高層ビルが見下ろす新橋のガード下。
65年ここで飲み屋を経営する85歳のママ・吉田秀子さん。
未来と過去が同居する街で、行き場のない人々の思いが、
酒と歌とにコダマする。
その古ぼけた店に、ひっそりと息づくもの。
それは、私たちが忘れかけた“大切なもの”だった。
汐留の再開発で、新橋は大きく変貌を遂げている。猥雑な雰囲気は次第に追いやられ、おしゃれで未来的な町並みが蹂躙しつつある。そんな新橋の片隅で、ひっそりと生き続ける「昭和」がある。
「PUB コダマ」
夕方、新橋のガード下で店の看板を用意する、ひとりのおばあさん。この人こそが、コダマのママ・吉田秀子さん、85歳だ。店の名物は、ママの歌。全身全霊を込めて熱唱するその姿は、一度見たら忘れられない。
終戦直後の昭和21年(1946年)、ご主人である台湾出身の華僑・張さんとともに、ガード下にコダマの前身、キャバレー「ナイトトレイン」を開店。闇市でにぎわう新橋で評判となり、最盛期には60名以上の女の子を雇い、五反田、神田、銀座にも店を広げる程になった。昭和39年(1964年)、当時キャバレー人気はかげり、当時開通したばかりの新幹線から名前をとった「PUB コダマ」をオープン。キャバレー時代から、65年間。ママは一日も休まず店を切り盛りしてきた。
17年前に、張さんは他界。それでも、ママは店を閉めずにやってきた。
ママにとってコダマは、単なる店ではない。そこには、たくさんの想いがつまっている。
そして、ここにやって来る常連客たちにも、それぞれの想いがあった。
酒とコダマと男と女…夜の帳が降りる頃、ガード下の宴が始まる。
■ 語り | 小嶺麗奈 |
■ 撮影 | 小川 典/竹中 哲 |
■ 音楽 | 苗加啄人 |
■ 広報 | 魏 治康 |
■ 編成企画 | 高盛浩和 倉田恵美 |
■ プロデューサー | 戸田有司 |
■ ディレクター | 小川 典 |
■ 制作協力 | オルタスジャパン |