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2018.11.16更新

『99人の壁』で起こるミラクルは「偶然の産物」 100ジャンルを選ぶ舞台裏とは

千葉悠矢ディレクターを直撃

1人のチャレンジャーが己の得意分野を武器に、99人の相手と早押しクイズで対決する『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』。3回の特番を経て、遂に10月からレギュラー放送がスタートしました。

「パン」「ONE PIECE」「人骨」「偉人のお墓」「古畑任三郎」など、番組では多種多様なジャンルを持つ男女100人が揃います。番組では「あの人があのジャンルをブロックするなんて!」と、数々のミラクルが生まれてきましたが、その舞台裏はどのようになっているのでしょうか。『99人の壁』の裏側を、千葉悠矢ディレクターに聞きました。

千葉悠矢ディレクター

100人の参加者をジャンルで「キャラ付け」

―『99人の壁』は昨年の大晦日に最初の放送があり、春、夏の特番を経てレギュラーになりました。特番時代のつくりから、レギュラー放送を意識して変更した部分はありますか?

千葉:
実は、夏の特番(8月15日放送)を制作する時点で、10月からのレギュラー放送開始が決まっていたんです。なので、夏の特番はレギュラーに向けた「テスト」ができる機会でもありました。セットを明るくしてみたり、問題形式を変えてみたり、人名ジャンル限定の大会を行ったり……いろいろ試したなかから、いいところを残してレギュラーへ、という感じです。

―参加者のジャンルを「立て札」で表したのも、夏の特番からでした。

千葉:
それまではセンターに立った人しか、挑戦ジャンルが分からなかったんですよね。集まった100人がそれぞれ何者なのか、なかなか表現しきれなくて。どうやって皆さんを「キャラ付け」したら……と考えたときに、やっぱりジャンルだなと。「ワンピースキャラの笑い方」というジャンルの人がいるとわかったら、視聴者も「何者なんだ!?」って気になるじゃないですか。これは本当にやってよかったですね。

―印象に残っているジャンルの方はいらっしゃいますか?

千葉:
やっぱりいますね……オーディションには基本的に全て出るようにしているんです。100人全員がどんな人かを説明できないと嫌なので……。例えば、「パン」は365日3食、すべてパンを食べている方だったりとか。「大学駅伝」はお子さんだったんですけど、○年○区の記録保持者は?と聞くと全部パッと返ってきましたね。「山本」はこの方が山本さんなんです。この番組のために「山本」にまつわる全ての物事を勉強されているという……すごいですよね(笑)。

11月3日放送回の回答者ジャンル一覧

なかには、オーディション中に挑戦ジャンルが変わる方もいます。「偉人のお墓」の方は、応募段階では全く違うジャンルだったんですが、100万円を獲ったら「趣味のお墓参りに行きたい」と言うんです。聞いてみると、あの人のお墓はあんな形で……と、どんどんお墓の話が出てくる。それでよくないですか!と(笑) 結局「偉人のお墓」で最終問題まで行ってましたね。

―オーディションで特に心がけていることはありますか?

千葉:
そのジャンルのどこに詳しいか、きちんと聞き出すようにしています。夏の特番での反省点のひとつなんですが、問題が難しすぎてチャレンジャーもブロッカーも答えられない、という場面が結構あったんです。

例えば、ジャンル「イチロー」では「イチローの父・母・祖父の名前を答えなさい」という超難問を出してしまいました。イチローに詳しいといっても、野球選手としてのイチローに詳しいのか、パーソナルな部分も詳しいのか、ちゃんと聞き出せばあの難問を出さずに済んだんです。

参加者の持ち味を最大限に活かすには、オーディションはただ合否を決める作業ではなく一人一人への「取材」なんだと改めて思いました。とはいえ、視聴者の方もある程度わかる問題にしなくてはいけないし、かといって簡単すぎると拍子抜けしてしまう。マニアックなジャンルの中で、ちょうど真ん中の難易度を探すのが大変ですね。

MCの佐藤二朗さんには「あのままでいてほしい」

―佐藤二朗さんのMCは「慣れていない感じが逆にいい」という評判を聞きます。ただレギュラーで回を重ねると、これから司会が上達してしまうのでは、とも思うのですが……。

千葉:
そうなんです。長時間の収録ですし、回数をこなしたら二朗さんも慣れてきますよね。完全にルールを把握して噛まずに回すようになったら……やっぱり寂しいなぁという気持ちもあります。どこかでミスしてくれないかなと(笑) 二朗さんには本当に申し訳ないんですが、思いっきり段取りを間違えられても、カットせずに使ってしまうんですよ。「ごめん……」という表情とかやっぱり面白いですし、あのままでいてくださるといいなと……。

―二朗さんは編集についてコメントすることはあるのでしょうか?

