2016年3月5日(土)放送
東京・世田谷区にある小さなカフェ『ふくしまオルガン堂』。
2013年にオープンしたこの店は、福島県産の有機野菜や畜産物を使った料理を味わうことができるほか、野菜などを買うこともできるという。
福島県から避難して来た人たちや消費者らとの交流の場としても賑わっている。
中でも、地元の食材に拘ったサラダや煮物、みそ汁などの日替わりランチは大人気だ。
『ふくしまオルガン堂』を経営しているのは、2009年に設立された“NPO法人・福島県有機農業ネットワーク”。
約100人の農家が所属している。
安心安全を売りに消費者や飲食店と関係を築き上げてきたが、原発事故による風評被害でその信頼関係は一瞬にして崩れ去った。
『ふくしまオルガン堂』の目的―。
“福島県の農産物は怖くて買えないという人が多い中、農家自身がこういう風に食べてほしい、こう作っているから大丈夫”ということ伝える場所として店を始めた。
このため店で提供される全ての食材は、出荷前に現地で放射線量の測定を行い、その結果を表示して販売しているという。
福島県有機農業ネットワークは、農家との交流会や郷土料理の試食会など、さまざまなイベントを開催し、信頼回復を目指して地道にPR活動を続けてきた結果、スーパーや飲食店など新たな取引先も開拓した。
2016年3月11日、東日本大震災、そして、福島第一原発事故から5年―。
節目のこの年、民間企業からの助成金も切れたことを機に、風評被害に立ち向かう福島県の有機農家の思いを直接伝えて来た『ふくしまオルガン堂』は惜しまれつつも3月20日をもって閉店するという。
幕を下ろす『ふくしまオルガン堂』―。
それは終わりではなく、ここで培った交流を活かし、今後は農業体験ツアーなどを通して、福島県に直接足を運んでもらいたいとしている。
福島県有機農業ネットワーク・浅見彰宏事務局長は、
「今後は繋がった人たち、更にこれから繋がるであろうという人たちに、福島県へ来てもらうことによって、どういうものが伝えられるのかを、これからは地元に目を向けて広げていきたい」
と話した。
自らが出向くことから、福島に迎え入れて、現状を知ってもらう活動へ―。
地元にいながら、福島の農業の情報を発信して活気づけていきたいという。