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 徳島の県立公文書館から、戦後GHQが日本国民の再教育を目的に制作した記録映画(通称ナトコ映画)201本が発見された。米国の市民生活、民主主義国家日本の姿を描いた膨大な作品は、昭和22年から全国の公民館や工場などで上映され、戦後の日本人に大きな影響を与えた。
 ナトコ映画誕生の背景には、冷戦構造が色濃く反映している。総合司令官マッカーサーは、「豊かになれば共産主義にならない」という考えのもと、日本人にアメリカの豊かさと民主主義を積極的にアピールしていった。GHQが制作・配給した映画は400本以上に及ぶ。そのうち50本が国内で制作され、大半がアメリカから輸入された。映画は農村部を中心に日本中で上映され、娯楽の少なかった当時の人々に大歓迎された。

 しかし、飢えに苦しんでいた日本人は、民主主義という理念ではなくスクリーンに映し出されたアメリカの「豊かな生活」に目を奪われていった。そして、「アメリカの教えを受け入れることで豊かな生活が手に入る」と信じて復興へと乗り出した。戦後日本社会の原点が、この映画にあったのだ。
 番組では、「ナトコ映画」の上映技師として農村部を回った人物の証言を中心に、ナトコ映画を見て暮らしの改善に打ち込んだ人、女性の地位向上に走り回った人など日本の将来に夢を懸けた人々を訪ねる。彼らが歩んだ豊かさへの夢の道程と、その果てにある現在を考える。