春の訪れを告げる満開の桜。長く厳しかった冬の寒さを忘れさせてくれる自然の温もり。そんな桜の季節をそれぞれの想いで迎えた2匹のわんこに会いに行きました。
伊豆半島の最南端に位置する静岡県。南伊豆町。美しい弧を描く「弓ヶ浜」で知られるこの海沿いの町にカヤックを楽しむ人たちが集う一軒のカフェがあります。
昨年の11月。このお店に初代看板犬としてやって来たのが「はな」。わんこと一緒にカヤックを楽しみに来るお客さんたちがいたのがきっかけで「はな」はこのお店の看板犬としてやってきました。
ついた名前は、ハワイ語で家族を意味する「オハナ」から取り「はな」。新しい飼い主を捜している人の所から生後7ヵ月の時に今のご主人の元にやって来た「はな」にとって今年はこの町で迎える初めての春です。
「はな」が来るまではカヤックを楽しみに来るお客さんばかりだったご主人のカフェ。それが「はな」がやって来てからは近所の子供たちやわんこを飼っている人たちにも気軽にやって来るカフェに様変わりしました。
そんなカフェで暮らす「はな」にとって今日は特別な日。昨年、初めてカヤックに乗った時はいきなり川に落ち、乗るのが怖くなってしまった「はな」。しかしその後、お客さんのわんこが楽しそうにカヤックに乗っているのを見て自分から乗るようになったんです。
今では大好きになったカヤックに乗ってお店の前を流れる青野川の川岸に咲く桜のお花見を楽しむようになったんです。
青野川の両岸に連なるのは例年よりも早く咲いたソメイヨシノ。カヤックに揺られながら桜を眺めるのは今日が初めての「はな」。
ゆるやかに流れる川を静かに進むカヤック。「はな」は淡い桜色に縁取られた川の景色にうっとり。ご主人と一緒に大好きなカヤックにゆられ初めてのお花見を楽しんだ「はな」なのでした。
所変わって日本の三大渓流の一つ、球磨川が流れる自然豊かなこの町の山間に5世帯11人が暮らす小さな集落があります。ここのあるお宅で暮らしているのが「くま」。
今からおよそ3年前に集落の畑が鹿やイノシシに荒らされて困っていたご主人。そんな折り街の保護施設に一匹の子犬がいる事を知り「畑の番犬にしよう!」とご主人が連れて帰って来たのが「くま」でした。昨年、集落の畑の周りには獣除けのフェンスが張り巡らされましたが「くま」は鹿やイノシシがそのフェンスを破って畑に入りこんでいないか見守りをしながら散歩をしているんです。
集落の畑の見回りから戻るとご主人を仕事に送り出しご飯を食べてひと休み。これが山間の集落で暮らす「くま」の日課。
そんな「くま」には、この時期とっても楽しみにしている事があります。それは…。家族で一緒に行くお花見。
向かった先は山の中にある茶畑。今からおよそ30年前。おじいちゃんが茶畑を造成中に一本の山桜が自生しているのを発見。
その山桜に八重桜を接ぎ木し家族で大切に育ててきた桜。茶畑にまるで傘を開いたように大きく枝を伸ばしているんです。立派に伸びた枝に可憐な花が咲く春になる度に家族で一緒にお花見をし絆を深めてきたご主人たち。
今では天空に浮いている様に見える立派な桜は、ご主人の名字にちなんで「天空の遠山桜」と呼ばれたくさんの人たちから親しまれています。
年に一度の家族の大切な行事。お花見。今は集落を出て行った3人の子供たちに代わり「くま」がご主人たちとお花見をするようになって今年で3回目。
満開の桜に込められた家族の想い。厳しい自然の中で咲き誇る桜と共にこれからも家族を見守って行こうと思っている「くま」なのでした。