レポート

TV LIFE 連載:KIKCHY FACTORY
#100(04/04/14)インタビュー
×大瀧詠一
2004年3月25日夕方
東北新幹線 やまびこ
東京-一ノ関 車内でインタビュー

きくち
ありがとうございます、大瀧さんに到達するのが夢でした。
大瀧
いや、どうぞお気楽に。でも俺をやるとね、終わるってジンクスがあるんだよ。どうよ?
きくち
どうよ?て言われても(笑)。
大瀧
だから「もう終わるの?」なんて下手に訊けない。面倒だから最近は芸風にしてるんだ。何かの最初っていうのも多いよ。例えばCDの日本第1号も俺の『A LONG VACATION』だったし…。
きくち
そのころも もちろん買いました。
大瀧
こういう変わり者だけが買ってくれて(笑)。CDプレイヤーが普及してなくて全然売れなかったのに。まあ僕のは栄養価が高いらしくて、好きな人が音楽業界 や芸能界に多いんだ、これが。こないだも俺がやってたラジオ番組(『ゴー・ゴー・ナイアガラ』)の収録テープを持ってるやつがいたよ。
きくち
伝説の(笑)。似たようなかんじだと、わたしもはっぴいえんどの(未発表)ライブ音源 持ってるんですよ。
大瀧
BOXに入ってるやつ?。
きくち
じゃなくて、ブートレグだと思うんですけど。それ聴くと…なんかすごく、ライブバンドでしたょね?
大瀧
結構いいよね。ライブへただとか言われてたけど、瑞々しくてよかった。こんなにいいバンドだったのかと(笑)。
きくち
今、こうゆうバンドがいたら『FACTORY』に出てほしいなってかんじの。で ですね、今度わたし、新しい音楽番組(『僕らの音楽』)をはじめることになりまして。
大瀧
また音楽番組? 君は趣味を生かして、音楽番組専門なの?
きくち
いえ、バンド組んだこともありますし、趣味でもありますけど…。
大瀧
実はまだ夢持ってるんだ!?
きくち
いえいえ、そうゆうんじゃなくって。…やっぱり (自主制作の)CD、持ってこなくてよかった。
大瀧
ってことは持ってくるつもりだったんだ、やっぱり。不敵なやつだ(笑)。
きくち
すみません…。大瀧さんは早くから音楽はじめてたんでしょ?
大瀧
いやいや、俺は遅いよ。音楽は全然、ファーストチョイスじゃない。ただ小さい頃から評論めいたことが好きでね。で、音楽も評論しているうちに、曲を作るようになったんだ。
きくち
大瀧さんが書かれた文章読むと解ります。時間軸がきっちり整理されているし。
大瀧
そうそう、タイムラインはね 。あと自分は表に出ないけど、人の売り上げをリサーチするし(笑)。俺なんて元はインディーズだから、敵を知らないと。
きくち
え!「ナイアガラ」がインディーズですか?
大瀧
規模で言ったらそうだよ。俺はね、元々曲を農作物だと考えたわけ。レーベルが農場で、ミュージシャンが牛。うちには俺と伊藤銀次と、山下達郎のシュガーベ イブしかいなかった。70年代はまさしく、小さな牧場だよね。で、しばらく自給自足でやってたけど、81年に『A LONG VACATION』出荷したら、演歌やらテレビやら…それこそコミック業界からも注文が来た(笑)。
きくち
『オレたちひょうきん族』の「うなづきマーチ」(うなづきトリオ=ビートきよし×島田洋八×松本竜介『HEY!HEY!HEY!』#008/1994年12月5日OA)とかですね。
大瀧
金沢明子の「イエロー・サブマリン音頭」とかね。俺はコミックソングを数十曲作ってるけど、チャートインしたのはこの2曲だけ。今死んだらそれだけが心残りだ(笑)。結局、規模を大きくすることもなかったし、「ナイアガラ」はインディーズなんだよね。
きくち
まぁ最近はCDの売り上げが落ち込む中、インディーズの曲が売れたりして、そういう意味では健全になった気がするんですよ、音楽業界が。
大瀧
うーん…まあ、自分が虚飾が苦手だっていうのもあるけど、これからの時代はね、音楽に正直な人が生き残っていくんじゃないかな。泉谷(しげる)なんかそうだけど。正直って言うのは人間に残された最後の資産ですよ。その最たる者が、高田渡だと思うんだ。
きくち
そうですね、なんかそんなに…あの『EACH TIME』のお話しなくていぃんですか?
大瀧
いいよ、全然。ほかにも音楽誌のインタビューを受けたけど、趣味みたいなもんだし。そもそもシングルなんて、ずうっと出してないんだから。
きくち
でもそのあぃだに『EACH TIME』は何枚も出してますね(笑)。
大瀧
フフフフフ(笑)。しかも出す度に曲順は違うし、入ってる曲も違うという。これは世界に類がないね。
きくち
わたしもう、大瀧さんだけでCD棚が2段あります(笑)。で、同じタイトルが何枚も入ってる。CD屋さんで、開けなくても曲目曲順の見た目があきらかに変わってるから、買っちゃうんです。
大瀧
まあ今回は(『EACH TIME』)「FINAL」って自筆で入れたからね。インタビュー受けるのも…最後かもしれないよ(笑)。
きくち
いぃえ、今度こそ何らかのかたちで、番組にも出ていただけたなら…。
大瀧
もう今回「ロッキンオン」「レコードコレクターズ」と「CDジャーナル」に出たし、「TVBros」に載る念願もかなったから(笑)。
きくち
わたしも読んでますけど…すみません、「TV LIFE」です。


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