2019.05.31更新
4月からスタートした夕方のニュース『Live News it!』。マスカット取材班は、メーンキャスターをつとめる加藤綾子キャスターに1日密着、さらに放送開始からおよそ2ヵ月経った今の心境を直撃した。
「報道センター内は動き回るのでスニーカーです!」
この日は、元KAT-TUNのメンバーの田口淳之介容疑者らが大麻取締法違反の容疑で逮捕された日だった。実は番組の本番を迎えるわずか数時間前、フジテレビが田口容疑者の最新映像を独自に撮影したことで、それまで準備していたニュース項目は一気に“白紙状態”に。報道センター内は、このニュースを中心に差し替えるという緊迫感に包まれた。
『Live News it!』のスタッフルームにて、加藤キャスターも独自にリサーチを始める。木村拓也アナウンサーとともに、田口容疑者にまつわる過去の記事や歌手としての経歴をメモとしてまとめていく。後で聞いたところ「自分で言える情報をメモしていました。田口容疑者がグループを辞めたとき、その後何か発言していたのか、周りの人間模様など、視聴者にとって遠い情報にならないように」
その後はすぐに席を移動。報道センターの中央にあるデスクにて、同じくメーンキャスターの風間晋と木村拓也アナ、そして平松秀敏社会部デスクと打ち合わせへ。まだ田口容疑者の逮捕情報と最新の映像があるという段階で、スタジオで何が話せてどんな展開できるのか?進行台本は、このタイミングでもはや「ない」状態なのでキャスター&スタッフが話し合いながら決めていく。
平松デスクは「麻取(マトリ)こと厚生労働省麻薬取締部があえて芸能人を狙うこともある」などスタジオで解説できることを次々と説明、加藤もすかさず「マトリが失敗することはないのですか?」など視聴者も知りたい素朴な疑問からどんどんぶつけていく。こうして最新情報を元に進行が決まっていくのだ。
オンエアまであと20分あまり…。加藤は風間や佐々木恭子アナウンサーらと最終的な流れを確認していく。最新情報を現場から中継で記者が伝える、その後は田口容疑者の最新映像を加藤自ら映像を見ながら説明していくというもの。田口容疑者の様子、表情など彼女の言葉にかかっている。加藤は自身のメモに次々と情報を書き込み、それを持ってスタジオへ―。
本番が始まると、加藤は予定通り記者に現場から中継で伝えてもらい、独自で撮影した田口容疑者の最新映像を細かく解説していく。依然として、田口容疑者が大麻取締法違反の容疑で逮捕以外の情報が入ってこない―。
加藤は冷静に、風間や木村アナ、そして平松デスクと共に、CM中も中継先の記者と会話を続ける。「田口容疑者は現行犯逮捕だったのか?」「持っていた大麻の種類は明らかになっているのか?」「所持していたのか?吸引の痕跡があるのか?」など。「まだわからない情報が多い」と言う記者に、平松デスクが「情報がないのも情報だ」と話し、加藤らとスタジオ解説への流れを作っていく。
報道のキャスターになってまだ2ヵ月経っていない中、このシチュエーションは誰でも緊張するに違いない。しかしこの後、加藤は私たちが見たことのない厳しい顔つきになった。
「次は何分ある?中継ふってからスタジオでいいの?」とフロアディレクターに確認すると、木村アナに「そのフリップ2枚プレゼンしたほうがいいよ」と進行内容を率先して決め始めたのだ。
情報が刻々と動いている中で、丁寧に教えてくれるスタッフなどいない。そして…2時間強、ほぼ番組全編をこの田口容疑者逮捕のニュースで振り切った。
怒濤のオンエアが終わった瞬間、スタジオで加藤は真っ先に「お疲れ様でした!」と元気な声でスタッフらをねぎらった。いつもの加藤らしい笑顔に戻ったようだった。一息つく間もなく報道センターにて番組プロデューサー、ディレクターらと反省会へ。
最新情報は的確に伝えられていたのか?中継先との掛け合いは?スタジオの解説は視聴者の知りたいを満足させられたか?など率直な意見交換を行う。放送は明日もやってくるのだから、毎日気になったことをここでぶつけていかないと改善されないという。
ようやく一息ついたところで、加藤キャスターに改めて今の心境を聞いてみた。
Q.まずは今日の放送の感想を
「今日はバタバタでしたね!田口容疑者の独自映像がありましたし、ニュースの内容がどんどん変わるという大変な日になりました」
Q.冷静に見えましたが?
「本当ですか?あの時はいっぱいいっぱいで…。段取りが二つ、三つ先まで見えていない状況が、本当は怖いんです。スタッフもバタバタしているので、自分から向かって聞いていかないと不安で。でもこの状況は、視聴者には全く関係ないので、見やすくすることだけを心がけてゆっくり読むなどして自分を落ち着かせていました」
Q.報道キャスターになっておよそ2ヵ月ですが、自身で変化は?
「原稿読み自体は不安ではなかったのですが『めざましテレビ』などはある程度流れが決まっていますが、報道は全く違いますよね。この番組が始まった当初は“受け身”で言われた通り、100%指示に従ってやっていましたね。しかし、実はこうした方が良かったかな?と考えていたことが後で正しいかったのでは、と思うこともありました。もっと聞きたいことがあるのに、「しめて」と指示が飛んでくる。指示を出した人が間違っているということではなく、放送後、別の人から「もっと聞いても良かったのでは」と言われることがあって。その時その時の判断もありますが、最終的には自分が聞きたいことがあれば聞く、しめたいときはしめるという判断をすることが多くなってきたなと思います」
「例えば今日は、なぜ芸能人で薬物事件が相次ぐのか?をまとめるVTRがあったのですが、スタジオに戻ってくる1秒前くらいに“言いたい!”という思いにかられ、VTRがあけて一言めに『街の方から“芸能界は闇だな”という声もありましたが、決してそういう方ばかりではないということを改めてお伝えさせてください』という発言をさせていただきました。なかなか、今まで自分からあのようなことを言う勇気がなかったので、今日は言えて良かったです。逮捕された人たちにはファンもいて、その方達はどう見ているか、そういう人たちの気持ちに寄り添いたいという思いがありましたので」
「私は、事実関係を伝えるだけではなく、どうしてこういうことになったのか?事件を起こした人たちのパーソナルな部分を含め伝える自由さが自分の“強み”だと思っています。伝えるだけで終わらず、そこからどうしたいのかという意思を示さなくては、と」
Q.何が加藤さんを突き動かしている?
「最初は、報道の人たちは怖いというイメージがあったんです(笑)。でも、皆が“変えたい”という思いが一つになって、初心者の私が「こうしたい」「こうした方が良かった」という思いに向き合ってくれていることに感謝しています。キャスター・スタッフが違う方向を向いていないというのが強みですね。私がここに呼ばれた理由も考えています。私の役割はこれまでの常識を少しずつ変えていくこと、そこを開けていかなければと思っています。“変わったよね”と言われる痕跡を残せるように頑張ります」
Q.今後やってみたいこと、力を入れたい企画などは?
「まずは東京オリンピックがあるので、それぞれの競技が、どういうルールで、どんな歴史があり、そこに出場する選手のパーソナリティーまで、丁寧にわかりやすく伝えたいです。そして『はてな』のコーナーでは、ニュースについて素朴に思ったことを毎日やっているのですが、例えば“菅官房長官ってどんな人?”というのは私が出した企画でスタッフとの会話で生まれたんです。実はスイーツ好き、などあまり知られていないことも多いんですよね。ニュースを見ていて「そこだよね、それだよね」を消化していく番組作りにこれからもこだわりたいです!」
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。