

今回『パリピ孔明』への出演が決まった時のお気持ちは?
向井:
どうして僕にオファーが来たのか今でもよく分からないんですけど(笑)、41歳になってこういう役をやるとは思っていなかったのでびっくりはしましたね。タイトルが変わっていたので(笑)最初は正直ちょっと不安もありましたが、原作を読むと意外とすごく骨太な内容でした。いろいろな人の成長や挫折をきちんと描いている物語なので、これはしっかり説得力を持たせて演じないといけないなと思いました。
上白石:
私もお話をいただいてから原作を読んだのですが、向井さんがおっしゃる通り、人が夢を追う美しさとか、一人一人の信念が描かれたとても真摯なドラマだなと感じました。だからきらびやかに楽しくやりつつも真剣に演じたいと思っていて、現場でもみんなと真面目にふざけてます(笑)。それがすごく楽しいです。
このドラマに出演されると決まった時の周囲の反応は?
向井:
周囲の反応…あった?
上白石:
私の周りには漫画やアニメを見ていた方が結構いたので、今までにないくらいの反響を感じました。「英子やるんだ!」ってたくさんの方に言っていただいて、この作品の持つ影響力を痛感しましたし、みんなの期待を感じて身が引き締まる思いになりました。
向井:
確かに、前の現場で「次何やるの?」って話をした時に、諸葛孔明の役って言うと「パリピ孔明!?」って言われましたね。「俺も出たい!」って言う人もいて。「あのシーンどうやるの?」とか聞かれることは一番多かったかもしれないです。
お二人は三国志や諸葛孔明についてどのようなイメージをお持ちでしたか?
向井:
兄が漫画を持っていたので、僕も子供の頃に読んでいました。だから登場人物がそれぞれどういう人物なのか、おぼろげながら分かる感じではありました。孔明に関しては天才軍師と呼ばれていた人ですし、人間離れした知性を持つ人、浮き世離れした人っていうイメージが強いですね。だから今回も普通の人とは違うお芝居を心がけています。
上白石:
英子は三国志を全然知らないので、私も自分からは三国志の情報を取り入れないようにしようと思いました。でもたまたまなのか、現場には三国志ファンの方がとても多いんです。森山未來さんが演じるオーナーの小林は三国志オタクなんですけど、森山さんはオーナーを超えちゃってて(笑)。オーナーが三国志を語るセリフって台本でも長いんですけど、森山さんがアレンジして3倍ぐらいになってる時があって、それに向井さんも対応されていて。私だけがリアルに置いていかれるっていう…(笑)。
向井:
いやいや、マニアックすぎて正直何言ってるか分かんない時もあったよ(笑)。森山君が誰よりも一番詳しいので、分かんないことがあったら森山君に聞けば全部説明してくれるんです。プロデューサーと森山君がニヤニヤしながらセリフを考えてるのを見ると、あーいい現場だなぁと思いますね(笑)。
撮影現場の雰囲気はいかがですか?
向井:
すごいアーティストの方々にちょっとのシーンだけでも出演していただいていたり、本当に贅沢な現場だなと思います。打ち上げをしたらフェスになるんじゃないかっていうぐらい(笑)。普段お会いすることのない人たちとお芝居ができるのはすごく新鮮ですし、毎日お祭りをしているみたいな感じですね。猛暑の中の撮影でも、みんな笑顔が絶えなくて、すごく居心地がいい現場です。
お二人は初共演ということですが、共演された印象は?
