INTERVIEW

インタビュー#04 関口メンディーさん

今回、オファーを受けた時の心境を教えてください。

僕はアニメのファンだったので、オファーをいただいた時は素直に嬉しかったです。音楽業界の話ということもあって自分と重ね合わせる部分も多くて、アニメを見て泣いちゃうぐらい大好きで。
ただ、自分がどの役なのか分からなくて。最初は孔明かな?四角い頭をそのまま帽子にするのかな?と思ったんですけど(笑)違うと言われて、じゃあラッパーの赤兎馬カンフーかな?と思ったらそれも違いますと言われて。前園ケイジはアニメには出てこなかったので僕は知らなかったんですけど、原作を読んだらすごくキャラが強いヒールで。僕は今までここまでの悪役を演じたことがなかったので、新しい引き出しを作るチャンスだな、自分が試されるなと思って俄然やる気が出ました。

歌うということについてはいかがでしたか?

ラップは今までもやっていましたが、歌の練習はしたことがなかったので、どこまで持っていけるのかなというのは正直少し不安でした。でも新たな挑戦としてやる価値があると思ったので、ボイストレーニングに通って練習を重ねました。
曲も本当にプロフェッショナルの制作チームの方たちで作られていて、自分たちのグループで使いたいぐらいのクオリティで。その中で自分も新しい可能性を引き出していただいていると思います。

アニメのファンだったとのことですが、この作品のどこに惹かれましたか?

この作品は、設定はトリッキーですが、月見英子という人間のサクセスストーリーだと思うんです。自分に自信が持てないけど行きたい目的地はあって、そこに向かって必死に足掻いて、仲間を見つけて少しずつ近づいていくという。そういう物語が大好きなんです。
僕自身も、例えばGENERATIONSの候補生になった時には、自分が最年長だけどダンス歴は一番浅くて、ついていくのに必死だった経験もあるので、突然強い人たちの中に入れられて足掻くっていうストーリーは自分と重ね合わせてしまうんですよね。しかもそれが音楽業界の話だったので、より感情移入しやすかったんだと思います。

前園ケイジという役を演じるにあたって、工夫した部分はありますか?

オファーを頂いてから原作で前園ケイジというキャラクターを見て、自分の中ではある程度、役の形を作って現場に入ったんですが、演出の渋江さんをはじめスタッフさんたちから「こうしてみたらどうですか」とか「こういう風にやってもらえませんか」みたいなオーダーが常に出てきて。それを取り入れることで、自分の中の前園ケイジ像が明確になっていく感覚がありました。なので本当に周りの方と一緒に作り上げたという感じですね。自分から「こういうのはどうですか?」と提案することはありますが、自分のエゴみたいなものはなるべく排除して、作品が良くなることに徹しました。

オーダーに戸惑うようなことはなかったですか?

やったことない方向のお芝居をオーダーされることもありましたが、それにチャレンジしていくのも楽しかったです。毎回、自分の引き出しがどんどん広がっていくような感覚がありました。

関口さんの中での前園ケイジ像は?

前園ケイジは悪役ではありますが、根っからの悪人ではなくて、すごく純粋にエンタテインメントが大好きであるが故に、ねじ曲がっていってしまったみたいなところがあると思うんです。そのエンタテインメントが大好きだという気持ちは僕と同じだと思いますし、負けたくないとか一番になりたいっていう気持ちも僕にはあるので、自分の黒い部分みたいなものを思いっきり引き出したら前園ケイジになるのかなとか、そういう意識で演じていました。そこにちょっと可愛げというか、コミカルさやポップさがあって憎めないキャラクターですよね。

関口さんは普段からステージでパフォーマンスされていますが、普段のパフォーマンスと前園ケイジとしてのパフォーマンスで違う部分はありましたか?

撮影に入る前に歌や振付の練習をしたんですけど、僕はずっとパフォーマーとして舞台に立ってきたので「舞台の上では何かしないといけない」みたいな思い込みがあることに気付かされて。前園ケイジは歌って踊れるスーパーアーティストなんですけど、スーパーアーティストって舞台の上に立ってるだけでスーパーアーティストなんです。でも僕は「ただ舞台の上に立つ」ということをしたことがないので、「何かしなきゃ」ってなってしまう。振付師の方に「今のだとスーパーアーティストというよりダンサーになっている」と言われて、かなり試行錯誤しましたね。

一生懸命に踊りすぎるとスーパーアーティストには見えないということですか?

