NONFIX過去放送した番組

 スペインについで世界で第一位のフラメンコ人口を誇る日本。
 踊りの練習生だけでも10万人以上。観客動員数は40万人を越えるというその熱い日本のフラメンコはこの春、フラメンコのメッカ、アンダルシアのヘレスフェスティバルにて世界初、外国人としての公演を行った。題目は日本の古典、『曽根崎心中』。
 全編を通して日本語で歌われる歌詞を阿木燿子が、そして音楽を宇崎竜童が担当。
 日本のフラメンコは本場ヘレスの地元の人々たちに受け入れられるのか? 日本を代表するフラメンコアーティスト、鍵田真由美、佐藤浩希の挑戦を軸に、なぜ日本人にフラメンコが愛されるのか? その謎に迫ります。

フェスティバル・デ・ヘレスとは?

 フェスティバル・デ・ヘレスは、年に一度2月から3月にかけての2週間、フラメンコのメッカ、ヘレスで行なわれるフラメンコのフェスティバルです。
 同フェスティバルでは、スペインのトップアーティストたちが総出演する豪華なラインナップで、連日コンサートが繰り広げられます。アンダルシアでは数多くのフラメンコ・フェスティバルが行なわれていますが、ヘレスのフェスティバルは、セビリアで隔年行なわれるビエナルと並ぶ、国際的かつ大規模なフェスティバルで、フラメンコ舞踊中心のものとしては、スペインでも唯一のものです。
 最近日本でも上演され話題になったアイーダ・ゴメスの「サロメ」(の舞台版)、マリア・パヘスの「フラメンコ・リパブリック(共和国)」等の初演もこのフェスティバルで行なわれています。スペイン国内はもとより、世界各国から舞台関係者およびフラメンコファンが、このフェスティバルに訪れ、ここヘレスから、フラメンコの作品が世界に発信されるのです。
 このフェスティバルに、スペイン人以外のアーティストが参加するのは、世界初のことです。日本人のフラメンコアーティストによる、100パーセントオリジナルな日本発のフラメンコ作品が、このような形でスペインの国際的なフェスティバルに参加することは、歴史的快挙といってよい出来事です。

「FLAMENCO 曽根崎心中」上演の経緯

 「FLAMENCO 曽根崎心中」は、本作品のプロデューサー阿木燿子、音楽監修の宇崎竜童と、フラメンコ舞踊家・振付家の鍵田真由美・佐藤浩希の出会いから生まれました。20年前にロック版の「曽根崎心中」を創作し上演している阿木・宇崎は、フラメンコでこの作品を上演することを企画し、鍵田真由美・佐藤浩希にこの企画を持ち込みました。

 鍵田真由美と佐藤浩希は、現在日本で最も活躍しているフラメンコ舞踊家であり、演出・振付家です。フラメンコアーティストとしてフラメンコの伝統と向き合いつつ、同時に日本人としてのオリジナリティ、フラメンコの新しい可能性にチャレンジし、これまでに数々のフラメンコの創作作品を発表しています。

 こうして「曽根崎心中」という近松門左衛門が描いた日本の愛の物語を、フラメンコで表現するという画期的な試み――日本の文化とフラメンコを融合――が実現しました。
 2001年の初演時、本作品は話題を呼び、フラメンコファン及び舞踊・音楽ファンに絶賛されました。同年の文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ています。
 翌2002年、新宿のスペースゼロにて再演(全3回公演)。そして2003年12月、内容も公演規模をもさらにバージョンアップさせて、ル・テアトル銀座で、全7回の上演を行ないました。

NONFIXならでは

 かつて横山隆晴(現制作一部)が「白線流し」(のちにドラマ化)を営業局時代に作成したり、笠井信輔(アナウンス室)が「尾崎豊」をテーマにした事もある「NONFIX」。番組枠タイトル通り、中身についても「固定概念に縛られていない」ばかりか、制作スタッフも多種多様。制作・編成に携わっていない部署の人間も自由に番組作りに参画してきました。今回の企画「フラメンコに宿る魔力~日本人100年目の奇跡~」はフジテレビ国際局の井上麻衣子の持ち込み企画です。(井上自身は「FLAMENCO 曽根崎心中」プロジェクトの一員としてフェスティバル・デ・ヘレスで踊りを披露しております)。制作経験の無い彼女は制作情報局(大野貢P)のバックアップを得て番組実現にこぎつけました。「熱意と企画性」さえあれば部署に関係無く番組を作れるフジテレビの自由な雰囲気、伝統のなせる技とも言えるでしょう。

