2019.02.10更新
遺体や遺留品の鑑定を通して、事件の核心につながる「真実の欠片」を見つけ出すこと。
それが科捜研の使命だと語る科捜研の男・真野礼二(錦戸亮)には、少年時代の壮絶な過去があった――。
2019年の最初の月9を飾る『トレース~科捜研の男~』。
錦戸亮主演、ヒロインには月9前クールから連続出演の新木優子、そしてなんと月9初出演という船越英一郎。
新鮮なキャスティングで話題の一話完結の本作、毎回犯人を当てる意気込みで視聴している私だが、予想はたいてい覆されるし、ラストシーンで気づけば涙腺が緩んでいる。月曜夜から気持ちが忙しい今クールだ。
科捜研と捜査一課――立場を異にする3人が、衝突しながらも難事件に取り組む科学捜査サスペンス。その魅力を掘り下げます!
新人法医研究員・沢口ノンナ(新木優子)は、初めての事件で寡黙な先輩研究者・真野と組むことになる。「鑑定結果こそが真実」という真野のスタンドプレーに翻弄されながらも、次々起こる難事件の捜査を通し、一歩ずつ科捜研のメンバーとして成長していく。
ノンナの魅力は、感覚も正義感もまだ科捜研に染まっていない「普通な」ところ。慣れない遺体を扱って気分が悪くなり、理不尽な場面では怒り、くたびれたら愚痴をこぼし、家ではカニをモリモリ食べる。新木優子のクールな美貌がコロコロ変わるのが愛らしいのだ。
捜査一課の叩き上げ刑事・虎丸良平(船越英一郎)が担当する事件の初動捜査は、長年培った「刑事の勘」に頼るものが多く、その先入観が真相解明の邪魔になることもしばしば。一課の決めつけや思い込みを、真野は「キモチワルイ」と呟き唾棄するのが常だ。曰く、「憶測は真実を濁らせる不純物でしかない」。
刑事魂と研究者の矜持。虎丸と真野は水と油のごとくかみ合わないが、真実を求める点では同じ。真面目で頑張り屋のノンナも交えて、3名の足並みはじょじょに揃ってきているような……。
結婚をひかえた女性のバラバラ死体が語る、義父によるDV。犯人も当然義父かと思われたが、実は……(1話)
山林で見つかった少女の遺体。過去の連続殺人と同じ手口と知り躍起になる一課だが、警察内部による証拠品のねつ造が発覚し……(3話)
科捜研の同僚・相楽(山崎樹範)の兄が金銭トラブルで殺されたらしい。現場に落ちていた毛髪からは大麻の成分が検出されるが、少々妙で……(4話)
1話のうちに複数の事件が解決するカタルシスもポイントだが、その先に浮かび上がってくる、被害者たちが残した「想い」に毎回泣かされる。特に第4話の相楽回は、死を覚悟した兄の想いと行動に心がギュッと苦しくなった……あなたの推し回はどれだろうか。
多忙な研究員たちのストレス発散の場は、仕事帰りに立ち寄る居酒屋。鑑識の沖田(加藤虎ノ介)も飲み仲間に加わっているのが微笑ましい。
残業はなるべくしたくない水沢(岡崎紗絵)、仕事は依頼通りにやればいいという相楽、鑑定一筋の市原(遠山俊也)……仕事に関してドライな研究員たちだが、ノンナの配属をきっかけに空気が変わりつつある。
第4話では、依頼の範疇を超えて事件の手掛かりを探そうとするノンナに、嫌味を言いつつ力を貸す同僚たちの姿があった。ツンデレ同僚っていいですね! これからも仲良く喧嘩しながら、チームの結束を固めていってほしい。
真野先生も飲み会に参加できる日が来ますように……。
事件解決後、真相を伝えられた遺族の苦しみは「あの時こうしていれば事件は起こらなかったのに……」という激しい後悔にすり替わる。2話の終盤、「辛い真実なら、知らない方が幸せなのではないか」と悩むノンナに、真野は告げる。
「どんな真実であったとしても、知らない方がいいことなんてない。進むべき方向が分からない闇の中で立ち止まっているのは、何よりも辛い。遺族は真実を知ることで、初めて前に進むことができるんだ。それを手助けするのも科捜研の大事な仕事のひとつだ」
そしてこう付け足すのだ。
「お前は、よくやった」
褒められた~~~~! しかもSレア級の笑顔~~~~~!(萌えました)
ただし、いっとき仲間に笑顔を見せても、またすぐ真野の目には悲しみの色が戻ってしまうのだけど……。
真野は幼少期の事件のフラッシュバックにたびたび襲われていた。自分以外の家族全員が惨殺された日の記憶――リビングに転がる父母と姉の遺体。遺書を残し、電気コードで首をつり死んでいた兄の揺れる両足。事件は未成年の兄が犯した一家心中とされたが、真野はその捜査に今も強い疑念を抱いている。
新章に突入する6話(11日放送)からは、この幼少期の一家惨殺事件に焦点が当てられそうだ。おそらく、いや絶対にこの事件と関わりがありそうな警視庁刑事部のトップ・壇浩輝(千原ジュニア)の不気味な笑み(演技とわかっているのにゾッとしてしまう!)の意味するところは一体……?
真野の一家惨殺事件の他にも、虎丸の家庭問題、4話に登場した麻薬の元締め・富岡の消息(あれで終わるわけはない、と思う)など、科捜研の周辺は事件の予感がいっぱい。法医科の同僚たちにも、今後何も起こらないということはないだろう……とか、ノンナの妹・カンナに危険が迫ったりして……と、つい勘ぐってしまう。そしてもちろん、ノンナに芽生えた真野へのほのかな、とてもほのかな恋心の行方も。
そうそう、ひとつどうしても解けない謎があります。5話で「真野からデートに誘われた(と誤解した)ノンナは、翌日お腹を壊すとわかっていながら、なぜ前夜にカニをもりもり食べたのか……」です。この謎も後半で解けるかな!?
イラスト・文=藤沢チヒロ
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