2006年4月20日(木) 02:28~03:28 放送(2006年4月19日(水) 26:28~27:28 放送)
昨年4月25日、JR福知山線の脱線事故で、106人の乗客の尊い命が奪われ、また助かった方々の多くは心や体に深い傷を負いました。
あれから1年…
亡くなった方々のご遺族は、いまこの時期、どんな思いを抱え、どんな日々をすごしていらっしゃるのか。そして、未来に向けてあの悲しい出来事をどう自分の中で整理していこうとされているのか。
私たちは、いくつかの家族からお話をうかがい、そして日々の生活を取材させていただきました。
愛する家族が、ある日突然、何の前触れもなくこの世から消えてしまう。そのショックは、当事者の方以外には計りしれません。当然大半のご遺族は今も深い悲しみの中にいらっしゃいます。それでも、みなさんさまざまな形で、そこから脱却しようとなさっています。
ある方は、亡くなったご家族の生きた証を形にして残していくことで。
またある方は、事故への怒りを社会への告発という形にしていくことで。
またある方は、亡くなった方との思い出の地を訪ねて歩くことで。
さまざまな取材の中で、私たちはどんなに深い悲しみの中でも、そこから前に進もうとする「人の強さ」に感動を覚えました。
また一方で、そこまでその方たちを追い込んだ「悲しみの深さ」に触れて、私たちは慄然としました。そして、二度と同じことがおきないよう、その事実を伝え続けていくことがテレビのひとつの使命であるということにも思い至りました。
そういった思いのうえに、このドキュメンタリーは存在しています。
「亡くなった妻の姿を、この頭の中に永遠に焼き付けたい。いつか消えていってしまうことが怖い」そんな思いで、この1年を、奥様の写真や手紙、描いた絵などをパソコンにとりこみまとめていく作業に費やしていました。それまで無頓着だった奥様の交友関係とも接するなどの活動を通じて、生前は気がつかなかった奥様の一面を知ったり、新しい発見に驚く日々だと言います。
事故の様子がはっきりせず、自分の息子がどこでいつどんな状態で事故に遭遇したのかはっきりしない…そのことに憤りを感じ続ける父親は、自らの足で事故の状況を把握しようと、さまざまな活動をされています。
「やがて結婚しても同居ができるように」と家を建て替えて間もなかったご両親。たった一人の子供を亡くしたこのご家庭は、お嬢さんの思い出を語り、そして一緒に歩いた思い出の地を再訪されました。「夫婦寄り添って、これからを生きていく」それが、お嬢さんへの最大の供養であると…
農家を営むこのお宅は、大事な跡継ぎを失い、悲しみとともに将来の不安も抱えてしまいました。そんなご遺族をもり立てるように、地元では柔道兄弟で有名だった彼の名を冠した柔道大会が開かれました。周囲のあたたかいまなざしの中で、ご夫婦は、春を迎えようとしています。
番組は、こうしたご家族の「いま」と「思い出」を軸にして構成していきます。