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115万柱。
これは、太平洋戦争中、海外で戦死し、いまだ帰国できていない日本兵の遺骨の数。
戦後60年以上が経った今、この事実を知る日本人がどれだけいるだろうか。

そんな現実に目を向け、自ら戦争跡地での慰霊巡拝を行う女性ジャーナリストがいる。
笹幸恵さん、33歳。
先の戦争にずっと関心をいだいていた彼女は、過去の慰霊巡拝を通し、戦後問題に一石を投じた書籍も発表している。

今年10月、笹さんが参加したのは、ソロモン諸島・ガダルカナル島を訪れる「慰霊巡拝団」。
南方戦線の激戦地として語り継がれるその島を含めた「ビスマーク・ソロモン諸島」には、今もなお、6万2760柱の遺骨が眠るという。笹さん自身は、3度目の訪問だ。


その「慰霊巡拝団」の中には、戦争体験者や、遺骨を手に出来ていない遺族らの姿も。
元兵士は、亡き戦友をしのびつつ、心に深い傷跡を残した衝撃の体験を語り、父を亡くした遺族は、長年慰霊に来られなかった思いを叫びながら人目をはばからず涙する。
この時、笹さんは“戦後問題の重さ”を見つめ直していた。
苦しむ遺族への配慮…
管理の行き届かない慰霊碑…
進展しない日本政府の遺骨収集活動…

中でも、特に衝撃を受けたのは、笹さん自身も遭遇した遺骨の盗掘問題。
実は今、日本から遺骨を探しにやって来る遺族や政府関係者がいることを知り、現地人が、集めた遺骨と引き換えに現金を要求する事件が多発しているという。

信じがたい事実を目の当たりにして、笹さんは決意した。
「自分の手で遺骨を掘り起こしてみよう」と。
本当は、日本政府にしっかりした対応をとってもらいたい…
そんな思いが、彼女を突き動かしていた。

志を果たせず、帰国の夢もかなわなかった兵士達の遺骨を収集しながら、笹さんは、そこに、より大きな問題を見出していく。
「戦後問題が解決する日は、本当に来るのだろうか」。