『民衆の敵』への出演が決まった時のご感想はいかがでしたか?

「僕はこの10年ぐらい舞台を中心に活動していまして、映像作品は単発ドラマがありますけど連続ドラマには出演していませんでした。50歳を過ぎてすごく連続ドラマに出演してみたくなっていましたので、絶好のタイミングでお話をいただけました。15年前に同じ月9の『空から降る一億の星』に出演して以来です。正直に嬉しかったのと同時に、ある意味“おっさんの再スタート”みたいに思って(笑)、気持ち良く演じています」

最初に台本を読まれた時の印象は?

「政治をテーマに描かれたストーリーなんですけど…現実の政治もエンターテインメト化していますよね? 日常的に政治家のスキャンダルがワイドショーなどで扱われています。芸能界の人たちと同じぐらいの頻度になっているので、そこで政治のドラマを作るのはすごくタイムリーだと思いました。そして、台本ではみんなが政治家や政治に言いたいことを、篠原涼子さん演じる智子がズバスバ指摘していきます。それは智子のように子育てをしている母親たちなど、一般市民に近い声をストレートに訴えて解決していこうとするんです。世界観には入りやすかったです。撮影中に休憩している時にワイドショーを見ていると“あれ? これって『民衆の敵』の話じゃない?”と思ってしまうような話題が満載でした」

前田はどのようなキャラクターだと思われますか?

「長いものに巻かれる? 強い者になびいてしまう人の代表格ですね(笑)。実際の政治家の方たちにもいらっしゃるんじゃないですか? 理路整然と表向きは自分の考えを述べているように見えて、結構アンテナを張ってどの派閥についた方が良いとかを考えていますよね? みたいな(笑)。前田はそういう面では分かりやすい、犬崎(古田新太)の派閥にくっついて、ナンバー2です。それでも本人、市長になりたいとか国政にも出てみたいという強い野心も持っていると思います」

政治家になる以上、上は目指そうと思いますよね?

「そうですね。前田はそのために派閥を選んだりする行動が露骨に出ているんですね(笑)。ですから、そこに現れた智子のようなママさん議員に対しての“なんぼのもんじゃ?”という敵対心も強くなるんだと思います。本当になんでもなかったのに、これから徐々に頭角を現してくる智子が大きくなっていくと脅威にさえなりそうですね」

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本会議で居眠りしていた前田が智子に叩かれる出会いも強烈でした。

「あれは僕にとっても衝撃的でした! 芝居でも篠原さんは手加減しないタイプなので、パカーン!って、思い切り資料で叩かれて机に鼻の頭をぶつけそうになりました(笑)。本当に現場には良い音が響きましたよ(笑)。本番まで何回も叩かれましたからね。だんだん勢いが増してくるんです。でも、芝居は楽しかったですよ。ああいったシーンは思い切りやらなくてはいけませんし、そうすると逆に清々しくさえあるんです」

実際の議会中継を見ていて寝ているような議員にやってみたいです。

「まさしくそうですよね(笑)。何してんだー!って。そんな思いを智子が代弁してくれるドラマなんです」

収録現場の雰囲気はいかがですか?

「変にテンションが高いわけでもなく、暗いわけでもない…僕の印象は自然な感じです。大人の役者が多いからなのか、肩に力が入った感じの人もいません。普段は力を入れていないようで、本番は思い切り演技する…という感じです。とても居やすい現場ですね」

犬崎役の古田さんと一緒にいる時間が多いと思いますが…。

「古田さんとは年齢が同じですが、事務所の先輩になるんです。そして、僕が大好きな役者なんです。もう古田さんのこれまでの舞台や映像作品はほぼ欠かさずに見ていて、ずーっと共演したいと思っていました。その念願がかなって、なおかつ古田さん演じる犬崎派閥のナンバー2ですからね。ラッキー! やったー! ですよ。でも、古田さんってシャイだから僕から話しかけないと黙ったままなんです。ほとんど僕が一方的に話している感じ(笑)。話の口火さえ切ってしまえば、楽しくおしゃべりしてくださいます。繊細でジェントリーな方で、ますます魅了されています」

篠原さんはいかがでしょう?

「篠原さんの存在が、この現場の自然体な雰囲気を作っているんだと思います。役者だけでなく居合わせる人たちにすごく気を配られます。女優には様々なタイプの方がいらっしゃいますが、篠原さんはとにかく陽なんです。一緒にいるだけで幸せになれるような? 人を魅了してしまう方ですね。もちろん、演技もとっても素敵です。セリフがアドリブというか…篠原さんが発すると智子の言葉になってしまうんです。とってもナチュラルなんです。一緒に芝居すると、篠原さんからは何が出てくるかわかりません。僕は素で笑ってしまうような演技をするんですよ。それがまた楽しいんですけど(笑)」

タイトルには“世の中、おかしくないですか⁉︎”がつきますが、大澄さんが身近でそのように感じられることは?

「僕みたいな昭和生まれの人間からすると、やはり携帯電話のSNS、アプリなどの使い方に違和感はあります。例えば、レストランで食事中に子供が泣いたり、歩き回ったりすることがありますよね? すると、親が子供にスマートフォンを渡すんですよ。おとなしくゲームでもしていなさいってことなんでしょうけど…。でも、それって躾ではないですよね? レストランは泣いてわがまま言ったり、走り回ったりする場所ではないということは伝えているように見えません。なぜダメなのかを教えないと。僕たちが幼い頃は親だけでなく、周りの大人にも注意されました。そういう時代なのかもしれませんが、僕には違和感です」

最後に視聴者のみなさんにメッセージをお願いいたします。

「今の政治の世界に僕たちが疑問に思っていること。また、こうした方が良いんじゃないかな? と、思っていることを、佐藤智子という議員がぶつけていきます。智子に感情移入して見ていただくことで、みなさんに“そうそう、これが言いたかったの!”と楽しんでいただけると思います。僕たち犬崎派は、そんな智子に対する政界のダークサイドというポジション。何にでもダークサイドが存在するということも含めてご覧ください」

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