2017.08.03更新
『めちゃ×2イケてるッ!』(以下めちゃイケ)が変わり始めている。1996年の放送から20周年を迎えた2016年と、21年目を踏み出した2017年からでは、なにやら見える景色が違うのだ。
なにがどう違うのか、2つの年を振り返って確かめてみたい。まずは2016年。『めちゃイケ』にとってこの年は「過去を清算する年」だった。
2016年、『めちゃイケ』は年間を通して「再会郵便局」という企画を行った。番組20周年を祝うために「”なんらかのパーティー”の招待状を届ける」という名目で、郵便局員に扮したメンバー達が過去に番組を彩った名物キャラたちを再び訪ねるというもの。ヨモギダくんなど懐かしの出演者が次々と登場し、当時の映像も交えて20年分の総集編の様相を呈していた。
そんな20周年ムードのなか、2016年はメンバーの「脱退」と「再会」という大きなトピックもあった。
2016年2月、三ちゃんこと三中元克が番組から降板した。2010年の新メンバーオーディションで唯一素人で合格し、マスコット的キャラクターとして活躍した三中。しかし、みちのくプロレス企画の途中放棄や、番組に無断でお笑いコンビを結成するなどの行動を踏まえ、「再オーディション」を開催することに。生放送で渾身の漫才を披露するも、視聴者投票で「不合格」となってしまった。
同級生と組んだコンビ「サンプライズ」(現・dボタン)で漫才を披露した三中元克(左)
また、同年7月末には10年ぶりに極楽とんぼ・山本圭壱がめちゃイケに出演している。番組の人気シリーズ「愚連隊」の形をとり、山本が草野球に興じる姿や、ラジオ収録の様子などを隠し撮りで密着。メンバーと再会を果たすも、10年前に突然欠けた穴を埋めるのに必死だったメンバーとの温度差は激しく、加藤浩次が「この状況、当たり前じゃねぇからな!」と諭すシーンはテレビ史に残る名場面となった。
功績を振り返り、確執を解消し、和解する。こうして並べると「20年」という節目でリセットを試みているようにも見える。
ただ”なんらかのパーティー”は、結局メンバーによるハロウィンパーティー(11月5日放送 自作自演ゾンビ選手権)になってしまった。懐かしの出演者たちが一堂に会するところも見たかったが、これはこれでめちゃイケお得意の「スカシ」と言えるかもしれない。
『めちゃイケ』は「岡村オファーシリーズ」「濱口どっきり」「爆裂お父さん」のように、一部のメンバーにフォーカスした企画を得意としてきた。先の「ゾンビ選手権」のように、メンバーに課題を出して競わせるタイプの企画もよく見られる。
しかし、2017年に入ってから放送された企画を振り返ると、こうした「メンバーを中心に据えた企画」がほとんどない事に気がつく。
「第1回渋谷ナンパ駅伝」では、ナンパが得意な芸人たちが綾野剛を相手に渋谷の街を駆け回った。「お笑い芸人戦力外通告」では、一発屋芸人たちがプロ野球のトライアウトのように再起をアピールした。「新世代イケメンだらけの大運動会」では、BOYS AND MENら男性アイドルが奮闘した。「芸能人遅刻総選挙」では、遅刻常習犯の芸能人をAKB総選挙になぞらえてスタジオで出迎えた。
「芸能人遅刻総選挙」 めちゃイケメンバーの鈴木紗理奈と濱口優も見事な遅刻っぷりを見せた
他にも「女芸人バイキング巡り」「NOT ボーカル MUSIC DAY」「あうんの呼吸選手権」など、新しい企画を次々に投入。「総勢50人ドッキリSP」「父の日ドッキリ」などドッキリ企画の多さも目立つ。
「あうんの呼吸選手権」相方が発した一言から、本当に言いたいことを当てられるか?
いずれの企画も「メンバー以外の芸能人」を中心に据えたもの。さらに、無差別に旬の芸能人をピックアップするのではなく、「ナンパ好き」「一発屋芸人」「遅刻常習犯」「ボーカル以外のメンバー」「芸能人の父」など、『アメトーーク』(テレビ朝日)の「くくりトーク」のように特定の属性にフォーカスしているのが特徴だ。
こうした作りの企画は「抜き打ちテストシリーズ」や「ガリタ食堂」など以前から存在しているが、2017年になってからは極力過去の遺産を使わず、毎回違った趣向の企画で視聴者を楽しませ続けている。メンバーは基本的には仕切りとガヤで立ち会い、企画を盛り上げる側に回っている。
『めちゃイケ』スタート時は、当時若手だったナイナイらが様々な企画にチャレンジし、お茶の間に彼らの人間性などを知ってもらう指向が強かった。加藤浩次の結婚、岡村隆史の復帰など、ドキュメンタリーの要素も強くあった。
時が経ち、メンバーそれぞれが芸能界に居場所を見つけたいま、「めちゃイケファミリー」を中心に据えた企画はともすれば「内輪受け」「一見さんお断り」と受け取られる危険をはらんでいる。継続のためには、20年追い続けている番組ファンを満足させるだけでなく、若い視聴者も取り込んでいかねばならない。
番組20周年は到達点ではなく通過点でしかない。2017年の新企画ラッシュは『めちゃイケ』がさらなる発展を見据えたものだと感じる。もちろん、「めちゃイケファミリー」の強い団結力は大きな武器だ。いざとなれば、大型企画を全員で回す力もある。「メンバー中心の企画」と「メンバー以外中心の企画」は両輪の関係にある。
フジの土8を背負う『めちゃイケ』。まだまだその看板を降ろすつもりはなさそうだ。
文=井上マサキ
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。