
2021.11.1 MON. UPDATE

- 『ラジエーションハウスⅡ』出演が決まった時のお気持ちからお願いします。
- シーズン1のときに、ナレーションを担当させていただきまして、最終回に少しだけ出演するということになって。鈴木雅之監督とは以前からお仕事をさせていただいてきましたので、「ああ、また面白い仕掛けがあるんだな」と思って現場に行ったら、「年のいっている新人」という設定だと(笑)。僕としては、ある意味賑やかしのような気持ちでリハーサルに臨んで、リハーサルを繰り返すたびに違うキャラクターを試して演じていたんです。でも、「どれにしますか?」と監督に伺ったら、「どれでもいいよ!」とおっしゃったんです(笑)。そしたら(小野寺俊夫役の)遠藤憲一さんが、「3つ目のヤツ、好きだったな」とおっしゃったので、じゃあそれで、ということになって。以前、『ココリコミラクルタイプ』(フジテレビ系・2001~2007年放送)というコント番組をやっていて、そのときに「迷惑なエキストラさん」というネタがあって、何かというと「ええ、ええ!」「私ですか!?」とでっかい声で答えるようなキャラクターがあったので、まあそんな感じで楽しく演じて終わったんですけど、そこにシーズン2のお話がきて、「前に新人として甘春総合病院に来て、すでにいるんだから、そのままいてほしいんだ」と言われて「分かりました」と。「で、ナレーションは?」と伺ったら、「ナレーションもお願いしたい」ということでした。ただ僕は、ナレーションはどちらかと言えば『王様のレストラン』の森本レオさんみたいな……これも鈴木監督の作品ですけど、そういう気持ちでやっていたので、「ええ、ええ!」というでっかい声のおじさんと、「ここに、1枚の写真がある」という人物は全然違うものとして分けていたんです。だから、「これは別々の人物ということですよね?」と確認したら、「いや、同一人物です」と言われて、ますます分からなくなってきてお断りしようかと思ったくらいだったんですけど(笑)。だから、今回の田中福男という役柄は、段々森本レオさんの方に寄せて、「ええ、ええ!」という感じを段々弱めていって、いまちょうど、それを両方から合わせにいっている最中です(笑)。前のナレーションは、単なるナレーションとしてやっていましたけど、今回は現場にもずっと立ち会っている人間、ということになりますから、それをどうするのか、いま監督ともいろいろと打ち合わせてしています。未来から過去のことを見て……という風に時間軸を少し工夫するかもしれませんね。シーズン1から見てくださっている方、2から新しく見てくださる方にも、大勢いる中の端っこにいるメガネ、という意味では特に気にはならないと思うんですけど、僕の中ではそれくらいの葛藤がある中でシーズン2をやっています。
- シーズン1のときは、「八嶋さんの贅沢な使い方だ」と話題になりました。「ナレーションだけで出演はしないのか?」と。
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いやいや、全然そんなことはないです(笑)。僕も、淡い期待は持っていたんですよ。ただ、舞台が立て込んでいたときで、『劇団かもめんたる』という岩崎う大さんがやっている劇団の舞台に出ていて……。でも、そのう大さんは、シーズン1の第1話に医者役で出ているんですよね(笑)。僕は、そのまま三谷幸喜さんの歌舞伎座の公演(『月光露針路日本 風雲児たち』)に出たので、「(出演するなら)どういう風に出るのかな?」なんて思っていたんですけど……。これまた別の鈴木監督の作品で『本能寺ホテル』という映画がありますよね。僕はキャスティングされていなかったんですけど、ト書きに1行だけ「ホテルにくる宅配便の人」というのがあったんです。映画は京都で撮影をしていたんですけど、そのとき僕は舞台で奈良にいたんです。そうしたら「奈良にいるならこいよ」と言われてその役をやってほしい、と。でも、「宅配便の人がホテルのエレベーターに入っていく、というシチュエーションは普通はないから、マッサージ師にしよう」ということになり、「インチキ臭いマッサージ師にしたい」ということで散髪までさせられて刈り上げにされて(笑)。セリフもひとつもなかったんですけど、勝手に僕は「伝説のゴールドハンド」みたいな、マッサージ以外では右手を一切使わないというキャラクターで綾瀬はるかさんとただ向き合う、という、もっと不思議な使われ方をしていますのでもう慣れています(笑)。そういう意味では、鈴木監督とはいつもいろいろと楽しくやらせていただいています。
- シーズン1のときは、放射線技師という、あまりドラマなどで描かれたことがない仕事にスポットを当てた作品ということで話題になりましたが、その世界観もご存知の上でのご出演ということになりますね。
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そうですね。自分自身が関わっていたこともあって、息子が毎週楽しみにしてくれていたんです。きっかけは、僕がナレーションをしているから、ということだったからかもしれないですけど、もう普通にハマって、内容的にも、いろいろと考えるところがあったみたいで……。
- 田中福男というキャラクターを演じる上で、特に意識された点は?
