2008年2月28日(木) 02:53~03:53 放送(2008年2月27日(水) 26:53~27:53 放送)
“ホスピタルクラウン”とは、プロのクラウン(道化師)が病院の小児病棟を訪問し、子供たちにひとときの楽しい時間を届ける活動のこと。この活動は、ニューヨークのクラウン、マイケル・クリステンセンが1985年に始めたといわれているが、日本にも、この活動を行っているクラウンがいる。
大棟耕介(38)。勤めていた鉄道会社を退社してアメリカへ渡り、クラウン修行をした、プロのクラウンである。今では総勢80名の会社を名古屋に構え、全国の遊園地やステージなどにクラウンを派遣する事業を行っている。日本では“ピエロ”と混同されがちな“クラウン”だが、“ピエロ”とは、“クラウン”の中のひとつのキャラクターに過ぎない。大棟は、クラウン本来の魅力・楽しさを日本に根付かせたいと、夢見ている。
そんな大棟がショーなどの仕事とは別に行っている“ホスピタルクラウン”の活動を、番組は約8ヶ月間にわたって取材した。
場所は、3年前に大棟が最初にホスピタルクラウン活動を始めた名古屋第一赤十字病院。その中の造血細胞移植センターには、常時15人程度の子供たちが入院している。白血病や悪性リンパ腫といった、いわゆる“血液の癌”と闘っている子供たちだ。
大棟は“クラウンK”としてここを繰り返し訪問し続けている。「Kちゃん、Kちゃん」と大棟を呼ぶ、顔見知りの子供たちもいれば、これからの治療に対する不安でいっぱいの、入院したての子供もいる。年齢は5歳から中学生までと幅広く、当然、性格もそれぞれだ。
そんな入院病棟での大棟のパフォーマンスぶりを通して、取材は「命の闘いが繰り広げられている、病院という場所の重さ」「全ての子供たちの心をつかむ、クラウン技術の凄さ」そして「ホスピタルクラウンという活動の精神的過酷さ」へと目線を深めてゆく。
大棟は、「僕は別にいい人間じゃありません。ラブ&ピースの精神でホスピタルクラウンをやっている訳でもありません」と言い切る。また、「ホスピタルクラウンでお金はもらっていませんが、これはボランティアじゃありません。代金0円だというだけで、僕にとってはただの仕事です」とも言う。
大棟は、長期取材が進むにつれて、その言葉の本意を語りはじめる。
それは、「明日にでも亡くなるかもという子供がいようとも、自分はいつもと同じように笑いを繰り広げる。自分の心をクールに保たなくては、活動を続けられなくなってしまう」という意味だった。
番組は、病院でクラウンKと接する子供たちの小さなドラマを捕らえながら、「ホスピタルクラウン」という活動の難しさと、大切な成長期を病院で過ごさざるを得ない子供たちに与える意義を伝える。