向井:
上白石さんはひとつの作品を作り上げる上での“戦友”みたいな感じです。もちろん年齢や性別の違いはありますけど、あまりそういうことを気にせず「このシーンはこうしてみよう」って真摯に言い合える関係だと思います。良いものを作りたいという意識が強いので、とても頼もしいですね。それと、この物語は英子の成長物語でもあるので、彼女の歌声やパフォーマンスが、回が進むにつれて研ぎ澄まされていくさまを間近で見られるのが楽しいです。
上白石:
向井さんはすごく冷静に作品を見つめてらっしゃる方だなと思います。今回は撮る順番がバラバラなので、急にクライマックスを撮る時などは気持ちの整理が難しいんですが、そういう時には的確なアドバイスをくださって。だんだん向井さんと私が孔明と英子の関係に近づいているようにも感じますし、向井さんの人柄が、今回の作品を自然にいい方向に導いてくれているように思います。
『パリピ孔明』はアニメでも人気ですが、実写ドラマならではの魅力はどこだと思いますか?
向井:
やっぱり生身の人間が動いて歌って踊って、フェスにはお客さんもちゃんといる、その生々しさみたいなものが大事じゃないかな。 それに加えて、このドラマは自他ともに認める天才肌の(笑)渋江監督らしさがすごく出ていて。ちょっとしたシーンにもアイデアが詰まってるし、今までのドラマではありえないことをやっている。「今までにないドラマを作っている」という自負心は、キャストにもスタッフにもあると思います。
上白石:
そうですね。みんなが良いと思うものを全力でぶつけ合っているような現場で、 毎日「なんて贅沢な画角の中に身を置かせてもらってるんだろう」って思いながら撮影しています。漫画は原作者の方の感性でいろいろなキャラクターを書いていくけど、ドラマだとそれぞれ全く違う人間が、それぞれの感性で役に自分の身をはめていくので、キャラクターの個性がより際立つというのも実写化の素晴らしいところだと思います。
特に注目してほしいシーンはありますか?
上白石:
やっぱりライブシーンですね。渋江監督はMV(ミュージックビデオ)もたくさん手がけていらっしゃるので、とにかく音楽シーンの見せ方が素晴らしくて。原作で感じたライブの迫力とか疾走感、みんなが音楽を通して一体となっていく感じが映像でもすごく丁寧に描かれていると思うので、ライブシーンは特に見てほしいですね。
向井:
ほんとに凄いんですよ。クランクインが菅原小春さん演じるミア西表のライブシーンで、僕は休憩中だったので、遠くから見ていました。菅原さんのパフォーマンスに演出・カメラ・照明が組み合わさった映像を見て、正直「たった一つのワンシーンでここまでやるんだ…」って思いました。そこで監督やスタッフの本気度が分かりましたし、こちらも覚悟決めて演じなきゃいけないと思うと同時に、こういう方たちと一緒にドラマを作れるのは幸せだなと思いましたね。視聴者より先にライブシーンを見られるのが、僕の一番の楽しみでした。
音楽が好きな人にはたまらないドラマですね。
向井:
僕も音楽ものの作品にはいくつか出演しましたが、普通はひとつのジャンルですよね。クラシックならクラシック、ロックならロック。 でも今回はバラードもヒップホップもロックもダンスミュージックもあるし、フェスのシーンもある。音楽が好きな人はもちろん、このドラマをきっかけに「こういう音楽も聴いてみたい」って思ってほしいし、フェスやクラブに行く間口を広げるという意味でも画期的な作品ですよね。
上白石さんご自身のライブのシーンはいかがでしたか?
上白石:
今回英子として挑戦した曲は、今までの自分だったら歌えなかったような、ラップ調の曲だったり、声を張るような曲が多くて、高い壁をたくさん与えてもらった感じでした。それを自分なりに毎日超えていくことで、今まで閉じていた扉をこじ開けてもらえるような現場でしたし、歌について理解を深めていくことで、英子というキャラクターの輪郭もはっきりしていった感覚があります。
向井さんはラップにも挑戦されたとか。
向井:
ラップはやったこともなかったし、やり方も分かんないし…しかも台本に「お経のようなラップ」って書かれていて(笑)。とりあえず自分なりの“お経ラップ”みたいなものを披露したんですけど、頭から湯気が出そうでした(笑)。一応レコーディングもしたんですけど、結局、本番で生音で録るという暴挙…いや挑戦で(笑)。でもラップの指導の方や監督とも色々アイデアを出し合った結果、オリジナリティのあるものになったんじゃないかなと思います。
上白石:
素晴らしかったです!ラップというかお経というか…、本当に素晴らしかったです!
