2018.02.02更新
昨年10月、挑戦者トマ・マソン(フランス)を7回TKOで破り、デビュー戦からの連続KO勝利を14に伸ばし、初防衛に成功したWBC世界フライ級王者・比嘉大吾の2度目の防衛戦。
挑戦者は元2階級制覇王者のモイセス・フエンテス(メキシコ)。比嘉にとっては地元の沖縄県立武道館での試合です。世界王者となって凱旋する比嘉が、日本タイ記録となるデビュー15連続KOで故郷に錦を飾るのか。ボクシングファンならずとも注目が集まる一戦が生中継されます。
なにかと緊張する初防衛戦でも持ち前の攻撃的なスタイルを貫き、常に前へ出るボクシングで圧倒した比嘉。マソンの強固なガードを強烈なアッパーで打ち崩し、ガードが下がったところへ左右の連打を的確に打ち込む。最後はマソンにドクターストップがかかり、危なげない勝利を手にしました。
そんな比嘉の魅力は、師匠でもある具志堅用高譲りのスピードと強烈なパンチ。巧みなディフェンスで相手の攻撃をかわし、常にパンチを繰り出す超攻撃的なボクシングは観る者にボクシングというスポーツの魅力を改めて感じさせてくれます。
今回の挑戦者フエンテスは2階級制覇を成し遂げた30歳。ボディ打ちを得意としており、過去のタイトル戦でもボディ攻撃で形勢を逆転し勝利を手にするなど試合巧者です。
そんなフエンテスの攻略法とは? デビュー戦から15連続KOという日本記録に並ぶことが出来るのか?
ゲスト解説を務めるWBA世界ミドル級王者・村田諒太さんに、今回のタイトルマッチのみどころ、王者・比嘉への期待、4月に行われるご自身の初防衛戦についてうかがいました。
村田さん:
昔からボクシングは観てきたので、その経験が生きていると思います。僕としても会場に行くと、自分がリングに上がる時の緊張感を思い出せる。「お前もここに立つんだぞ」と自分を見つめ直すことが出来るので、そういう意味でもいい仕事だと思っています。
村田さん:
超攻撃型選手ですね。序盤からプレッシャーをかける、全盛期のローマン・ゴンサレスを彷彿とさせるようなファイトスタイルです。比嘉選手も彼を参考にしたような動きもしますし、勢いやパンチ力もある魅力的な選手です。
村田さん:
非常に明るくて打ち解けやすいタイプなので、僕も心を開いて接することができます。笑顔もかわいいですし(笑)。リングに立つと獣みたいな顔で相手に襲いかかりますが、試合が終われば、かわいい笑顔でインタビューに対応する。そのギャップが魅力的ですね。
村田さん:
フライ級での実績はありませんが、ミニマム級、ライトフライ級では体型にも恵まれていたし、好戦的でいい選手というイメージがあります。ただ、ミニマムやライトフライより重いフライ級で体型的に優位な部分が活かせるのか、という不安があります。逆に比嘉君は減量がキツイほどフライ級では大型の選手。基本的なパワーが違うし、フエンテス選手も一発の力がある選手ではないので比嘉君が有利かな、と思っています。
村田さん:
デビューから15連続KOという日本記録ですね。比嘉選手と同じ沖縄出身の浜田剛史が持つ日本記録に並ぶことができるのか。そこはボクシングをあまり知らない方にもわかりやすいポイントだと思います。それと過去の歴史をひも解くと、ボクサーは地元で試合をするときに負けるというケースがよくあるんです。比嘉選手の師匠・具志堅さんもそうでしたし、内山(高志)さんも負けはしませんでしたがバッティングで引き分け防衛でした。地元での試合はプレッシャーがかかるせいか鬼門なんです。そんなジンクスを乗り越えて日本記録を達成できるのか。そう考えるとドラマチックな試合が予想されます。
村田さん:
頭を振ってガードを固めて前へプレッシャーをかけていく。あとはどんどん前に出て強打を打ち込んでいく。彼がやることはそれだけです。今さらフットワークを使うわけでもないので、とにかく圧力をかけて相手がイヤになるまでパンチを打つ。一発一発が強いので、彼のスタイルを貫いたら勝てると思います。
村田さん:
彼は非常に減量に苦労しているイメージがある。冬の時期の減量は厳しいので、乗り越えるのは大変かなと。ただ、それを克服してコンディションを作ってもらえれば、あとはリングで思う存分暴れてもらってノックアウトしてくれると思っています。
村田さん:
その要因はいろいろとあると思いますが、一つはチャンピオンになったという満足感。もう一つは周囲が良くも悪くもチヤホヤしてくる。それらによってハングリー精神を失うことが要因だと思います。さらにプレッシャーとか、いろいろと難しいところがあると思います。ただ、漠然と難しいというのではなく、その理由も自分なりにある程度理解できているので、あとはリングに立ってみないとわからないですし、実際にスパーリングなどが始まって調子の良し悪しを判断しないとわからないですね。僕としては練習や調整をやるのみです。
村田さん:
自分自身が変わるというよりも周囲が変わりました。言うなれば僕は「ど根性ガエル」のピョン吉に引っ張られるひろしです(笑)。ピョン吉というチャンピオンベルトに引っ張られて体が追いついたり、追いつけなかったりもしていますが、それで成長させてくれたりもする。あの漫画と同じですね(笑)。オリンピックが終わったときも金メダルというピョン吉が飛び跳ねてくれたので、それについていくのに必死だった(笑)。その経験があったので、あまり慌てなくて済みました。今は「よしよし」とピョン吉をなでながらやっています(笑)。
村田さん:
判定勝ちが多いということは、ポイントアウト(ポイントで上回る)することに慣れているということ。その点がやりづらいかな、という気がします。難しい初防衛戦でプレッシャーもかかりますが、やれることをやって結果は「神のみぞ知る」です。KOも出来たら最高ですが、これまでの経験でKOを狙っていい結果になったことはない。出来るだけその気持ちを抑えながら堅実に闘っていきたいですね。
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