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生真面目なキャラクターなんです。で、後々出てくるんですけど、何故40歳を越えて放射線技師になったのか……他の病院にいて甘春総合病院に流れてきたのではなく、新人としてきた、という背景ですね。真面目なんですけど、少しヌケているようなところもあって、私生活は謎めいていて。技師のみんながラジエーションハウスで並んでランチを食べるシーンがありますけど、みんなは売店で買ってきたようなものを食べているんですけど、僕だけはきっちり作られているお弁当を食べているんです。その辺も、何故そうなのかとか、考えていただければいいなと。シーズン2はドラマオリジナルですし、元々、原作漫画にないキャラクターですから、ちょっと特殊に作っても許されるのかな、と(笑)。だから、生真面目であるが故に滑稽に見える、というようなイメージで作っています。
- 当て書きなのでは?
- それはわからないですけど……。これは10月クールの放送ですけど、早い段階から撮影をしているので、演じながらそのキャラクターを見て、それがまたシナリオに反映される、というようなことがないので、脚本の大北はるかさんが持っている僕のイメージと、田中をどうしたいのか、という部分の折り合いを、僕も寄り添って行きながら探っていくような部分はあったかもしれないですね。全部撮り終わってからの放送になるので、軌道修正も出来ないですから。演じながら、反応とかバランスを見て後半は作っていくというのは連続ドラマの醍醐味だと思うんですけど、今はもう、台本に忠実に演じています。
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- このチームは、本当に仲が良いので、そこに後から参加するのも大変だったのでは?
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ここは、チームとして完全に出来上がっているんですよ。ノリも普通のドラマより凄いわけです。お祭り騒ぎなんです。だから、最初はそこに入っていくのが凄く気が重くって。でも、いまや誰よりも騒いでいます(笑)。
- 窪田正孝さんもそう証言されていました。
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ハハハ(笑)。いやだから、最初は頑張っていた、ということです。追いつかないといけないから。でも、助走で凄い走っちゃったから、そのままみんなを追い抜いて行った感じになっちゃっただけで(笑)。群像劇で、普段からずっと一緒にいるので、お芝居の話も、プライベートの話も、どうでもいい馬鹿話も、家族より長くいてたくさん話しているような状況ですからね。
- こういうチームもののような作品には、そういう関係性が画面から伝わりますよね。
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出ます! 空気に出ると思います。いま、大変な世の中で、撮影もなかなかしづらい状況ですけど、それ故に、余計みんなが力を合わせてひとつのものを作ろうとする意識がベースとしてあって、その中でふざけ合ったりもできるので、とても心地良いです。それは、作品の空気感にも、テンポにも出ると思います。
- 月9のレギュラー出演は『HERO』(第2シリーズ)以来、約7年ぶりになります。改めて何か思いがあればお願いします。
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月9というのは、僕らの世代にとっては、カッコいい男の人とカッコいい女の人が出て来て恋愛をする、という枠なので、実は『HERO』のときも違和感はあったんです(笑)。「月9でやらなくてもいいんじゃないか?」という。もちろん、木村拓哉さんというスーパースターがいらっしゃって、ということですけど、あれがきっかけになって、恋愛が主軸じゃなくてもいいんだ、という風に鈴木監督がしたのは凄いと思いますし、だから、僕のようなものでも月9にこうして帰ってくることができるようになったんだという思いもあります。なので、感謝しています。月9というと、やっぱり枠としての魅力があって、しかも僕には無縁の枠だと思っていたので、嬉しいんです。人にも言い易いですから。「月9に出ているんだよ」「次の月9に……」って(笑)。「次は『メガネLOVE』っていうタイトルなんだけどね」なんて言ってゲラゲラ笑ったりしてね。