2008年1月24日(木) 02:38~03:38 放送(2008年1月23日(水) 26:38~27:38 放送)
年間600万もの人々を集める世界有数の聖地がフランス南西部にある。1862年にバチカンから公認された聖地ルルドである。ルルドの泉の水で身体を清め、祈りを捧げると不治の病も癒されるという奇跡が伝えられている。医学では説明不可能な治癒の事例が報告され、仏教徒やイスラム教徒など宗教を超えて、病や障害からの回復を願って人々が訪れる。
ルルドが多くの人々を集めるのは、奇跡への期待ばかりではない。傷病者が、医療の対象としてのみ扱われる「患者」でいることから開放され、同じ仲間との連帯感を感じられる場でもあるからだ。
番組はルルドに集まる人々を通して、“人は何によって癒されるのか”を探る。
■ルルドの巡礼者
ピレネー山脈とポー河渓谷に囲まれた自然の大地、ルルド。約50ヘクタールに及ぶ聖域には、聖母が出現したといわれる洞窟、泉や浴場、聖堂や教会、様々な救護施設がある。
毎年4月から10月の間、世界各から巡礼団が訪れ、車椅子に乗る障害者や病を患う人々がルルドの泉の水を飲み、沐浴する。そして、毎日行われる聖体行列と聖母マリアのろう燭行列で人々は祈り、治癒を願う。
■ルルド医療局長 パトリック・テリエ医学博士
ルルドが他の“病治し”の聖地と一線を画するのが医療局の存在だ。科学実証主義の19世紀に聖地となったルルドは、「奇跡の治癒」の認定には慎重だ。“医学的に説明不能で、突然の完全な治癒で、再発しない”のが基準だ。治癒の報告を受け、局長のテリエ医学博士が診察する。患者の診断書を元に病名や病状、治癒の状況を問診するのが最初の仕事。1858年以来、2500件が“説明不能な治癒”とされ、カルテが保管される。
■「癒し」の聖地を支えるボランティアたち
ルルドには年間10万人に上るボランテイアがいる。ボランティアの仕事は疾病者の送迎、食事や沐浴、身の回りの介護を行うこと。バカンスを利用した勤め人や学生が多く、敬虔な信徒でない人も多く参加している。
ルルドの司祭たちは「ボランティアの仕事こそルルドの日常的な奇跡だ」という。ボランティアと病人の交流から生まれる「癒し」を探る。