2021.11.9 THU. UPDATE
- 『ラジエーションハウス』シーズンⅠはご覧になっていたんですか?
- はい。撮影方法なども含めて、凄いドラマだと思いました。だから、衣裳合わせの時に「凄いですね。どうやって撮ったんですか?」と鈴木雅之監督に伺ったら、「スタッフといろいろ相談して。まあ、原作の漫画もありましたし」と軽くおっしゃっていてちょっとビビりました(笑)。それにしても、撮り方といい、八嶋智人さんのナレーションから始まる入り方といい、流石ですよね。その中でも一番凄いなと思ったのは、国内・海外のいろいろな医療ドラマと比べて、派手な手術シーンがないこと。なのに、人間ドラマだけでこれだけ魅せてしまうという……。全然お世辞じゃないですよ。しかも、鈴木監督だけじゃなく、どの監督の回もそん色ないんです。それぞれのカラーが出ていて、面白いなと思いました。『月9』の底力、ドラマの底力を感じた作品でしたね。
- そんな作品に出演することが決まったときのお気持ちは?
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単純に嬉しかったです。鈴木監督とは映画で2本くらいご一緒したことがあったんですけど、連続ドラマという形では初めてだったので、「よくぞ、覚えていてくれたな!」と(笑)。まあ、鈴木監督はドラマ部長だから、僕が出演しているフジテレビのドラマは全部見ているんですけどね(笑)。そんな感じでしたから、衣裳合わせのときには興奮して盛り上がり過ぎてしまって、自分で自分を諫めなければいけないくらいでした。
- チームワークが出来上がっている場所に後から参加することに関しては?
- セリフも専門的で難しいし、立場も院長ということで、言ってしまえば“ヒール”なわけじゃないですか。後々、どうなっていくのかは分からないですけど、今のところは「この人、お金のことしか考えていないんじゃない?」と思うようなキャラクターなので、むしろ「後から入ったのだから頑張って馴染もう」というようなことは一切考えないで、みなさんとも距離を置いている、という形です。世間話にも加わらない。元々、僕はセットにずっといるタイプなんです。だから前室(スタジオ前の準備室的な場所)には行かないんです。今までもそうだったので、あまり違和感もないです。後、医療ものは専門用語も多いので、あまり調子に乗っていると永遠に噛み続ける、なんてことも起こり得るんです。だから、集中していないといけないですし。僕が噛み続けて、テイク3、テイク4とかにしてしまうと示しがつかないでしょ?(笑)。もしかして、今までどこかの現場で会ったことがある方は、「あれ? 何でこの現場ではしゃべらないのかな?」と思っているかもしれないですけどね。衣裳合わせの時、鈴木監督からも「キャラが立っているということで、入ってもらったんですよ」と言われましたし(笑)。それがずっと胸に刺さっているというか、「頼むぞ!」と言われたような気がして、軽いプレッシャーにもなっています(笑)。
- 灰島院長は、物語の構造上は確かに“ヒール”ですけど、それだけではないですよね?
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和久井映見さん演じる渚には、学生時代に告白したんですけどはぐらかされたりして失恋していて、でも心のどこかではまだちょっと想っていて……みたいなこともありますからね。同時に、甘春杏(本田翼)先生のお父様である元院長の正一(佐戸井けん太)先生にも当然お世話になってきたんでしょうし、そういう中で、どうやってこの病院を立て直していくのか、という経営者としての側面もありますからね。そういう多重構造の面白さは、脚本の大北はるかさんと鈴木監督というファンタジスタたちの力ですよ。実は最初、もっと抑えた感じの演技を考えていたんですけど、鈴木監督が「そこ、もっと強くやってくれないかな?」とおっしゃって。他の監督からもそういう要求が多いので、今、僕自身もちょっとマヒしたような感覚になっています。時代劇なんじゃないか、と思うくらい(笑)。
- 撮影が先に進んでいますから、つなげた映像を見ることも出来ませんし。
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そうなんですよ。(小野寺技師長役の)遠藤憲一さんを睨むシーンのときは、「怖いよ、それ!」と言われましたからね(笑)。鈴木監督からは「(映画)『本能寺ホテル』のときのあの目力をお願いしますよ」言われたんですけど、「あれは戦国武将なのに……」と困惑しました(笑)。
- 主人公の唯織を演じている、窪田正孝さんの印象は?
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あれほどハジけた方だとは思いませんでした。シーズンⅠを見た時……まあ、原作の漫画があるとはいえ、あの挙動不審な感じとシリアスな感じを成立させるのは難しいじゃないですか。最初に会ったときに彼にもそれを言ったんですけど、「いえいえ、そんな……漫画の方がもっと凄いですし」みたいにあまりにも謙遜しておっしゃってたので逆にちょっとビビりました(笑)。以前、何かの作品で一緒になった時は、“孤高の演技者”みたいなイメージだったので、余計にそう思いました。ただ、この『ラジエーションハウス』のメンバーの凄さは、窪田くんに限らず、みなさん骨の髄まで“ラジハ”が染み込んでいるような感じなんです。だから、検査シーンひとつとっても、とにかく自然なんですよ。
- 放射線技師が中心のお話ですし、あまり知られていないような病気も題材になっています。台本をお読みになって感じたことは?
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一番仲が良い友だちがお医者さんなんです。だから、色々、美味しいもん接待(笑)してからドラマに入りました。でも酒が進んじゃって随分、酔っ払ってから台本の質問になっちゃって(笑)。ただ、どんな職業の人を取材しても思うんですけど、やっぱり対外的な姿勢としては、ちょっとカッコつけるものなんですよ。だから、案外、本音は聞けないんですよね。人によっても、立場によっても考え方は人それぞれですしね。それでも、専門用語とか技師さんの仕事については聞けました。「こういう“べらんめぇ”な技師長はいるのか?」とか。「いや、います!」で、遠藤さん凄いな、とか(笑)。レントゲンやエコーにもポータブルがあるとか、そういう話が聞けたのは良かったです。撮影中は何かあれば連絡を取って、「こういう時は普通どうするのか」と教えてもらっています。こういうご時世ですから、病院まで聞きに行くわけにもいかないので、家から電話して……。良かったですよ、親友がお医者さんで(笑)。