2019.05.28更新
左から)浜崎朱加、藤井惠
初代RIZIN女子スーパーアトム級王者/アメリカの総合格闘技サイト・SHERDOGの世界女子アトム級ランキング1位、女子パウンド・フォー・パウンドランキング8位(2019年5月現在)など華麗なる経歴の持ち主、浜崎朱加(はまさき あやか)。
6月2日(日)神戸で行われる『RIZIN.16』では、第5代Invicta FC世界アトム級チャンピオン、ジン・ユ・フレイ(アメリカ)との初防衛戦に挑む。およそ2年半前、アメリカで戦った際、浜崎の右のパンチにフレイが左目尻をカットしドクターストップとなり、浜崎が勝利した。今回は双方が納得のいく、本当の意味での勝負をつけるための「決戦」の舞台となる。
総仕上げの段階に入っている彼女の元を訪れたのは、伝説の女子格闘家・フジメグこと藤井惠だ。RIZINでのわかりやすい解説でおなじみの藤井は、女性総合格闘家のパイオニアでありレジェンド。長きに渡り世界ナンバーワンの座に君臨し、「秒殺女王」の異名を持っていたほどで浜崎をこの世界にいざなった張本人でもある。
「ここ(AACC大森)に来るのはけっこう久しぶり」という藤井と、愛弟子である浜崎のスペシャルインタビューが実現し、その模様は前日の夜の『FUJIYAMA FIGHT CLUB SP RIZIN直前スペシャル』にて放送されることになった。その現場にマスカット取材班も同席し、出会い、お互いの印象、格闘技への思い、そして試合への意気込みなど、気ごころ知れた2人だからこその本音トークを聞くことができた。
藤井:「もともとAACC(2人が所属する総合格闘ジム)で格闘技をやっていた子が(浜崎を)連れてきたんですけど・・・当初は内面的に殺伐としたような印象を受けました。一見穏やかなんですが、何となく世間に怒っているのが、体からにじみ出ているような雰囲気あって、どこかとがった感じでしたね(笑)。言い換えると、なんかエネルギーを持て余している印象というか」
それを横で聞きながら浜崎は「確かに…。でも格闘技を始めて変わったんです。なんかうまく表現できないですけど」と苦笑い。
藤井:「(浜崎は)AACCに入ったものの、仕事が忙しかったこともあって、来られない日も多かったのですが、『練習おいで』とかもあまり言わずに、まずはやりたいようにやってもらえればいいなと。言い過ぎるとどっかにいっちゃいそうかなと思って。あまり縛られるのが好きじゃないんだろうなって」
藤井:「私が格闘技を始めたころは、女子選手はほとんどいなかったんですけど、そのあと少しずつ増え始めて。その流れの中で、もともと柔道のバックボーンがある朱加も来てくれたんです。私も、男子とばかりではなくて、女子と練習したかったので、(女子選手を)しっかり育成しながら、一緒に強くなっていきたいなと思い、育てるようになって・・・ただ、技術とかスタミナなどはあとから着けることができるんですけど、爆発力とか“取る”感覚というのは、誰もが持っているものではないんですよね。そういった部分がほかの子とは違うなという印象が、朱加に対しては当初からありました」
一方で浜崎本人は…
浜崎:「入った当初、強い先輩が多くて、いつも負けてばっかりだったんですが、とにかく“負けたくない”っていう思いでがんばっていました。でも藤井さんからはいまだに一本も取ったことがないんですよ。すごくないですか?練習でも一本も取れないって(笑)」
藤井:「取らせてあげたら、満足しちゃって、練習来なくなるんです。だから、ひとりはそういう相手がいないと(笑)」
さらっと語るフジメグ…恐るべし!
その後、浜崎は通常の練習に戻った。同じ練習場を拠点としているRENAを含め、他の選手たちと一緒にメニューをこなす浜崎を真剣な表情で見つめる藤井だったが、しばらくすると自身もマットの上に。
そしてなんと…「浜崎 VS 藤井」の5年ぶりのスパーリングが実現した!
ただ、手を合わせながらも、要所要所で中断しつつ、浜崎に対しいくつかのポイントを細かく指導していた藤井。いったいどういったところがいちばん気になったのだろうか?
藤井:「決めている技から、次の技へ移動するときに、少し抜けてしまうというか、途切れてしまうんです。そこが隙になってしまい、攻め込まれる可能性があります・・・技と技のつなぎをスムーズにできるように、と指導していました」
時間にするとコンマ数秒のことかもしれないが、久しぶりに手を合わせた師匠からの的確な指摘に納得の表情の浜崎。
浜崎:「少し忘れてしまっていた部分を直された感じです。基礎の部分もあります。正直もうちょっとやれるんじゃないかって思っていたんですけど、まだまだでしたね。やはり師匠の背中は遠いです(笑)。次(6月2日)も藤井さんが見ている前でヘタな試合はできないです」
藤井は浜崎の成長を目の当たりにしながらも、しみじみと語った。
藤井:「それにしても・・・私の夢は大みそかにコタツでみかんを食べながら、子供と一緒に女子の試合を見る、ということだったのですが、この朱加や、RENA、そして(浅倉)カンナといった選手たちが叶えてくれています。でも私は解説席にいたので、叶ったような叶っていないような(笑)。ですから、朱加にはもうしばらくがんばってほしいですね。でも2年後くらいに急に『結婚します』とか言って辞めてしまうかも(笑)。試合も一緒で、何をしでかすか読めないっていうのが魅力なのですが」
自身が心血を注いで育ててきた「女子格闘技界」の現在の盛り上がり、そして後輩たちの活躍を“レジェンド”は喜び、また頼もしく感じているという。
決戦を前に、今の率直な心境を浜崎に聞いてみた。
浜崎:「正直、怖いです。相手が強いってわかっているし。ただ初めて戦ったときはあまり納得できる勝ち方ではなかったので(2R TKO/左目尻カットによるドクターストップ)次はしっかり、わかりやすく勝ちたいなっていう楽しみの方が今は大きいです」
藤井:「浜崎は、世界チャンピオンなのにまだ伸びしろがあるっていうのがすごいですよね。相手(ジン・ユ・フレイ)は、モチベーションも高く、きれいじゃなくてもいい、ぐちゃぐちゃな戦いを挑んでくるかと思います。世界一の対決・・・一瞬でも気を抜いたらやられてしまうような、本当に目が離せない戦いになるはずです。でも相手がどうこうというよりも自分との戦いなので、結局。もちろん相手を倒すというのもあるんですけど、どれだけ自分の力を出し切れるか、何をぶつけられるか、そういうことを理解できているのが朱加の強さだと思います」
浜崎は試合に勝った暁には、「犬(愛犬のフレンチブルドッグ)を連れて、海に行きたいです」と笑った。
激戦必至の「浜崎朱加 VS ジン・ユ・フレイ」のほか「浅倉カンナ VS 山本美憂」「マーティン・ブランコ VS 那須川天心」の3大決戦が生中継される『RIZIN.16』。令和初!そして関西初上陸という熱き戦いを見逃せない!
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