NONFIX過去放送した番組

反権力や反体制への強いメッセージ性やDIY( Do It Yourself=自分達でやる)の主張を特徴とする音楽、「パンク・ロック」。

今から約40年前にこのパンクロックのスピリットを日本で体現し、70歳になった今、さらにその精神を発展させようともがく男がいる。
s-ken(エスケン)というミュージシャンだ。

s-kenは、1970年代終わり、日本にパンク・ムーブメントを巻き起こした、伝説のパンクロッカー。当時、高度経済成長が終わり新時代が幕明けした日本には、様々な問題が噴出していた。s-kenはこの時代に対する反抗心を、パンク・ロックという形で叫び、世に放ったのだった。この斬新な音楽に若者たちは魅了され、大きなうねりとなった。彼は多くのミュージシャンに影響を与え、伝説的な存在となった。

その後s-kenはプロデュース業をメインとするようになり、表舞台からは姿を消した。しかし突如今年、s-kenは復活する。70歳になっていた。

3月には25年ぶりにアルバムを発表し、そして国内外の多くの有名ミュージシャンがステージに立つ、ライブの聖地・ビルボード東京でのライブが決まった。伝説の男にふさわしい大々的な復活となった。注目度も高い。「やるからには中途半端なことはやりたくない」s-kenのパンク魂に火が付いた。

繰り返されるリハーサルの中で、s-kenは、現在の社会について、若者について、自らの思いを語る。あくまでも今回の復活の目的は「自分がやりたいことをやるため」だ。しかし、そんな70歳の親父の姿を見て、何か感じてくれる人がいれば…今回のライブは若者へのメッセージでもあった。

そんな中、今の音楽業界に対する思いも語った。彼は「これまでやりたいことしかやってこなかった」と胸を張る。そんなs-kenに対して、ある一つの質問ぶつけた。「本当に売れる音楽に興味はないのか?」これまで大きくブレイクすることがなかった男が、一切包み隠すことなく自らの本音を吐露した。

また今回s-kenは、新曲のPV撮影でニューヨークを訪れた。s-kenは若かりし頃、まさにニューヨークでストリートからパンク・ニューウェーブが生まれる瞬間を直に目撃していた。現地を歩きながら、のちの自分の音楽活動の原点となった当時の衝撃的な体験を振り返った。そして、「パンクとは一体何に対しての反抗なのか」という根源的なテーマについて、彼なりの答えを導き出す。そこには、現代を生きる我々も耳を傾けるべきある一つの信念があった。

目に見える体力の衰え。
友人の突然の死。
そして、ライブ直前に自身を襲った怪我。

70歳のs-kenに突き付けられる現実。しかし、パンク親父はあきらめない。色々な思いが交錯する中、はたして彼はどんなライブを見せるのか。

人生の終盤にきてs-kenが残したい遺言とは。
s-kenが叫ぶメッセージとは。

■語り 佐野史郎
■編成企画 赤池洋文(フジテレビ)
■演出 山本干晃
■プロデューサー 永野浩史
■制作著作 アジアドキュメンタリーセンター