出演者・スタッフ プロフィール

鍵田真由美(演出・振付・主演)
 ダンサーとしての傑出した才能とオリジナリティあふれる作品で、フラメンコ界内外から熱い視線を集めるフラメンコ舞踊家・振付家。スペインでも公演を重ねており、その活動は現地のマスコミでも広く紹介され、高い評価を得ている。6歳よりモダンダンスを始め、18歳の時にフラメンコと出会う。1990年、河上鈴子スペイン舞踊新人賞受賞。96年にはバレエ及びモダンダンスのコンクール、ヨコハマ・コンペティションにフラメンコで唯一参加し優秀賞受賞。翌97年には同コンペティションで最優秀賞と神奈川県知事賞をダブル受賞。98年に発表した『レモン哀歌―智恵子の生涯』では、能とのコラボレーションを成功させ、文化庁芸術祭新人賞を受賞。一昨年初演した「曽根崎心中」で、平成13年度文化庁芸術祭舞踊部門優秀賞、第11回河上鈴子スペイン舞踊賞受賞。また、99年、00年音楽舞踊新聞が全舞踊ジャンルから選出する「ベストダンサー」のひとりに選ばれる。
 92年、スタジオ「アルテ・イ・ソレラ」を設立。パートナーの佐藤浩希とともに後進の指導にも力を注いでいる。ビデオや本も多数リリースされており、テレビ番組への出演、指導、振り付けなど、幅広い活躍を続けている。
佐藤浩希(演出・振付・主演)
 すぐれたフラメンコ的感性と自由な精神で、フラメンコの新たな可能性を追求する新進気鋭のフラメンコ舞踊家・振付家。98年の「レモン哀歌―智恵子の生涯―」以降、鍵田真由美のパートナーとして、全作品に主演。演出・振り付けにも高い才能を発揮し、新作を発表するたびにフラメンコ界に新たな旋風を巻き起こしてきた。その実力は、スペインでも高く評価されている。
 96年河上鈴子スペイン舞踊新人賞受賞。日本フラメンコ協会新人公演では、卓越した佐藤の演技に対し史上初の特別奨励賞を授与される。ヨコハマ・コンペティションで優秀賞受賞。97年同コンペティションで最優秀賞、神奈川県知事賞を受賞。一昨年上演した「曽根崎心中」で、平成13年度文化庁芸術祭舞踊部門優秀賞、第11回河上鈴子スペイン舞踊賞受賞。
 鍵田真由美とともにスタジオ「アルテ・イ・ソレラ」を主宰。後進の指導に力を注いでいる。また、ビデオや本の出演・監修、テレビ番組への出演・指導など幅広い活躍を続けている。
阿木燿子(プロデュース・作詞)
 作詞家。近年は小説家・エッセイストとしても活躍。
 宇崎竜童とともに経営する赤坂のライブ・ビストロ「ノヴェンバー・イレブンス」への鍵田真由美・佐藤浩希の出演を契機にふたりと親交を深める。鍵田・佐藤の才能に衝撃を受け、フラメンコ版「曽根崎心中」の上演を企画、本公演をプロデュース。80年に作詞したロック版「曽根崎心中」を元に、本作品を実現。全編日本語の歌詞でフラメンコを歌うという、画期的な試みを成功させた。阿木自身、フラメンコ愛好家で造詣深く、本作品の随所に、阿木のフラメンコおよび舞台に対する美意識が反映されている。
 宇崎竜童率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で作詞家としてデビュー。以降、山口百恵をはじめ数多くの歌い手のために作詞。数々のヒット作を世に送り出している。76年「横須賀ストーリー」で日本レコード大賞作詞賞を受賞。79年「魅せられて」、86年「DESIRE―情熱―」で日本レコード大賞受賞。
宇崎竜童(音楽監修・作曲)
 ミュージシャン、作曲家。
 80年に作曲したロック版「曽根崎心中」を、フラメンコ版「曽根崎心中」のために練り直し、音楽監修・作曲にあたる。本作品では、全編、阿木燿子作詞による日本語の歌詞で歌うという、史上初の画期的なフラメンコの楽曲を完成させた。
 73年、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドを結成しデビュー。自らのバンド活動と平行して、山口百恵をはじめ数多くの歌い手に楽曲を提供。数々のヒット曲を生む。76年に日本レコード大賞作曲賞を受賞。84年竜童組結成。和太鼓など日本の伝統音楽とロックをフュージョンさせたそれまでに類を見ない、“異種音楽格闘技”に取り組む。93年、ギタリストの井上堯之とバンドを結成。また、ソロでのライブ活動、映画やドラマへの出演など幅広く活動。蜷川幸雄作品をはじめとする舞台や「秘密」「かぁちゃん」など映画の音楽製作も多数手掛けている。