2018.12.05更新
毎週木曜22時から放送中のドラマ『黄昏流星群~人生折り返し、恋をした』。佐々木蔵之介さん、中山美穂さん、黒木 瞳さんが、人生の折り返し地点を過ぎて抗えない運命の恋に落ちてしまう男女を演じ、そのドロドロの不倫劇が話題となっています。
そんな大人の重厚な恋愛ドラマを盛り上げている要素のひとつが、登場人物たちが住む家や身に着ける小道具などの美術セット。ドラマにリアリティーを生み出すため、美術スタッフさんたちが日夜こだわり抜いて作っているんです!
今回は、知ればドラマがもっと楽しくなる美術セットの裏話を紹介します。
佐々木蔵之介さん演じる主人公の完治と、中山美穂さん演じる完治の妻・真璃子が暮らすのは、庭付きの立派な一戸建て。仕事一筋でやってきた銀行マンの完治が、この大きな家で専業主婦の妻や一人娘と何不自由ない生活をしている様子が、暮らしぶりからもうかがえます。セットは、生活感のあるリアルなものを目指したそう。
ドラマでは、真璃子が庭の手入れ中に怪我をしてしまい、藤井流星さん演じる、真璃子の娘の婚約者・春輝に手当てをしてもらうドキドキなシーンもありましたが、それにしてもこの家の庭……立派ですよね。お手入れも大変そう!
庭に茂る木々は“植木装飾”スタッフの担当です。時代や季節、設定上の方角なども考慮して、建て込んでいきます。
秋ドラマなので紅葉も意識。夏でも赤い「ノムラモミジ」を使っています。季節違いの木を用意したり、葉っぱのツヤを気にしたりと、変化する“生き物”と向き合う仕事なので、高度な知識も要求されます。
湾岸スタジオの一角には、植木装飾の倉庫スペースも。特殊な植物が必要になってもここからすぐ出せるように、保管してあります。なんと冷暖房完備の温室もあるそう。
一方で黒木 瞳さん演じる完治の不倫相手・栞の部屋はこぢんまりとした古いアパートの一室。介護が必要な母親をひとりで支えてきた栞を思うと……暮らしぶりの対比もまた切ないですね。
“塗り師”たちが塗装により「汚し」、あえての「剥がし」や「削り」といった経年変化して見える加工を施し、古ぼけた感じを随所に出しています。まさに、匠の技!
キャラクターに合わせて部屋の装飾も変わってきます。部屋に置いてある小物や本、使っている家電などから、個性が見えてきますよね。
ほとんどのドラマでは、前室(スタジオ手前にある演者・スタッフの待ち合いスペース)にこのようなスチール棚が。役名を書いた張り紙の奥に、靴や時計、眼鏡、鞄、帽子など、身に着けるさまざまな小物が置いてあります。
登場人物の生い立ちや家族構成、趣味や職業などを台本から読み解き、役に合った小道具を用意するのもスタッフの仕事。
今回は設定上冬のシーンが多く、撮影時期に冬物を用意するのが大変だったそう。完治と栞は1話で山登りをしていましたが、その小道具の用意も当然必要になります。
小道具は時代設定に合うレアアイテムを中心に、倉庫で保管しています。スタッフは記憶を頼りにここから必要な小道具を持ってきたり、時には新たにお店や企業と交渉して集めます。経験値がモノを言うわけですね。
最後に、『黄昏流星群』の美術デザインを手がけた柳川和央さんにお話を伺いました。
――今回、セットデザインを作るにあたって、どのような依頼を受けましたか?
プロデューサーから、主人公夫婦の家は「普通の家にしたい」という要望を受けました。ただ、“普通”ほど難しいことはありません。試行錯誤の末、目を引くような要素は控えめにしながら、空間作りと質感に気を配ったデザインに行き着きました。
――特にこだわった部分はありますか?
家の中の動線です。玄関から入って階段を上る縦の動きと、キッチンからリビングや和室へ行く横の動き、この縦・横の動線が1つの空間に存在するようなデザインにしました。また、主人公の妻は主婦業を全うしてきた女性なので、キッチンを彼女の“城”と、シンボリックに捉えた見せ方にしました。空間を広くとり、正面からあえてストックヤードまで見えるような配置にしています。
――ドラマの世界観を盛り上げるために、心掛けたところは?
夫と妻がそれぞれ不倫に呑み込まれていくという複雑なストーリーなので、その世界観の邪魔にならないような、細部まで上質感にこだわった空間作りを心掛けました。入り組んだストーリーとともに、味わいのあるセットも楽しんでいただければと思います。
フジテレビの番組の裏側には、それを支える美術スタッフさんたちの知られざる努力や工夫があるんですね。「フジテレビジュツのヒミツ」では、このほかにもさまざまな番組の裏側を公開中。ぜひ、のぞいてみてくださいね。
文=小林麻美
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