向井さんが演じる孔明の衣装はかなり重いと思いますが、夏場の撮影は大変だったのでは?
向井:
衣装合わせは数回行いましたが、かなり軽量化していただいたり、熱が逃げるような工夫もしていただきました。やっぱりビジュアルから得る情報って一番大きいと思うんです。僕だけじゃなく、特に三国志パートの人たちの衣装は頭の先からつま先までこだわりが詰まっています。メイクもそうですし、クオリティの高いビジュアルが、お芝居を組み立てる上でも大きな助けになりましたね。
上白石さんは、英子とご自身で重なる部分を感じますか?
上白石:
英子のビジュアルってまさしくパリピじゃないですか(笑)。私の“体内パリピ濃度”って本当に低いので、最初はかけ離れた人物だと思っていて。でも原作を読んで、音楽への愛とか、歌うことに憧れて何度もくじけたこととか、内面では通じる部分もすごくあるなと気づきました。それと、髪をブリーチした瞬間からちょっと私のパリピ濃度が上がりまして(笑)。私服でもお腹が出る服を着てみたりとか、少なからず私生活でも影響を受けてきてるなと思います。心の中にずっとあったパリピへの憧れを徐々に解放している所なので、今すごく楽しいですね。
向井さんは、孔明と似ている部分は?
向井:
あるかなぁ…。なるべく物事を冷静に見て、ベストな選択をしようと努めている所は共通しているのかもしれないです。作品を作る上で一番大きいのはもちろん監督の意見ですけど、自分としても全体を見た上で「こういう表現のほうが伝わるんじゃないですか」ってアイデアを出したりするので、それは小さい計略と言えるかもしれないですね。
もし孔明が上白石さんの軍師になったら、どんなことをお願いしたいですか?
上白石:
なんだろう…? 私は年々優柔不断になってきていて、魚か肉どっちにするのかで本当に迷っちゃったりするので(笑)そういう小さな悩みから未来のビジョンまでいろいろ相談したいです。孔明みたいに「あなたは才能がある」とか「自信を持って」って言ってくれる人がそばにいてくれると、すごく救われますよね。
孔明と英子のコンビ感もドラマの見所だと思いますが、やり取りで気を付けてることはありますか?
向井:
セリフのやり取りは、なるべくうまくいかないように気を付けてます。孔明の、ありえない運命を一瞬で受け入れる生き方や考えは、英子にとっては理解できない。その噛み合わなさをかけ合いの中で表現できたらいいなと思ってます。でもあえて外すのではなくて、うまくいってるようでいってないっていう絶妙なさじ加減が大事なのかなと。なかなか難しいですが。
最後に視聴者の皆さまへメッセージをお願いします。
上白石:
『パリピ孔明』というタイトルからは想像できないくらい、夢を追うことの大変さや美しさ、熱意や挫折をとても丁寧に描いていて、音楽の力の凄さを感じさせてくれる作品です。本当に魅力的な方々と作品を作れている実感がとてもあるので、皆さんにもぜひ楽しんでいただきたいですし、私もいち視聴者として映像で見るのを楽しみにしています!
向井:
いろんな人の成長物語でもあるし、孔明が計略を立てて伏線回収するような爽快感もありますし、いろんな要素がありますが、単純に今まで見たことがない、いい意味で「なんだこりゃ」って思ってもらえるようなエネルギーが詰まったドラマになっているんじゃないかなと思います。見てもらえれば、この作品の面白さが分かると思うし、度肝を抜ける作品になったという自負があるので、とにかく皆さんに見て驚いてほしいですね。