長い間、家族を守り続けてきた一匹のわんこに、今年はちょっとせつない春が訪れました。
日本最北端、北海道・稚内の南に位置する遠別町。人口およそ3200人の小さな町では、3月の末になっても日本海からの冷たい風に小雪が舞う毎日。
そんな町のとあるお宅で今朝も朝ごはんの支度をするお母さんの包丁の音で目覚めたわんこがいます。これが11才の「はる」です。
お母さんとお父さん。3人の子供達。そして、「はる」。
今朝も5人と一匹、家族そろっての朝ごはんで一日が始まります。8時を過ぎると長男の岳くんが幼稚園へ。
岳くんを送り出した後はお母さんに代わって 下の子の子守り。
今から11年前、「はる」にも子犬時代がありました。長野から東京に引っ越し、ご主人の結婚を機に「はる」も北海道へ。そして、家族が次々と増えていきました。
11時を過ぎると「はる」は4才の双葉ちゃんと1才の穂波ちゃん、そしてお母さんと一緒に遠別町にひとつしかない幼稚園へ。6才の岳くんを迎えに行くのが2年間続けている「はる」の日課です。
いつもの道を歩いていると・・・。雪の間から顔を出した春を知らせるフキノトウ。とは言っても、遠別町では日中でもまだ氷点下の寒さです。
お父さんが帰ってくると散歩の時間。「はる」はみんなと一緒に近くの河原で大はしゃぎ。風が強くて外に出られない日が多いのでつかの間の晴れまは思いっきり遊べるひとときです。
お父さんに代わって、昼間、家族を守っている「はる」。「はる」の寝床はいつも3段ベッドの一番下。4才の穂波ちゃんと一緒です。こうして今日いつもの一日が終わります。
3月25日。いつもと違う朝を迎えました。岳くんは袴姿。そして、皆もいつもとは違うよそゆきの格好。
実は今日が幼稚園に向かう最後の日。岳くんの卒園式なんです。「はる」も家族として式に参加。少し緊張した面持ちで岳くんを見守ります。
実は、過疎化と財政難でこの幼稚園は35年の歴史に幕を閉じ、今日で無くなってしまうんです。この春から、「はる」は幼稚園生になる双葉ちゃんを新しくできる幼児センターまで迎えに行くことになります。
2年間通った幼稚園。「はる」にもみんなと過ごしたたくさんの思い出があります。
今日は嬉しくもちょっと切ない家族の記念日。これからも、ご主人一家を支えながらこの町で暮らして行こうと思っている「はる」なのでした。