NONFIX過去放送した番組

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から逃げ出す人々が急増している。
文字通り、命を懸けて北朝鮮を脱出してくる人々。だが、その大部分は中国で強制送還処分を受けたり、北朝鮮の国家保衛部に捕らえられたり、あるいは密かに潜伏して第三国移住の時を待つなどしている。脱北を実現するのはきわめてむずかしい。
それでもなお、韓国に入国する脱北者の数は増えている。2000年までは年間100人前後だったのが、2002年には1,139名、2003年には1,280余名に達している。

だが、体ひとつで自由の国にたどり着き、定住することになった脱北者たちは、経験したことのない「資本主義社会」にとまどい、長いあいだ分断され続けた結果、生活習慣や言葉すら違う韓国社会という現実に直面している。
北朝鮮という煉獄から脱出してきた彼らは、もうひとつの祖国で、今どのように暮らし、どのような問題を抱え、何を思っているのか。
番組では、韓国社会に疎外感を感じながらも、そこにとけ込もうと日々つとめる脱北者たちの素顔と、定住への取り組みを見つめる。

すでに韓国では、こうした脱北者定住問題が、社会福祉上の課題ではなく、近い将来の「統一」=北朝鮮崩壊がもたらす大量難民流入の前段階であるとの見方が主流になりつつある。
それは近い将来、隣国である日本が直面する現実でもある。

脱サラしてトウモロコシそば製造販売事業を立ち上げたばかりの朴星萬(パク・ソンマンさん:仮名)。夫婦で手作りのそばづくり。注文があれば配達もする。
食糧難の北朝鮮では、みんな他に食べるものがなくてトウモロコシそばを食べている。
だが韓国に来てしばらくすると、この味が懐かしくなる。なかなかなじめない韓国で、故郷の味を求める脱北者のニーズが増えると踏んだビジネス。健康食品として韓国人にも拡げていきたいと考えているが、まだ事業は軌道に乗ってはいない。

食品会社の倉庫で箱詰めやトラック積み込み作業に従事する金哲浩(キム・チョルホさん:仮名)。
祖国ではトラック運転手だった金さん。北では運転手は何かと有利な立場で、党幹部ともつきあえるし、役得も多かった。
それに比べ、韓国では倉庫で単純労働。地道に働くしかない。時々祖国が恋しくなることもあるが、ぐっとこらえて働いている。

脱北者支援グループのボランティア(女性)による英語の個人授業。
脱北者が韓国に来て、とまどうことのひとつに英語がある。北では英語を学ぶ機会は限られているし、韓国では日常生活の中で英語を使う機会が多いからだ。
今年大学に入る韓栄珍(ハン・ヨンチンさん:仮名)に英語を教えるエリスさん。
こうした細かいケアは、韓国政府も対応していない。
市民団体によるこうしたケアも、脱北者の数が急増する中、手が行き届かなくなりがち。