江戸前イワシ8割から微細プラスチック
「見えないゴミ」を追跡

お刺し身、塩焼き、煮付け…日本人にとって、魚はとても身近な食べ物です。しかし今、そんな私たちが親しんできた魚に気がかりなことが起きています。日本近海の“見えないゴミ”問題を追いました。
海に増える“小さな異物”
2015年に東京湾で行われた調査で、魚から150個もの微細なプラスチックが検出されました。捕獲したカタクチイワシ64匹のうち49匹、8割にプラスチック片が含まれていたのです。
東京農工大・高田秀重教授は警鐘を鳴らします。
「これから手を打たないと、どんどん増えていきます」
高田教授は東京海洋大学とともに、東京湾に浮かぶ物質を調査していました。海面を網でさらうこと20分…引き揚げてみると、藻に混じって随分と汚れが付いています。

採取されたのは「マイクロプラスチック」と呼ばれる直径5ミリ以下の小さな小さなゴミです。

この微細なプラスチック、実は大半がもともと一つの塊だったもの。砂浜を歩くと見かける、お弁当の容器やレジ袋といった置き去りにされたゴミ──これらが海に流され、紫外線や波の力で細かくなってマイクロプラスチックへと変わります。
でも、こんな小さなゴミの一体何が問題なのでしょうか?
私たちに返ってくる“海の危険”
「海中の汚染物質をくっつけていくのです。それもプランクトンに比べて10倍から100倍の強さで」
魚が餌を食べる時、汚染物質を吸着した欠片も取り込んでしまうと、体内でどんどん濃縮されていきます。そうした生き物が、最終的には私たちの口に入る…その危険性は無視できません。
さらに九州大学の調査によると、日本近海の50カ所以上でマイクロプラスチックが検出されていて、その濃度は世界平均の30倍にもなります。危険は、東京湾以外にも広がっていました。
私たちの周りにこんなに有害物質が溢れているのは、一体なぜでしょうか?
“流さない”ために“作らない”
高田教授は、海岸に置き去りにされたゴミ問題以外に「規制の遅れ」も指摘します。
私たちが普段使っている洗顔料や歯磨き粉にも、プラスチック製の細かいビーズが含まれているものがあります。通常は下水処理場でせき止められるものですが、雨で処理が追いつかなくなった場合などは、直接海へ流れ出てしまうことがあるのです。
