2018.11.01更新
建物などに映像を投影し、音を合わせて楽しむ「プロジェクションマッピング(以下、PM)」。今年5月に放送された土曜プレミアム『目撃!超逆転スクープ 世紀の誘拐事件&奇跡の生還SP』では、事件の再現シーン、謎を解き明かすストーリーを番組セットにPMで投影。映像の迫力とリアリティ効果で、まさに目の前で事件を目撃しているような臨場感と緊張感を味わえる、と大きな話題になりました。
そんな番組の第2弾が11月3日(土)21時から放送されることが決定!今回は『目撃!超逆転スクープ2 世紀の凶悪監禁犯vs決死の生還劇』と題し、オーストリアの10歳少女誘拐・監禁事件とブラジルで起きたバスジャック事件をPMで再現します。
今回、よりパワーアップしたPMを手がけるのは、PMの第一人者である秋葉哲也さん。テレビ番組で使用するのは難しいとされ、これまでほとんど例がなかったPMを番組にどう取り入れ、そこにはどんな苦労があったのでしょうか。秋葉さんに聞きました。
Q.第1回の放送では、あまりの臨場感にMCの矢部浩之さんらが「(恐怖で)泣きそうになった」とコメントしていましたね。
通常、テレビ番組の収録で事件を振り返ったり、謎解きをしたりする場合、MCの方々はスタジオのモニターに映るVTRを見るものですが、『目撃!超逆転スクープ』では、スタジオ内に設営したセットにPMを大きく映し出して、音も加えて、再現した事件を目撃、謎を解き明かしていくので、まさに自分がそこにいるかのような感覚になれるんです。その分、リアリティを持って楽しんでいただけたと思います。
Q.秋葉さんがテレビ番組でPMを手がけるのはこの番組が2件目だそうですが、これまでテレビでほとんど使用されていないのには、何か理由があるのでしょうか?
PMといえば、野外の建物に映像が映し出されるものをイメージされる方が多いと思いますが、ああいった大きな規模で映像を投影するのは実は簡単なんです。なぜなら、みなさんある程度離れたところからご覧になりますし、映像が多少ズレていても気になりませんから。逆に、テレビ番組のセットは、大きくても高さも幅も数メートルですし、画面上にはカメラで寄った映像が映し出されますから、少しのズレも許されないんです。映像を作るのはコンピュータで寸分の狂いなくできても、実際のスタジオでそれを投影するとなったら、現場の状況に合わせて微調整を行わないといけない。それは、機械ではなく、すべてアナログ、つまり人間の手作業で行うしかないんです。そこにはマニュアルは存在せず、経験と勘に基づいてやるしかないので、限られた時間と制限の中でそれをできる人間がいるかどうか、ということだと思います。
寸分のズレも許されないため、数時間にわたって微調整をする
Q.番組スタッフとの事前の打ち合わせも必須ですね。
特に照明との兼ね合いは非常に難しいので、照明さん、カメラマンとは綿密な打ち合わせをして、理解と協力をしていただきながらでないと、なかなか成立させるのは難しいですね。
Q.特に苦労したのはどんなところですか?
PMという手法はいろいろなところで使われていますが、一般的なイメージは「エンタメに近い世界」で、内容的にも「楽しいもの」が多いと思うんです。そんなPMを使って、「シリアスな事件の、何をどう伝えるのか」ということは非常に考えました。今回、監禁事件の再現があるのですが、ガレージから地下室へと監禁場所がだんだんと暗く狭い空間に移っていきます。それを映像で見せる際、ただ場所が移り変わるのではなく、「犯人はこれだけ時間をかけて、面倒な工程を経て、世間から少女を隔離していった」という異常性を表現しようとしました。「それならVTRを流せばいいじゃない」とならない、事件を効果的に見せるにはどうすればいいのか、番組のプロデューサーやディレクターと何度も打ち合わせと相談を繰り返しました。ただ、最終的なアウトプットはアナログですので、イメージの共有が難しいこともありまして…(笑)。それでセットの模型を作って、そこに投影したものを見て、理解していただく、ということもしました。
それと、今回のセットには3面の壁があって、それぞれに一台ずつ巨大なプロジェクターを使って映像を投影するのですが、同じ色を出しても、角度が違うと色が違って見えてしまったり、さらにそれをテレビカメラで撮って流すので、思った通りの色にならなかったり、ということもありました。僕自身、20年以上、PMをやっていますが、テレビのセットでの投影は経験値が少ないので、スタッフの方ともお互い試行錯誤をしながら作り上げていった、という感じです。
巨大プロジェクターは3台用意。それぞれから3面の壁に投影され、ひとつの映像になる
Q.そういった意味では、さらなる広がりが期待できそうですが、今後、テレビ番組で挑戦してみたいことはありますか?
PMは、VR(バーチャルリアリティ)と同じように、「仮想の世界」を表現するのが得意なんです。ですから、実際には体験できない場所に行けるというのが強みですので、今回のようにドキュメンタリー性の高いものであれば、実際には危険がある火災現場や災害の現場などの再現や、エンタメ性の高いものであれば、宇宙やSFのようなファンタジー的世界は表現しやすいですし、うまくハマるのではないか、と思います。
Q.最後に、改めて今回の『目撃!超逆転スクープ2』の見どころを教えていただけますか?
これまでにテレビ番組ではほとんどなかった手法でPMを行っていますので、もちろん、そこに注目していただけるのはうれしいですが、PMはあくまでひとつの演出であって、最もお伝えしたいのは、今回取り上げるふたつの事件がいかに悲劇的なものだったか、ということと、被害に遭った人たちがどう立ち直っていったか、というストーリーなんです。その中で、PMでの表現がわかりやすかった、何か感じるものがあった、と思っていただけたらとてもうれしいですね。
<プロフィール>
秋葉哲也さん
プロジェクションマッピングを使用した空間デザインプロダクション「株式会社アシュラスコープ®インスタレーション」代表。2013年に独自技術を集大成した新プロジェクションマッピング技術「MEDIARIUM®(メディアリウム)」を発表。2015年には、革新的で将来性のある製品・技術に与えられる「東京都ベンチャー技術大賞」で大賞を受賞したほか、多数の受賞歴がある。
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