2018.08.22更新
生活保護を扱う区役所の生活課。そこで働くケースワーカーの人たちの姿を描いたマンガ『健康で文化的な最低限度の生活』がドラマ化されました。
主人公の義経えみるを演じるのは、吉岡里帆さん。えみるを見守りながら、ときに助言を与えてくれる上司の半田明伸は井浦新さん、財務に厳しく不正受給を厳しく取り締まろうとする係長の京極大輝に田中圭さん、第一話の受給者として遠藤憲一さんが登場するなど、豪華な俳優陣が並びます。
一般的に「生活保護」という言葉はあまりいい印象をともなわないことが多いかもしれません。その単語を、Googleで調べれば、検索候補には必ずといっていいほど「不正受給」という言葉が並ぶ現状。しかし、実際に受給している当事者や、それをサポートするケースワーカーの仕事自体があまり社会的に明らかにされていないのも事実です。
原作では、実際にケースワーカーの監修を受け、著者も膨大な調査をした上で作品を作っています。そこから滲み出てくるのは、簡単に白黒はっきりと「誰が悪い」とは言いづらい、理不尽な社会の構造や、それでもどうにか生きていかなければいけない人々のリアルな姿です。
この「リアリティを追求する」という点では、ドラマ現場も同様。徹底的な下調べのもとで制作をされています。人間ドラマにフォーカスし、しっかりとフィクションとして魅せながらも、彼らの働く姿や背景はとってもリアル。
はたして、本ドラマはどのような現場で作り上げられているのでしょうか。今回は、なんと特別に第6話(8月21日放送)を収録している撮影現場に潜入!
そこから見えてきたのは、一丸となったスタッフのあたたかい空気感と、細部までこだわり抜いたリアルな美術セットでした。
潜入した当日に行われていたのは、生活保護を申請するも扶養照会を頑なに拒む島岡さん(佐野岳さん)と父親の間に「虐待」の疑惑が浮かぶ、というシリアスなシーンの撮影。狭い会議室での撮影ということもあって、監督はモニターをチェックしながら、カットの合図や指示は無線で伝えます。
モニターに映る俳優陣は、緊迫したシーンの撮影の合間になると、少し表情がリラックス。隣同士に座る吉岡さんと井浦さんが楽しそうに談笑する場面も!
また、撮影後に制作陣がモニターでチェックをしていると、水上京香さん(桃浜都役)や山田裕貴さん(七条竜一役)も一緒に後ろから画面を覗きにくるなど、熱心さが伺えました。俳優もスタッフも、全体のチームとして仲がよさそうなのが印象的な現場。会議室の撮影が終わったあと、スタッフとはしゃぎながら一旦スタジオを退出する吉岡さんの姿もありました。
この作品をしっかり支えているのが、美術セット。実は、会議室の撮影シーンで皆さんがいないタイミングで、こっそりセットを覗き見してきちゃいました。
えみるたちの座るデスクは、どれもキャラクターそれぞれの個性が出ているのが特徴的!
七条くんのデスクや後藤くん(小園凌央さん)のデスクはシンプル。
えみるのデスクも、新人らしい、無駄なものがひとつもない綺麗な状態。
桃浜さんのデスクは、なんだか可愛い写真が。他の人に比べてちょっと遊び心のある女性らしい机です。
半田さんの机には、あの、孫の手が! もちろん、実際に撮影で使っているもの。
そして、最後は恐る恐る、京極さんのデスクへ……。ベスト姿が印象的な京極さん、ちゃんとジャケットは椅子にかけてあるんですね。
なんだか本当にそこで人が働いているのではないかと錯覚してしまいそうなほどリアルな美術セットの数々。
実際に区役所などの現場を取材して作られているのだそう。たとえば、面接室。放送でもよく見る部屋ですが、ここには扉が2つついています。受給者の方とケースワーカーの間に何かトラブルが発生した場合、いつでも逃げたり助けに入ったりできるようになっているのだそう。ドラマでは説明もされないし、言われなければ気づかないような細かいところ。でも、そういった部分まで徹底しているからこそ伝わるリアリティがあるのかもしれません。
会議室の撮影シーンが終わり、スタッフと俳優陣が社内のセットに移動してきました。監督の指示を受けながら、エキストラの人たちとオフィスで自分たちの位置につきます。
最初は、京極さんがえみるを昼食に誘うシーンの本番前リハーサルから。普段クールな京極さんが、不自然かつたどたどしく昼食を誘う姿に、スタジオ内は思わず笑いに包まれます。京極さんを演じる田中圭さんは、その後も様々なバリエーションで表情やセリフを変えながら、えみるを誘うシーンを繰り返し、そのたびに周囲はお腹を抱えて笑う姿が。なんだか先ほどの会議室のシーンとは打って変わって、平和な空間……!
シーンが終わるとキリッとした姿に戻ることから、田中圭さんが京極さんの役に入りきっている様子が伺えます。
生活保護の受給者とケースワーカーの関わりを描いた本ドラマ。そこにはなかなか可視化されにくい社会の課題や、ナイーブな問題があり、見ているとピリッとした場面や胸に突き刺さるセリフも多数。でも、だからこそ日常のほんわかとしたシーンが作品を奥深いものにもしています。
撮影現場は、そんな和やかな雰囲気と、ストイックかつ丁寧な制作チームのこだわりの両方が見て取れる場所でした。締めるところは締めて、楽しむところは楽しむ。とっても良い空気感で作られているドラマも、もう折り返し。最後まで目が離せません!
取材・文=園田菜々
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