NONFIX過去放送した番組

新宿・歌舞伎町1丁目。ここに「ゴールデン街」という名称の飲み屋街がある。
かつてこの街は、60年代後半から作家、演劇人、映画人など文化人や安保闘争に明け暮れていた学生たちのたまり場となっていたという。そしてそこでは毎夜、酒を飲みながらの議論や喧嘩が繰り広げられていた…

平成16年。ある日の昼間、なにげなく通りかかってのぞいてみたその街は、薄汚れた木造長屋が建ちならぶ、寒々とした廃虚のような街だった。
軒先に引っ付いた「スナック」「バー」と書かれた看板は、確かに飲み屋街のそれだが、なぜこの一角だけ“ボロボロのまま”残っているのだろうか?

何も知らない、ましてや全共闘世代などまるで縁のない27歳、女新人ディレクターがゴールデン街にカメラを持ち込んだ。

ネット検索では、今ここは、最盛期に次ぐ賑わいを見せているらしい。
客は、団塊の世代だけではなく20代から80代まで、老若男女を問わず幅広い客層で賑わっているという。
それは店のママ、マスターも同様。30年以上の老舗から1年未満の店まで、現在250店もがしのぎをけずっている。
 「明るく、キレイで、広い」お店が、そこら中にある昨今、
 「薄暗く、キレイとは言えない、狭い」店の集合体・ゴールデン街。
  傍目には、とても居心地がいいとは思えないゴールデン街。
しかしこんな街でも、相変わらず多くの常連客が、終電を過ぎてるのも気にせず朝まで飲み明かしている。
何が彼らをここに留めるのだろう。何の魅力があってここに引き寄せられて来るのだろう。

去年の7月7日にオープンした「音吉(おときち)」。
マスターは、ロックバンドのベーシストでもある佐々木さん、33歳。私と5歳しか違わない。同じゴールデン街にある「大吉」という店で6年間アルバイトとして働いていた。客層は、20代、30代の若者が中心。女性客も多い。ロックから歌謡曲まで、幅広いジャンルの音楽話で盛り上がる。

33年目の老舗「唯尼庵(ユイニアン)」のママ・キヨさん

一方、「唯尼庵(ユイニアン)」は、今年で33年目の老舗。ママは、今年57歳のキヨさん。
田中小実昌や中上健次らも通ったという筋金入りの硬派バー。
第一線で活躍を続ける俳優、映画監督、テレビ関係者、編集者たちが、日常の仕事を離れて若き時代の思い出話に花を咲かせていた。
団鬼六や若松孝二、原田芳雄といったひと癖もふた癖もありそうな有名人も訪れ、キヨさんにこれからの仕事の報告などをしている……
覚悟していた喧嘩や激しい議論はなかった。

2004年のいま、ゴールデン街は盛況だった。
なぜこのボロボロ長屋街に人々が、引き寄せられてくるのだろうか?
何を求めてこの街にやって来るのだろうか?
そしてこの街には一体、どんな未来が待っているのだろうか?

ネットの便利さに依存気味。お酒大好き。性別女。
27歳、興味津々ゴールデン街潜入記。

■ プロデューサー 大隅正睦(スローハンド)
吉田 豪(フジテレビ)
■ ディレクター 伊藤みさと(スローハンド)
■ 撮影 高野大樹
■ 制作 フジテレビ
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