千葉:「任せてるから」と一切口を出さないですね。「俺は何も知らないでやってる」と。実際、問題も答えも知らないまま進行されています。最初の特番のときは、プロフィールや問題を縮小して渡していたんですが、収録中は見る余裕がなかったみたいで。手元に問題文があるのに「全然意味わかんないんだけど」と、視聴者の目線でコメントされていました。じゃぁ逆に問題文を見せないほうがいいなと。

ただ、それはそれでハプニングもあって、ジャンル「マダガスカル」(11月3日放送)のときは、「この写真の植物はなんでしょう」というただのビジュアル問題だったのに、正解が出たあと「問題文を読み直してください」って言っちゃったんですよね。

―問題を読み上げる小坂さんに「これはビジュアルクイズです」と、たしなめられていました(笑)

千葉:
面白いですよね(笑) でも二朗さん、一度この番組に出場された方のことはよく覚えているんです。「この方は以前○○で出場されてます」とカンペを出しても「俺覚えてるんだよ」って感じですし。オンエアを見直しているのか、単に記憶力がいいのか……。参加者の方も、有名人に認識されるのはとても嬉しいだろうなと思います。これも二朗さんのすごいところですね。

100人の座席はパズルのように決めている

―過去には「アガサ・クリスティ」の記念切手の問題を「切手」の方がブロックするなど、番組では数々のミラクルが起こっていますが、100人を選ぶ段階で「このジャンルの人はこのジャンルをブロックできそう」と考えることはありますか?

千葉:
いえ、ジャンルのかぶりは全く意識していません。100人100ジャンルが揃って、はじめて「こことここが似てるな」とわかる程度です。

問題は1回の収録で700~800問(1人5問+予備2問程度)を用意しますが、問題作成チームもジャンル同士のリンクはほとんど意識していないですね。ジャンルのリンクを意識すると、なかなか先に進めなくなってしまうので。

先ほどの「アガサ・クリスティ」と「切手」も、たまたまリンクしただけです。レギュラーになってからは、「安室奈美恵」の方がいる前で、「ONE PIECE」に安室奈美恵が答えの問題が出る、というリンクがありましたが、あれもONE PIECEの問題を作ってから「あ!安室奈美恵の人がいる」と気がついたほどです。

―なるほど。「ウシ」と「焼肉」など、似たようなジャンルの方がいるのは本当に偶然なんですね……

千葉:
ただ、座席の場所はかなり意識しています。問題が進むにつれて壁が立ち上がるシステムなので、「この問題の時はこの人がブロックするかも」と座席の順番は結構練っています。
例えば最近で言うと、ジャンル「プロ野球助っ人外国人」の1問目が「ヒゲが特徴的な助っ人外国人」を答えさせる問題だった時に1枚目に立ち上がる壁にはジャンル「ヒゲ」の方を配置したりとか。
座席表を考えるのは、パズルみたいでとにかく楽しいですね……。オーディションの時にポラロイドを撮らせていただくので、写真を貼りながら「この人とかぶってるのは……」と、北の壁1番から順番に考えていくんです。なかなか難しいんですが、たまにピタッとハマって会場がぐわっと盛り上がった時、すごく気持ちいいんですね。

―最後に、これからの『99人の壁』について教えてください。

千葉:
レギュラーになってやりたかったことなんですが、視聴者に「あの人に頑張ってほしい」と応援される参加者が生まれてほしいですね。「人骨」の人はいつ真ん中にくるだろうとか、「パンチパーマ」ってどんなクイズなんだろうとか、応援してきた人がブロックを成功させたときの「来た!」という高揚感とか、毎週見ることで楽しみが増えたらと思います。ゴールデンのレギュラーになっても、今の形式をとにかくブレずに続けるのが当面の目標です。

インタビュー・文=井上マサキ

番組情報

『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』
<放送>
毎週土曜 19時~20時
<出演>
MC:佐藤二朗

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。