人の行動って、必ず理由があると思うんです。ありがたいと思ったから「ありがとう」と言う、そういう発露が必ずあると思うんですけど、歌って踊れるスーパーアーティストが踊る時の発露って何だろう?と考えて。僕がいつもやっているパフォーマンスは観客を楽しませるためですけど、スーパーアーティストはたぶん違うんですよね。自分の歌を伝えるためであり、自分自身がテンションを上げるために踊ってるんですよ。だから、別に踊りたくなかったら踊らずに立ってるだけでもいいっていう。その発露の違いで、パフォーマンスが全く変わってくるんですよね。

そこをクリアするのは大変な作業だったのでは?

自分が今までやってきたことを1回アンインストールして、新しい概念をインストールしないといけなかったので、それは時間がかかりましたし、かなり辛かったですね。今までやってきたことを全否定されているみたいな、右利きを左利きに変えろって言われているような感覚で。でも、それをやったからこそ見えた景色があったので、振付の方には本当に感謝しています。

この作品で共演された方で、一番印象に残っているのはどなたですか?

小林役の森山未來さんですね。僕が一番好きな映画が『モテキ』で、森山未來さんはその主演をされていて、もともと大好きな俳優さんで。身体表現の分野でも凄い方なので、僕の中ではずっと憧れの存在でいつか共演したいと思っていたので、この作品で夢がひとつ叶いました。

実際に森山さんと共演されてみた感想は?

僕のクランクインが森山さんと対峙するシーンで、一緒にお芝居するのはその日だけだったんです。前園ケイジの人格を作る上でも大事なシーンだったので、すごく意気込んでいたんですけど、そういう緊張を察してなのか、森山さんが和らげてくださったりして。お芝居が洗練されているだけではなくて、すごく周りが見えていらっしゃる方なんだなと。
実際に対峙するシーンでは、今までお芝居ではあまり感じたことのないような迫力というか、圧を感じて「あ、本物だ…!」って。でも、憧れているからこそここで負けちゃいけない!という気持ちになって頑張りました。それは多分ケイジの思いとも通じていたと思います。そういうのも含めて、すごく森山さんに引き出してもらった感じがします。

撮影の合間など、森山さんとは何かお話されましたか?

森山さんも身体表現をされている方なので、身体の作り方、鍛え方、健康管理みたいなお話をしました。あとは初日に、僕がどれだけ森山さんの作品が好きかということを熱弁しましたね。これだけは絶対伝えたくて。森山さんは、すごくはにかんでらっしゃったと思います(笑)。

森山さん以外では、どなたかと撮影中のエピソードなどありますか?

撮影ではKABE太人役の宮世琉弥君と一緒になることが多くて、以前も共演したことがあったので、久しぶりーみたいな感じでよく話していました。撮影中のエピソードとしては…、前園ケイジって短パンがすごく短いじゃないですか。座っているケイジとKABE太人が対峙するシーンの時に、短パンの隙間からパンツが見えちゃっていたみたいで、宮世君がツボに入って全然芝居ができなくなったことがありました(笑)。僕も面白くなっちゃって、ちょっと見せてみたりして(笑)。

あの印象的な衣装を初めて着た時はいかがでしたか?

原作を読んでいたので服装もそのイメージだったんですが、全然ベクトルの違う衣装が用意してあって。正直、これを 着るのか…って一瞬ためらったんですけど、いや、でも前園ケイジだしな、と思って。周りもすごくキャラが濃かったり、インパクトのある方が多かったので、確かにこれぐらいやらないと前園ケイジとしていいスパイスにならないなと思い、「はい、着ます!」って。
それで着てみたら、なんかすごく板についちゃったんですよね(笑)。最初は脚が出ていて恥ずかしいなって思っていたんですけど、それがだんだん快感みたいになってきて。透け透けの服とか着たことなかったんですけど、着てみるとなんかかっこいいなって。
吉祥寺でのロケの時も、現場までベンチコートとか着て衣装が見えないようにすればいいんですけど、商店街をあの服で普通に闊歩してました(笑)。みんなに見せたくて。それぐらい大好きな衣装になりました。だから撮影が終わった今、ちょっと短パンロスです(笑)。

実際にオンエアされたドラマを見ての感想は?

もちろん台本は全部読んでいたし、ストーリーも知っているんですけど、実際の映像を見た時はかなり驚きました。地上波のドラマでこんな質感の作品あったっけ?みたいな。『パリピ孔明』という作品に対するスタッフの皆さんの熱量というか「好き度」がすごく伝わってきて、それが嬉しかったですね。僕も出演者として、いちファンとして、 もっともっと世の中に広めたいと思っているんですけど、みんなも同じように思ってくれているんだなって。作品の中身だけじゃなくて、その周りを固めているスタッフの愛みたいなものも含めて、魅力的な作品だなと思います。

BACKNUMBER