インタビュー

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#01 火付盗賊改方長官・長谷川平蔵役 中村吉右衛門さん

2015.11.11掲載

『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』の放送を祝して、鬼平=長谷川平蔵を演じて26年、主演・中村吉右衛門さんのスペシャルインタビューをお届けいたします。

今回、「浅草・御厩河岸」がスペシャルドラマとして放送されます。
台本を読ませていただき、話がとても細やかで丁寧で、隅々まで池波先生の気持ちが届いていると感じました。決して、大上段に振りかざしたものではなく、人と人、つまり人間というものが良く描かれた、「鬼平のエッセンス」が詰まった作品だと思います。
撮影は、祇園祭の真っ最中、京都が一番暑い時期となりました。
台風で大変な雨でしたので、祇園祭もどうなるか心配していましたが、パッと晴れてお祭りも無事に終わったようで…。今回の撮影も無事に終えられて良かったです(笑)。
改めまして、吉右衛門さんにとって“鬼平”とは、どのような存在でしょうか。
一言で言えば「大人」でしょうか。悪い人の中にも良い所を、良い人の中にも悪い所を見つけ、良い所も悪い所も飲み込んで裁いていく、本当に理想的な指導者だと感じられる作品ですね。
“鬼平”=長谷川平蔵を演じられて26年になりますが、『鬼平犯科帳』の良さは、今も昔も変わりませんか。
もちろん、お芝居は“ウソ”ではありますが、“ウソ”を演じているという感覚がしませんで、実際の生活に根ざした“真実”を演じている感覚です。これは脚本家の方々のご努力のたまもので、大変なことだと思います。時代というものは、どんどん変わっていきますけれど、『鬼平犯科帳』はいつまでも残っていく珠玉の作品ではないかと思っております。
時代劇を取り巻く環境は、厳しくなっているように感じますが。
時代劇のみならず歌舞伎も同様ですが、昔からの伝統というものが、あまり好まれない時代になってきているように感じています。
それでも『鬼平犯科帳』は愛され続けているように思います。
私もそう思います。昔が何でも良いという訳ではありませんが、良き時代を懐かしむという点では、『鬼平犯科帳』は本当に良くできた作品ではないでしょうか。
今回の『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』で印象に残っている人物はおられますか。
田村亮さん演じられた「海老坂の与兵衛」ですね。彼は泥棒なんですけれど(笑)、仁義と言いますか、義をわきまえた泥棒でして、やることは悪いことだけれども、人間として義をわきまえるというのは非常に難しいことです。 普段、良いことをしていても、義や仁には薄い人もいらっしゃいますが、それよりも悪いことはしているけれど、義や仁にそって行動している「海老坂の与兵衛」に対して、鬼平は寛容でありましたね。そういうような人間関係を、池波先生は望まれたのではないでしょうか。

原作の池波正太郎氏が亡くなって、今年で25年となります。池波先生への思いをお聞かせて下さい。
実父の八代目松本幸四郎の『鬼平犯科帳』に、平蔵の息子・辰蔵役で出演させていただいた際に、先生にご指導いただきました。その後、40歳になった時に、『鬼平犯科帳』のお話しをいただいたのですが、まだ年齢的に若かったですし、どうしても実父・八代目松本幸四郎の『鬼平犯科帳』のイメージが強かったもので、今考えると本当に失礼な話なのですが“できません”とお断りをしてしまいました。それでも5年もお待ちいただいて、45歳の時に改めてお話しをいただき、長谷川平蔵も45歳で火付盗賊改方に就任したこともあり、やらせていただいた次第です。
放送が終わって池波先生に“どうでしたか?”とお電話をさせていただいた際には、先生から「いいよ、良かったよ」とおっしゃっていただきました。私のことを大変気遣って下さって本当にありがたかったなぁと、いつも思い出します。

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