NONFIX過去放送した番組

【企画意図】

 高齢化社会を迎え、介護問題について日夜、さまざまなメディアが取り上げている。しかし、大半は高齢者自身やその子供へ向けてのメッセージが多数で、若い世代が現実を見る機会は多くない。視聴者の多くが20代である『NONFIX』。そうした世代に、今ある現実を直視してもらうことで、将来自らにどのようなことが起こるのか? 今後日本はどのような対策を考えればいいのか?・・・この番組を機会に考えていただければ、と思います。

【番組内容】

取材場所:香川県善通寺市、特別養護老人ホーム「仙遊荘」
入所者は50名。グループホームとして徘徊(はいかい)、不眠、暴力、排泄(はいせつ)時の混乱を繰り返し、家庭での介護が困難であるケースや、一人暮らしで面倒を看る人のいない認知症患者を受け入れている。

 取材対象者は、天野里美ケアマネージャー(38歳)。50人(認知症患者だけではない)のケアプランを担当。かつて瀬戸内の小さな島をひとりで守り続けたバイタリティーあふれるナース。「認知症高齢者グループホーム管理者」の資格を取得し、このホームの介護のリーダー的存在となっている。
 天野さんの現在の悩みは、施設に入った入所者の容態が、在宅時以上に悪化してしまうケースがあること。天野さんは言う。「佐柳島には、“認知症”“寝たきり”という言葉さえなく、みな元気だった。しかし、設備の整った介護施設の入所者の認知症がさらに悪化するのはなぜなのか? 介護の仕方に問題があるのか? 悩んでいます。」

 古川宏一さんの母・チヨさんは入所後、容態が悪化。認知症を発症し別の施設に入ったチヨさんは、誤った介護により骨折。それが原因で寝たきりの状態になり、認知症も進行してしまったという。息子の宏一さんは、以後、母を自宅にひきとり、19年間にわたり自宅介護を続けている。そんな古川さんのもとに天野さんも出向き、「自宅での介護」をサポートするようになった。
 「介護は自宅で始まり自宅で終わる…それまでの人生も、生活習慣も違う患者たちを、今まで生活していた家をはなれ合理性のもとに集団生活を強いて“終の棲家”(ついのすみか)とさせることが、果たして“理想の介護”なのでしょうか?」

 番組では、この「仙遊荘」を昨年9月から1年にわたり密着取材。理想の介護を目指し、奮闘する天野さんを通して、生と死の間で戦う入所者たちの壮絶な日々とそれぞれの人生、家族とのふれあいのドキュメントを縦糸に入居者たちの様々な人生や、その家族の思いなどを織り交ぜながら「介護のあり方」を考えていく。

■その他の取材対象者

1.元キャリアウーマンのAおばあちゃん(91歳)。

若いころ、逓信省に勤めモールス通信士として働くなど、戦後珍しいバリバリのキャリアウーマンだったAさん。戦争で夫を亡くした後も女手ひとつで3人の子供を育て上げ、73歳まで働き続けた。
しかし、数年前、台風の日にけがをしたことがもとで、一時寝たきりとなり、急速に認知症が進んだ。日常では普通に会話に応じるAさんだが、昔の話をすると、記憶が入り混じり、激しく混乱し、10年前亡くなった息子のことが理解できない。また、数時間前のことも覚えていない。

2.元寿司桶職人のおじいちゃん(73歳)。

寿司桶を作る元職人。事故で妻を亡くし、以後2人の子供を男手ひとつで育てるが、60代で認知症を発症。夜になると、近所を徘徊。妄想からか、他人の家に上がりこみ、暴言を吐くなどしたことから入所。
それから5年、ようやく表情も軟らかく笑顔が多く見られるようになる。身体は元気なので、食事時の配膳(はいぜん)の手伝いなど自ら世話役をかって出る。娘との面会を楽しみにしている。

3.戦争未亡人のBおばあちゃん(83歳)。

2年ほど前、転倒して骨折。これをきっかけに認知症を発症。重度の健忘で、自分の過去も15分前のことさえ全く覚えていない。夫は戦争で死に再婚もしていない。一人暮らしで身よりもなく、それまで住んでいた家さえない。しかし、いつも笑顔が絶えず、素直な性格で施設のアイドル的存在。

■企画
吉田 豪(フジテレビ編成部)
■プロデューサー
中嶋常人(共同テレビ)
成田一樹(フジテレビ報道番組部)
■ディレクター
鈴木輝雄(共同テレビ)
■制作
フジテレビ
共同テレビ