクターにするということを心がけました。

主人公の3人にはどんなこだわりがつまっていますか?
古沢:
ユンについては、80年代は「オタク」という表現がすごく差別的な言葉というか蔑まれていたような言葉で、今みたいにポジティブに捉えられていませんでした。なのでオタクと言われたり見られたりということがすごく恐怖だったんです。僕は今思えばすごくオタクだったのですが、そう見られたくなかったし、スポーツもやっていたりしたので、体育会系っぽいフリをしていました。もっと素直にオタクライフをしておけば良かったなって思ったりもするので、そういった思いでこのキャラクターを作りました。彼の人生はある種勝ち組というか成功者の人生を歩んでいった人がつまずくというもので、そんな彼を圧倒的なスターとしての道を歩んできた反町さんだからこそ、等身大の普通の男、挫折した男として魅力的に演じてもらえるのではないかと思って期待しています。
チェンは、本当にこじらせているオタクで、チェンが言いそうなことは僕が中学生ぐらいの時に多分ほとんど言っていたことなんですけど(笑)、サブカル臭のような部分を大森南朋さんが自然とまとってらっしゃるのでそこに期待しています。
キンポーは、漫画を描くのが上手くて、僕も漫画家になりたかったのですがそういう道に進むのかどうかというのは人生の中で怖いことで、決断しなければいけないことじゃないですか。でも周りに気を遣ってなかなか決断できないといった人物です。僕はそんなの気にせずやりたいことをやってきましたが、そういう道に一歩踏み出さなかった自分という人生もあったんだろうなって思っていて、それをキンポーに託しました。そんな優しくて周りに気を遣うキャラクターとして津田さんがすごく魅力的に演じてくださっているなと思います。

最近、80年代を舞台にした作品が増えていますが、古沢さんにとってこの時代を描く面白さはどこにありますか?
古沢:
80年代はみんなが同じような生活をしていて、同じテレビを見ていて、ヒット曲はお年寄りから子供までみんなが歌えて、流行語もみんなが知っているという、そういう時代のことはドラマで使いやすいなと思いました。マニアックなセリフでも意外と多くの人がわかってくれるので、そういう題材として80年代は魅力的なのだろうと思います。
また、僕よりずっと先輩の作家さんたちは戦争や戦後の何もない時代をリアルタイムで経験した方とか、時代が大きく変わった転換点みたいなものを経験していらっしゃるから、それをドラマとかで描いてきた作家さんはたくさんいると思うんですね。そういった部分が作家として大きな武器を持ってるなと思っていて、僕らはもう国が成熟した後の世代なので、そういったモノがないなと思っていたのですが、冷静に振り返ってみると80年代と今ってもう全く時代が違っていて。インターネットの登場で大きく時代が変わったのだと思いますが、僕らにもそういった“大きく時代が変わった”というモノを書ける題材を経験していたということに気がついたんじゃないかと思っています。

好きなエピソードや思い入れのあるシーンを教えてください。
古沢:
脚本を書き終えるとその瞬間に全部忘れる病なので全く今思い出せないんですけど(笑)、第3話で『キン肉マン・ドラゴンボール論争』というシーンがあるのですが、そこが好きです。気分的にそんなに派手な脚本を書きたい気持ちはあまりなくて、今の自分の気持ちに素直に書いていました。しみじみと誰かにとってこのドラマを観て救われる人がいるんじゃないかなという思いでやっています。ちょっと勇気がもらえたり、もう一度前を向こうと思ってもらえたり、なんとなくそういう気持ちになってくれる人がいたらいいなと思います。

